小学校高学年の男子といえば体つきは大人になりかけてはいるけれど、まだまだ精神的には少年の域を脱してはいません。
そんな不安定な年頃の男の子の悩みをありありと描いた作品を紹介しましょう。
『劇団6年2組』
著・吉野万理子
卒業式の1週間前におこなわれる「お別れ会」で何をやるか?立樹のクラス6年2組ではまだ何も決まっていません。そんな時、学校にプロの劇団がやってきました。その芝居『それからのシンデレラ』のおもしろかったこと!立樹は、涙が出るほど感動してしまいました。
そして、思わず言ってしまったのです。「うちのクラスで、芝居をやったらどうかな」
芝居をやると決まったものの、クラスにはいろいろな子がいて、なかなかまとまりません。悩んだり、ぶつかったりしながら進んでいく6年生の気持ちがよく描かれています。
『なまくら』
著・吉橋通夫
いやけ虫に負けたらあかんことぐらいわかっているけど、どうしようもないのです。矢吉は、なにをやっても長続きしません。土手づくりの手伝いでは人足とけんかしてふた月でやめ、左官屋では土こねばかりさせられ、半年でいやになりました。
今は岩山からほり出した砥石を運ぶ仕事をしていますが......。江戸から明治の時代、さまざまな場で修行をしながら、なやみ、もがく少年たちを、7つの短編で描いています。
ヤングアダルト向けに編集された、「YA!ENTERTAINMENT」の1冊。時代小説は敬遠されがちですが、等身大の少年たちへの共感は、時代のクッションをおいたほうがかえってすなおに感じられるかもしれませんよ。
『がむしゃら落語』
著・赤羽じゅんこ
暗記が得意で、勉強も大好きな学級委員の雄馬。クラスの意地悪トリオの計略にも嵌ってしまい、「特技発表会」で落語をすることになってしまいました。
これまで、人を笑わせたことなんかないのに。若手落語家の二福亭笑所さんに弟子入りしましたが、師匠はぜんぜんたよりになりません。雄馬が自分で選んだ演目は「化け物使い」。なんとかひとひねりオチをつけて、舞台でみんなをアッといわせたい、と考えます。
現代の小学校が舞台なので、身近に感じられる物語でしょう。クラスの友だち同士の力関係や、学校行事の実際などをおりまぜながら、テンポよく読み進められます。
もうすでに少年時代をとっくに過ぎたと感慨にふけってる社会人のみなさんにおすすめしたい本です。
遠い昔のこととすっかり忘れ去っていたけど、思い出してみればみんな試練を乗り越えて現在に至っているのですから。