美しい日本語の絵本
日本語の乱れが問題になって久しいですが、大人でさえも美しい日本語を聞く機会が少なくなってきました。特に若い年齢層のSNSを使い慣れた人は語彙数も少なく敬語も使えない人が少なくないそうです。
美しい日本語を使いこなすようになるためには、美しい日本語に触れることが一番です。奥ゆかしく、イメージが限定されない日本語の多様性を感じることができる絵本を紹介いたします。まず1冊手に取って言葉の響きを味わってみてください。
スイッチョねこ
大佛 次郎 (著) (フレーベル館)
あくびをした瞬間にスイッチョという虫を飲みんこんでしまった子猫。お腹のなかからスーイッチョ!と声がするものだからさぁたいへん!
著者は猫好きとしても有名な文豪で生涯に500匹も飼っていたそう。自然で愛らしい子猫の仕草の描写も細やかで、 安泰さんのふわふわとした猫の毛並みについつい微笑んでしまいます。
秋の夜長に読みたい昭和の美しい日本語にうっとりさせられる名作絵本です。
外科室
泉 鏡花 (著)(立東舎)
乙女の本棚シリーズは日本の古典作品を楽しんでもらうために、人気イラストレーターとコラボをして世界観をよりリアルに楽しんでもらおうというシリーズ。
泉鏡花の作品は日本語が美しいと有名ですが、古語も登場するので読むのを断念してしまったという方も多いと思います。こちらは「刀剣乱舞」のキャラクターデザイナーとしても有名なホノジロトヲジさんの幻想的な挿絵が耽美な世界観へと誘ってくれます。
胸に病を患う貴婦人は手術の際、麻酔をするとうわごとを言う、自分だけの秘密を漏らしてしまうことを恐れるあまり麻酔を拒否します。医学生と伯爵夫人の純愛物語。
サーカス
中原 中也 (著)(ほるぷ出版)
明治生まれの詩人、中原中也。「汚れちまった悲しみに」のようなセンチメンタルな作品だけではなく、純粋に音を楽しむ作品も作っていました。
戦争の色が残る片田舎にやってくるサーカス一団。今宵だけ見られる夢のような世界。「ゆあーん ゆよーん」と空中ブランコが揺れるリズム。声に出して読むと一層ことばが生きてくるから不思議なものです。
カラフルでレトロなイラストとともに、ノスタルジーに浸れる一冊です。
ラフな友達同士の言葉や省略言葉もユニークですが、やはり古典作品の日本語は背筋がしゃんと伸びるような心地よい気持ちになるものです。場面によって使い分けできるように、美しい日本語にもたまには触れてみてくださいね。