モノクロだからこそ見える世界がある。見るものの想像力をかきたて、無限の世界が広がるからこそ、言葉のひとつひとつの重みも変わってきます。人生のそのときどきにより受け取り方が変わるのもモノクロ世界の良いところ。何度読んでも飽きることのない手元においておきたい本を紹介します。
「影の縫製機」
ミヒャエル エンデ・作
「モモ」「はてしない物語」など児童文学の巨匠エンデによる絵本詩集。ビネッテ・シュレーダーの線画が哲学的でメルヘンなエンデの文章に神秘的なきらめきを与えてくれます。見えない世界が見えてくるような不思議な浮遊感を味わえる本です。理解しようとせず、ただ感じるための本です。箱入りでクロス装丁の表紙、分厚い写真集のようで、紙の手触りが温かく心地の良い一冊で、エンデのコレクターの方にもおすすめです。
「まんまるおつきさまをおいかけて 」
まんまるおつきさまをおいかけて (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
ケビン ヘンクス・作
まんまるおつきさまを大きなお皿に入ったミルクだと勘違いした子猫がおつきさまを追っかけて飛んだりはねたり大冒険を繰り返します。モノクロの太い線、濃淡のみで表現した子猫のかわいらしさ、無邪気さが微笑ましい一冊です。はじめてのものに出会うときのドキドキ感が蘇ります。
「妖精のくる午後」
コーザ ベレリ・作
セピアの紙に描かれたスケッチのような繊細な挿絵。誰からも忘れ去られた廃墟で、主人をただ待つだけの人形の寂しさ、床の冷たさ、そよ風の音、木々のざわめきまで伝わってきます。幸せだった思い出の中だけで生きる人形の美しくも儚げな姿が時間の経過とともにもろく散っていきます。フ ランスの散文詩のような、白昼夢のような絵本です。
どれもストーリーを追いかけるものではなく、じっとかみしめていたいような大切な本たちです。色鮮やかな世界に疲れたら、ふっと原点に戻ってみるのも良いのではないでしょうか。疲れた心に効く3冊です。リセットしたいとき、想像力を高めたいときにおすすめです。