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【一人暮らし 寂しい おすすめ 小説】上京して孤独を感じる方へ、都会の孤独を垣間見る作品。

首都・東京。近代的でクールなイメージの都市ですが、小説では大衆のなかの孤独を描いた作品が多いように感じます。洗練された緊張感とでもいいましょうか。そこには常に張り詰めた空気があり、人間が都市に動かされているような錯覚さえ覚えてしまいます。今回は、都市の抱える孤独をテーマにした作品を紹介いたします。

 

「帝都物語」

帝都物語

(角川文庫) 荒俣 宏・作
 「江戸」から「帝都東京」へ。近代化が進み、時代の急速な移り変わりに古きものと新しいものが混じりあう、何ともドラマチックな時代です。帝都東京を破壊しようとたくらむ魔人・加藤保憲と、陰陽道や風水、妖術を使って闘うという史実に基づくフィクションエンターテイメント作品です。幸田露伴や渋沢栄一、寺田寅彦、森田正馬といった歴史上の偉人も登場し、壮大かつ奇怪なストーリー展開に目が離せません。

 

「黒革の手帖」

黒革の手帖〈上〉 (新潮文庫)

松本 清張・作
 戦後の東京・銀座が舞台。何度もドラマや映画化されているのでご存知の方が多いのではないでしょうか。ごく平凡な銀行員だった女が、銀座のホステスに転身し、銀座で成り上がっていくために大物たちを動かしていくストーリーです。清張が描く悪女ぶりと、危険な香りがする夜の銀座の街が印象的なミステリーです。

 

「嫌われ松子の一生」

嫌われ松子の一生 (上) (幻冬舎文庫)

山田 宗樹・作
 東京のはずれ、ディープな街、足立区が舞台。真面目だった主人公が、人生の選択を誤り続け転がり落ちていくという話ですが、そのひとつひとつの選択の理由が松子なりに一生懸命良かれと思ってしたことで、運命に弄ばれたとしか言いようがない話です。こう書くと悲惨な話のようですが、文体は軽やかであっという間に読んでしまいます。松子が土手に座って河を眺めるシーンが印象的でした。

 

大都市だからこそ、そこに根付くことのできない哀しさや孤独感。そのなかでも懸命に生きようとする人物が登場する小説たちです。そんな哀しさは誰しもが心のなかに持っているものでしょうが、都会との対比により、一層色濃く描かれています。自らの孤独に向き合うことは強くなれること。そんなきっかけになる一冊になるかもしれません。

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