60歳を過ぎて注目された遅咲きの天才ピアニスト、フジ子・ヘミングさん。ドキュメンタリー番組やドラマで、苦悩の連続の生涯を知っているという方も多いのではないでしょうか。
そんな天才ピアニストの書く文章もまた素敵。フジ子・ヘミングという生き方が、音楽というジャンルだけに縛られず、文章や絵画にいたるまで魅力溢れる女性です。
そんなフジ子さんの魅力を堪能できる本を紹介いたします。
フジ子・ヘミング―魂のピアニスト
フジ子ヘミング(著) (求龍堂)
フジ子さんの半生を綴ったエッセイ。
スウェーデン人の父、日本人の母を持ち、無国籍で留学するにもパスポートがとれずに難民としてドイツに留学。
やっとチャンスに巡り合えたと思った演奏会の前に風邪をこじらせて聴力を失い、差別や孤独のなかでもひたすら音楽を愛し続け、生まれた魂に響くピアノの音。波乱万丈に思える彼女の人生が生み出した愛に溢れる音楽が、言葉となりまっすぐ私たちの心に届けてくれます。
フジ子・ヘミング 我が心のパリ
フジ子・ヘミング(著) (CCCメディアハウス)
窮屈なドイツから抜け出し、パリに通っていた貧しい音楽生時代。教会で聞いた讃美歌に心は満たされたけどお腹は満たされなかったという彼女がパリに家を持つようになり、自由気ままに暮らしている。
カフェでタバコをふかして思い出にふける姿の写真はまるで一枚の絵画のよう。パリの街角、モンマルトル、サンルイ島、愛する美術や本、自然と猫。
弱きもののためにピアノを弾き続ける質素で洗練された姿はパリジェンヌです。パリの暮らしや芸術家についても知れるフォトエッセイ集。
フジ子・ヘミング―ピアノのある部屋から
バウハウスで学んだ画家を父に持つフジ子さんはピアノだけではなく絵画の才能もお持ちです。柔らかく繊細で自由なタッチで描く人物や猫、花や天使の絵は独創的で美しく、ローレックやシャガールを彷彿させられます。描きためた絵画や友人に送ったカード、演奏会のパンフレットの挿絵など素敵な絵がたくさん掲載されているコンパクトな画集。「フジコ・ヘミング画集 青いバラの夢」もあわせてどうぞ。
フジ子・ヘミングの評価、実力について
ときに激しく、ときに憂愁に満ちた彼女のピアノの音は、決して単調ではなくテクニックを披露するわけではなく、ピアノの規律正しい硬い音とは思えないほどの壮大な物語が目の前に広がるかのよう。鮮やかな色彩や四季おりおりの景色、はかりしれない感情の波が熱っぽく押し寄せてきて、心を揺さぶられます。
読めばコンサートにも行きたくなる。
世界中でコンサートを開き、新しいCDも発売して大活躍されているフジ子さん。
ドキュメンタリーの映画「フジコ・ヘミングの時間」も公開され、日々ピアノの音に磨きをかけてらっしゃいます。その素敵なピアノの音を聞きながら、彼女の魅力に触れてみてください。