ただただ一生懸命で、誰かを、何かを愛し、傷つくことも恐れずに何かにのめりこんでいく情熱と強さ、ひたむきな愛情ささげることができる純粋さ。そんな人が大好きです。見返りを求めたり、計算ずくだったり、誰しもそんな一面はあるでしょう。それを軽々と乗り越えていく身軽さに惹かれてしまいます。今回は、そんな純粋な男性が登場する小説を紹介いたします。ピュアな気持ちになりたいときにどうぞ。
「トリツカレ男」
いしい しんじ・作
オペラ、昆虫採集、三段跳び・・・常になにかにとりつかれている男、ジュゼッペ。街で見かけたペチカという女の子に恋をした。すべては彼女を笑顔にするため。一途でまっすぐな愛情は凍り切ったペチカの心も溶かしていき、彼のとりつかれたものがみんなを幸せにしていく。児童書のような童話形式で、さらりと読めるのに心にじんとくる作品です。
「肝臓先生」
(角川文庫) 坂口 安吾・作
安吾の作品のなかでも毛色が異なる作品。戦後、足医者として私生活を投げうっても、患者のために奔走しつづけるカンゾー先生。ウィルス性肝臓炎症の治療に生涯を捧げた実在の医師、佐藤精一がモデルとなっている。何でも肝臓病にみたてたことから「カンゾー先生」と馬鹿にされながらも自らの信念に実直に動く姿はドン・キホーテにもなぞられる。ぐいぐいと押されるような文体で、戦争や死といった重いテーマを面白おかしく書き進めていきます。表題作のほかにも、「魔の退屈」「私は海をだきしめていたい」「ジロリの女」「行雲流水」と安吾入門者にもおすすめの短編が収録されています。
「Jimmy」
(文春文庫) 明石家 さんま・作
ジミー大西さんが明石家さんまさんと出会い、芸人を経て画家になるまでのお話。天然というか一途というか、若こと、さんまさんを恋人のように思い続け、東京まで走って会いに行こうとするジミーさん。破天荒でとにかく笑えて、さんまさんの笑いの哲学にほれそうになります。オクレさんや当時のよしもと芸人も登場し、昭和レトロな雰囲気もあたたかくて素敵です。
人生に疲れたとき、人の温かさに触れたいときにおすすめの3冊です。つらいときこそ笑い飛ばす、そんな強さ、温かさをもった人間になりたいと思います。