「モモ」や「はてしない物語」など児童文学作家として有名なドイツ人作家、ミヒャエル・エンデ。
発表された児童書は大人が読んでも奥が深く、子供のころ読んだときよりも改めて感じさせられるものがあるという作品ばかりです。異世界へいざなってくれるファンタジー作品も魅力的ですが、エンデが大人向けに書いた小説もちょっぴりダークな世界観が特徴的。ティム・バートン監督やエドワード・ゴーリーが好きな方、男性にも手にとっていただきたい作品です。是非手にとってみてください。
遺産相続ゲーム―地獄の喜劇
ミヒャエル エンデ(著) (岩波現代文庫)
エンデの初期の戯曲。莫大な遺産をめぐり、登場人物たちは少しでも遺産を手にするために戦略を練る。
人の心を操ろうとする老女や変化する宮殿などファンタジーな舞台設定がありながらも、人間の心の卑しさからどう逃げるか、清く正しい心でありつづけるにはどうしたら良いのかなど考えさせられます。悲劇にも喜劇にもなりうるラストシーン。演じ方によっても観る側の印象が変わりそうな作品です。
鏡のなかの鏡―迷宮
ミヒャエル・エンデ(著) (岩波書店)
「はてしない物語」と並んでエンデの傑作と呼ばれている作品。連作短編集ですが、どこからかすべてがつながりだして無限のループへと誘ってくれる幻想的な作品です。
鏡という真逆に映し出す真実がぐるぐると回りつづけて出口がでないという夢のような作品。ストーリーを追うことよりも、ただ感覚にまかせて読みふけるのがおすすめです。ふとした瞬間にすべてがつながりあうという不思議な感覚にとらわれます。
自由の牢獄
ミヒャエル エンデ(著) (岩波現代文庫)
エンデの晩年に書かれた到達点ともいわれる短編集。伝記や手紙など伝統的な背景とファンタジーの世界が入り交じり、登場人物の精神的世界にも深く入り込んだ美しい物語たち。
自由とはなにか、現実の世界で自由を全うするにはどうしたら良いのかなど楽しいストーリー展開のなかにシンプルながらも澄んだまなざしで世界を見渡すエンデの視点が輝きます。カフカやカミュなどの不条理作品のような暗さはないものの、どこか消化しきれない考えの余白を残してくれる大人のための作品です。
エンデの文章はどれも率直でストレートに心に響いてきます。ナチスに支配されていたドイツのなかで、ここまでピュアな視点を持ち続け小説を書き続けてきた苦悩は時を超えて私たちにも不変的な心の在り方を教えてくれます。
是非手にとってみてくださいね。