沼田まほかるさんの本を始めて読んだのは、「九月が永遠に続けば」でした。
そして、それは物凄く話題になるだけの本だったのですが、個人的にはこの「ユリゴコロ」の方が数百倍の衝撃を受けました。それほど、この本は凄い内容です。社会人でも、大学生でも、色んな世代の人が読んでも面白いと感じると思います。おすすめの作品です。
でも、ただ面白い・・・というのとは違います。読後、物凄く長い余韻を引きずる作品です。それほど衝撃の内容なのです。
「ユリゴコロ」
タイトルのユリゴコロとは、4冊のノートの中に出てくる書き手であり、連続殺人犯・・・であると匂わせるような手記、本当か、ウソか、分からないままに主人公が読んでいくノートの中の物語の書き手が、タナゴコロという言葉を聞き間違えて、覚えてしまったものです。不思議な響きの言葉です。
このノートは主人公が実家で、父親が隠すように仕舞ってあったのを偶然見つけて、その内容の恐ろしさに父親に隠して読んでいく様が、こちらまで手に汗握るほどドキドキします。「誰が書いたものなのか?」その謎だけじゃなく、恋人が行方不明だったり、主人公の周囲には沢山の謎がうごめいています。
ここがオススメ
その書き手が誰なのか?の謎解き、そのストーリー展開だけでも一流の推理小説と言っていいのですが、その父親が隠してあった手記の内容の衝撃さはこれは実際に絶対に読んでみて欲しい部分です。
いくら何を書いても、あの淡々と続られた内容の中の恐怖と脅威は伝わらないと思います。淡々としてるから余計に恐ろしいのですが、実際に殺人を犯してしまう、そんな人間の心の中というものを、何となく人を殺してしまう、そういう衝動に駆られてしまう、自分を止められない人間の心の闇をそっと息を殺して盗み見しているような気分になるのです。
この物語の救いは、そんな人物にも母親として子供への愛情もアグレッシブなほどにあるという事で、そこが読後、何とも言えない余韻を残し、そっと涙しました。推理小説の枠を超えた名作だと思います。