「自分を変えたい、でも自己啓発系は苦手」。
今回はそんな方におすすめなのは「夢をかなえるゾウ」です。
すっと物語に入っていけるので、読み終える頃には少しの勇気と、もしかして自分も変われるのではないか?と言う根拠の無い自信みたいなものを感じることが出来る本です。
「夢をかなえるゾウ」
人はいいけど、なんとも冴えない主人公が、ヒンズー教の神「ガネーシャ」に導かれて、自分の夢をかなえてゆくストーリー。ジャンルで言うなら自己啓発本になるのでしょうが、そういった本にありがちな説教臭さがなく、ほぼ全編笑える内容である点が、すごく画期的な本です。読み終わっても、これが自己啓発本だと気づかない人がほとんどではないでしょうか。私もそうでした。
「ああおもろ」そういって本を閉じる自己啓発本が、これまであったでしょうか。社会人である主人公が、人生のより深い意味に気づき成長してゆく、ビルドゥングスロマンとしても出色の出来になっています。ただ難があるとすれば、あまりにも笑いすぎてしまって、作者がところどころにちりばめた「教え」が、ちっとも頭に残らないという点でしょうか。
話の流れ
小説は、主人公がツッコミ、ガネーシャがボケ役となって、まるで漫才のように進行してゆきます。普段はだらしなく、頓珍漢なことばかり言っているガネーシャが、ところどころでリンカーンやカーネルサンダースといった、先人たちが人生の中でつかみ取った知恵を、噛み砕いて主人公に授けてゆきます。主人公は、いぶかりながらもその知恵を実践してゆくことで、成長を遂げてゆく。読者は、その主人公とともに知恵の実践を追体験できる、そんな仕組みになっています。影の主人公ともいうべき「ガネーシャ」、印度から来たくせに関西弁をしゃべります。そして、その生態も関西人そのもの。私は、大学生の頃の友人たちを思い返しながら、「おるおる。こんな関西人おるわあ」と、とても感心しました。
関西人、特に大阪の人は、自分の欲求に素直で、それを他人にさらけ出すことに抵抗感が少ない。むしろ、自分の弱みを見せることで相手に親近感を持ってもらうことが習い性になっている風すらある。たぶん、「他人との共感」に、他府県の人よりも高い価値観を持っているんじゃないでしょうか。そんな関西人から、ときおり吐き出される言葉には、なまじっかな哲学者の箴言より肺腑をえぐられることがある。きっと作者は、そんな経験をしたことがあったんでしょうね。
それが、こういった本を書くひとつのきっかけになったような気がします。ボケとツッコミと、笑いと感動。吉本新喜劇のような仕立てになった自己啓発本。漫才好きの人には特にオススメします。この「夢をかなえるゾウ」、第1巻を目にした人は多いと思いますが、その後続編が出て、いまは第3巻まで出版されています。それぞれの巻は独立しているので、どれから読んでも楽しめます。