よく、歳を取ってから時間の進み方が早く感じられると言われます。実際そうだと思いませんか?
実はそう感じられるのではなく、本当に早くなっているのだとしたらどうでしょう。
そんな時間という概念について、わかりやすく、しかもおもしろく書かれた小説を紹介します。
『二分間の冒険』
著・岡田淳
2分間でなにができる?たった2分じゃ、なにもできない?イエイエ、別の世界では、別の時間が流れています。6年生の悟たちが体育館で作業中、かおりが、とげぬきをみつけました。
作業をサボろうと悟は、それを保健室にもっていくことにします。2分以内にもどってこいと先生にいわれて外に出た悟は、黒ネコの「ダレカ」に呼びとめられました。
とげぬきでとげをぬいてほしいというのです。とげをぬいたおれいだといって、「ダレカ」は悟を別の世界に送りこみました。
作者の岡田淳はもと小学校の先生という変わり種、小学校を舞台にした作品が多いのですが、やはり描写がリアルですね。小学校高学年にオススメの本です。
『モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語』
著・ミヒャエル・エンデ
時間は不思議です。時計ではかることはできますが、どんなことがあったかによって、長く感じることも、逆に短く感じることもあります。時間はひとりひとりの心のなかにあるのです。その大切な時間を、炭色の男たちが盗もうと企てました。
いそがしさで心が弱った人のもとにあらわれて、時間をたくわえるよう、そそのかすのです。ところが、人びとは逆に心のゆとりをなくし、時間に追われることになってしまうのでした。けれど、モモだけはちがっていました......。
スリルあふれるストーリー展開の中に、時間とは、ほんとうの豊かさとはなにかを問いかけるファンタジー物語です。作者はドイツを代表する児童文学作家で、現代社会への風刺もこめた作品には大人の読者も多いですね。
『時の旅人』
著・アリソン・アトリー
ペネロピーは、病後の転地療養に、サッカーズ農場にきました。牧草地と畑と森にかこまれた石づくりの家は、何百年も昔、バビントン一族のものでした。
その後におこった悲劇的なできごとが、一族を破滅においやったのです。ある日、ペネロピーが2階のドアを開けると、4人の貴婦人がテーブルをかこんでゲームをしていました。おどろいてドアを閉めると、おどり場には見たことのないドアがならんでいます。
その日から、ペネロピーは、バビントン一族がいた時代の農場に迷いこみます。
政治的な抗争に翻弄される16世紀と20世紀。ふたつの時代を行き来しながら、ペネロピーはどちらの人びとにも深い愛情とつながりを感じます。異なった時代に生きる人びとの普遍性を温かく描き、静かでふしぎな雰囲気をもつ作品です。
早いにせよ、遅いにせよ、どちらにせよ人生というものは一度きりなのです。
そんな貴重な時間を読書という贅沢で費やすのはとても幸せななことだと思うのです。