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【和菓子がテーマの絵本・おすすめ10選】かわいい・おいしい・おしゃれ。子どもと一緒に“和の甘さ”へ入る絵本

子どもが「和菓子は苦手」と言うたびに、こちらの記憶の引き出しが勝手に開く。桜もちの葉の香り、あんこの匂い、湯気の立つ団子。和菓子は味だけでなく、季節や手仕事の気配まで連れてくる食べ物だ。絵本はその入口を、押しつけずにそっと作ってくれる。

ここでは、和菓子が苦手な子にも、和菓子が大好きな子にも届く絵本を10冊まとめた。読み終えたあとに、近所の和菓子屋さんへ散歩に出たくなる本だけを集めている。

 

 

和菓子の絵本を選ぶときの視点

和菓子に親しむ近道は「味を好きにさせる」より先に、「見た目が好き」「作ってみたい」「この子(お菓子)がかわいい」を育てることだ。キャラクター性、手のしごと、季節の匂い。このどれかが刺さると、子どもの中で和菓子の位置がふっと変わる。

おすすめ絵本10選

1. 和菓子の絵本―和菓子っておいしい!(あすなろ書房)

和菓子の絵本

和菓子の絵本

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平野恵理子の絵は、和菓子の“静かな派手さ”をちゃんと知っている。まんじゅう、せんべい、団子、あんこ菓子。季節の上生菓子や各地の銘菓まで、ページをめくるたびに小さなガラスケースが開くような感覚がある。

この本が強いのは、ただ「おいしそう」だけで終わらないところだ。材料や道具、作り方、和菓子の歴史まで、情報は多いのに、語り口がやさしい。知識の本なのに、読後に残るのは“手つき”のぬくもりだ。

和菓子が苦手な子ほど、まずは見た目に惹かれる。味の話に行く前に「これ、きれい」「これ、かわいい」が出てくる。そこから「本で見たやつ、店にあるかな」と外へ向かう。読み聞かせが散歩の理由になる絵本だ。

2. よるのわがしやさん(文溪堂)

だいふくもち、ぼたもち、かしわもち、さくらもち、くさもち。夜の和菓子屋から抜け出した彼らが、洋菓子屋へ偵察に行く。一晩の冒険なのに、子どもの中では立派な“遠征”になる。

この絵本は、和菓子をヒーローにしてくれる。忍者ごっこのスリルがあり、チームで動く楽しさがある。和菓子に距離がある子でも、まず物語の面白さで引っ張られる。

「和」と「洋」の対比も効いている。ケーキの華やかさを否定せず、その上で和菓子の良さが立ち上がる。だから読み終わったあと、子どもの口から「和菓子も食べてみようかな」が自然に出る。

3. よもぎだんご(福音館書店)

ばばばあちゃんと春の野草。よもぎを摘んで、こねて、丸めて、茹でる。工程がそのまま「春の遊び」になっている。和菓子というより、春を食べる絵本だ。

子どもが和菓子を好きになる瞬間は、味より先に“手の感覚”で訪れることがある。この本はまさにそれを作る。外へ出る理由ができて、台所に立つ理由ができて、最後に口に入る。順番がやさしい。

読み終えたあと、子どもがよもぎの匂いを知らなくてもいい。大事なのは「探しに行きたい」という気持ちが残ることだ。和菓子に向かう足どりが、ここから始まる。

4. おもちのきもち(講談社/単行本)

鏡もちが主人公だ。お正月、ぺったんぺったん叩かれて、棒でのされて、ちぎられて――おもちの側から見ると、世界はなかなか過酷である。だからこそ、おもちの「もう、たいへんなんです」という声が妙に切実に響く。

この絵本の可笑しさは、擬人化のうまさにある。顔のない白いかたまりなのに、表情が見える。こちらが勝手に読み取ってしまう。その“読み取らせ方”が、子どもの笑いを確実に取る。

一方で、読後に残るのは笑いだけではない。食べ物に対するまなざしが少しだけ変わる。おもちを焼くときに、子どもが「いたくないかな」と言ったりする。そういう小さな変化が、和菓子を“自分に近いもの”にしていく。

和菓子が苦手な子にも強い。味の話は後回しでいい。まずは、おもちという存在に情が移る。そこから食べる勇気が出る。入口としてとても頼もしい一冊だ。

5. こねてのばして(ブロンズ新社/単行本)

こねて、のばして、ちぎって、まるめて。食べ物の“手前”にある遊びを、真正面から肯定する絵本だ。和菓子の話に見えて、実は「手で作る楽しさ」そのものの話でもある。

和菓子は、工程が美しい。練り、丸め、形を整え、仕上げる。この本を読むと、その工程が子どもの身体に入りやすくなる。大人の指示より、絵本のほうが子どもを動かす。ここが大きい。

読み聞かせ中、子どもが手を動かし始めたら勝ちだ。パン生地でも粘土でもいい。まず「手で変わる」体験が起きると、和菓子の手仕事への理解が一段深くなる。

そして静かに笑える。わざとらしくなく、ふっと笑う。食卓前の空気を柔らかくする本として、かなり優秀だ。

6. さつまのおいも(童心社/単行本)

さつまいもが土の中で暮らしている。ごはんを食べて、歯みがきして、トイレに行って、お風呂に入る。ばかばかしいのに、なぜか説得力がある。その説得力が、子どもを最後まで運ぶ。

和菓子の入口として、さつまいもは強い。いもようかん、大学いも、鬼まんじゅう。甘さがわかりやすく、食感も親しみやすい。和菓子が苦手な子でも、さつまいもは好きだったりする。

この絵本は「食べ物が畑で生きている」という感覚をくれる。和菓子にとって素材は主役だ。小豆や米と同じように、さつまいもにも物語がある。そこに気づくと、子どもの“食べる姿勢”が変わる。

読み終えたら、焼き芋の匂いが欲しくなる。秋の午後、手が汚れてもいい時間に読むと、絵本と現実がきれいにつながる。

7. たべもののたび(童心社/単行本)

食べ物が口から入って、身体の中を旅して、栄養になって、最後に外へ出ていく。そのプロセスを「旅」として描く。子どもが笑いながら、でもちゃんと理解できる形にしている。

和菓子そのものの絵本ではないが、和菓子を大切に扱える子になるための基礎が詰まっている。食べ物は“消えるもの”ではなく“働くもの”だと分かると、選び方も食べ方も変わる。

読み聞かせの最中、子どもは必ず質問をする。「ここ、どうなるの?」「なんで?」。その質問が出る時間は宝物だ。和菓子を食べるときの会話も、自然と豊かになる。

甘いものをただのごほうびにしない。身体に届くものとして見る。和菓子のやさしい甘さが、ここで別の意味を持ち始める。

8. だいふくもち(福音館書店/こどものとも傑作集)

だいふくもちが口をきく。これだけで面白いのに、物語はそこから先がさらにいい。貧乏な家に住みついた“しゃべる大福”。和菓子が、ただの食べ物から「居候」になった瞬間、子どもの想像力が一段上がる。

方言のリズムが気持ちよく、読み聞かせると声が自然に跳ねる。大福のもちっとした白さと、あんこの黒さ。あの二色の対比が、物語の中でいきいきしている。

和菓子の魅力は、食感と余韻だ。この絵本は、その“余韻”を物語の余韻として再現している。読み終えても、だいふくもちの声が少しだけ部屋に残る。

大福が苦手な子でも、この本を読んだあとなら挑戦しやすい。味の説明ではなく、情が先に育つからだ。和菓子は、情で近づける食べ物でもある。

9. もちっこやいて(福音館書店/日本傑作絵本シリーズ)

「もちっこやいて とっくらきゃーして やいて」。歌いながら餅を焼く。その光景がまるごと絵本になっている。北風くんや鬼くんたちが集まって、ばっちゃんの家で餅を焼く。寒い季節の“家の中の楽しさ”が、ページにぎゅっと詰まっている。

この本の良さは、行事や伝統を“説明”にしないところだ。歌って、焼いて、食べて、笑う。子どもにとって必要なのは、その順番だ。理屈はあとでついてくる。

おもちが苦手な子でも、場面の楽しさが先に来る。だから「一口だけ食べてみる」が起きやすい。和菓子は、こういう“場の力”で好きになることが多い。

読み終えたら、フライパンでいい。小さく切った餅を一緒に焼く。焦げ目がつくだけで、子どもの顔が変わる。その変化を作ってくれる絵本だ。

10. へんしんやきいも(金の星社/単行本)

焼きいもが変身する。言葉が変形して、絵が変形して、子どもの笑いが止まらなくなる。読み聞かせる側も、声に出して楽しい。リズムがあるからだ。

和菓子の話から少し外れるようで、実は外れていない。焼きいもの香りや甘さは、和の甘味の親戚だ。さつまいもが好きな子は、和菓子の世界へも入りやすい。ここで「甘さの種類」が増える。

変身ものは、繰り返し読まれる。だから効く。読み返すたびに子どもが言葉を覚え、音の気持ちよさを覚える。その“楽しい反復”が、食べ物への親しみと結びつく。

読み終わったあとに焼きいもを食べると、体験が一気に立体になる。そこから和菓子屋でいも羊羹を選ぶ、という流れも自然に作れる。

絵本の余韻を現実につなぐ、関連グッズ・体験

絵本のあとに、ほんの少しだけ体験を足すと和菓子の記憶は強くなる。大がかりである必要はない。小さな「触れる」を足すだけでいい。

1. 体験型の練りきりキット(絵本つき)

絵本を読みながら練りきりを作れるタイプは、親子の時間がそのまま“和菓子屋の奥”になる。色をつけて、形を作って、最後に食べる。子どもは「自分が作った」味を一生忘れない。

 

 

2. 小さめの季節の和菓子(1〜2個で十分)

10個買うより、1〜2個を丁寧に選ぶほうが効く。絵本で見た色に近いものを選ぶと、子どもの「つながった」が起きる。

3. ほうじ茶(子ども用は薄めで)

和菓子の時間を“イベント”にしてくれる。香ばしさは子どもにも分かりやすい。甘さが落ち着いて、和菓子の余韻が伸びる。

まとめ

和菓子の絵本がくれるのは、甘さそのものより、甘さの周りにある時間だ。季節の色、手のしごと、湯気、匂い。子どもが和菓子を好きになる瞬間は、だいたい味より先に、そういうものに触れたときに来る。

  • 気分で選ぶなら:よるのわがしやさん
  • じっくり読みたいなら:和菓子の絵本―和菓子っておいしい!
  • 短時間で盛り上がりたいなら:へんしんやきいも

まずは一冊。読んで、笑って、それから小さな和菓子屋へ。たったそれだけで、子どもの世界に“和の甘さ”が戻ってくる。

FAQ

Q1. 和菓子が苦手な子にはどれが一番おすすめ?

最初の一冊なら「おもちのきもち」が入りやすい。味の話ではなく、おもちの側の気持ちで笑えるからだ。次に「よるのわがしやさん」で物語の勢いを足すと、和菓子が“食べ物”から“好きな世界”になる。

Q2. 読み聞かせるタイミングはいつがいい?

おやつの前が一番きれいにつながる。夜に読むなら「よるのわがしやさん」が雰囲気ごと持っていく。休日の午後に読んで、そのまま散歩で和菓子屋へ行く流れも強い。

Q3. 絵本から実体験につなげるコツは?

「どんな匂いかな」「どんな手ざわりかな」と五感の質問をひとつだけ挟むといい。答えが合っている必要はない。想像した瞬間に、絵本が体験の入口になる。

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