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【鏡 不思議 おすすめ 本】鏡がカギとなるミラー小説

自らを映し出す鏡。そこにいるのは確かに自分だけど、見える世界は真逆。鏡の向こうの世界と自分が見ている世界は果たして一緒なのか・・・。「鏡の国のアリス」をはじめ、文学で重要なメタファーとしてよく使われている鏡。今回は、鏡がカギとなって物語が進む小説を紹介いたします。

 

「はじめての文学 村上春樹」

はじめての文学 村上春樹

村上 春樹・作
 ショートショートが集められた作品集ですが、こちらの「鏡」という作品がおすすめです。幽霊も信じたことがない中学生の僕は、ある日玄関で何となく恐怖を感じます。そこにあったのは鏡に映った自分の顔。自分の中にあると思いたくもない憎悪や悪意、自分をコントロールしきれない恐怖。鏡に映ったものは一体何なのか。教科書にも採用されている作品です。

 

「裏庭」

裏庭 (新潮文庫)

梨木 香歩・作
児童文学ファンタジー大賞受賞作。お屋敷の鏡の向こうに広がる裏庭。表の世界と裏の世界。それぞれが繋がっていく不思議な物語。早く大人になるしかなかった心に傷をもつ少女、雌雄同体のテナシ。代々受け継いでいくもの、自分を形成するということ。ファンタジー形式をとりつつも、傷と向かい合って成長していく少女の物語でもあります。

 

「鏡のなかの鏡―迷宮」

鏡のなかの鏡―迷宮 (岩波現代文庫)

(岩波現代文庫) ミヒャエル エンデ・作
 「モモ」「はてしない物語」など児童文学者として有名なエンデの30の連作短編集。ひとつの話が前の話を映し出し、どんどんつながっていく神秘的で不思議な世界観を味わえる一冊です。残されたパズルのピースを次の章でみつけるような迷宮に入り込んだような浮遊感。漱石の「夢十夜」にも似た雰囲気で、何度も鏡をのぞいて確認したくなるような気分になります。

 

人間には多様性があり、この人はこうだからと断片的に見ては上手くいかなくなってしまうこともあります。こんな自分もいる、こんな見方もできるとより広いとらえ方ができることで、柔軟な人間になれるのではないでしょうか。鏡の向こう側には、自分自身が知らない自分が存在するのかもしれません。

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