子どものころから読書が好きで、いろんなジャンルの本を読んできましたが、大人になっても心に残っている児童書を紹介いたします。悲しいとか辛いという気持ちではなく、目の前にまるで稲妻が走ったような気持ちになりました。
大人になり、その本をずっと手にしていないのにリアルに蘇えるあのときの感覚。そんな本に人生で何冊出会うことができるでしょうか。今回は、現代の子どもたちにも読んでほしい児童書を紹介いたします。図書館で是非探してみてください。
じごくのそうべえ
たじま ゆきひこ(著) (童心社)
上方落語の「地獄八景亡者戯」を題材に書かれた関西弁の絵本。綱渡り師のそうべいが地獄にまっさかさまに落ちてしまいます。火車に乗せられて三途の川を渡り、地獄の世界へと入っていくそうべえ。恐い顔のえんま大王、赤鬼と青鬼、亡くなった魂たち・・・。
テンポもよく男の子が好きそうな下ネタも満載。読み聞かせをしてもらってみんな笑っていましたが、真っ赤に燃え上がる炎や激しい雰囲気が子どものころは恐くてたまりませんでした。こんなにユーモラスな内容だったと大人になって分かった本です。絵を見て恐がらなければ、楽しい読み聞かせにピッタリな絵本だと思います。
地べたっこさま
さねとう あきら(著) (理論社)
差別や偏見、貧しさ、無知が犯した罪。姥捨てや異形のもの、地位の低い百姓などが受けた傷ははかり知れません。
違うものを受け入れることの大切さ。地べたっこさまはいいことも悪いことも静かに見守ってくださる。決して説教くさくなく、ただあるがままをつづった日本昔ばなしのような創作童話集。子どもたちには環境に負けず、優しく勇気のある大人に育ってほしいと願います。
ひとりぼっちのロビンフッド
飯田 栄彦(著)(理論社)
大猪の金目大王に襲われ、愛犬テツの体に小学生の武の魂が乗り移ってしまう。お葬式までに金目大王に奪われた魂を取り返すために旅にでかけるテツと武。
人間と自然の共存について、命の在り方について考えさせられます。命と命をかけた戦いのシーンは息をのむほど。夜の暗闇に金目大王の目が光るようで恐かった思い出があります。課題図書にも選ばれた作品です。
子どもの世界は決して広いものではありません。経験が少ない分、視野も狭くなりがちです。今自分がいる場所だけがすべての世界ではないと、読書は想像力や世界の広さを教えてくれる貴重な体験だと思います。是非、子どものうちから読書の習慣を身につけてあげてください。