人が生きている限り避けて通れないもの。死と病です。生まれたその瞬間から死へのカウントダウンは始まっているのに、その恐怖ゆえに、今は健康だ、無茶しても平気な体質だ、健康診断なんてアテにならないなどと言い張る人もいます。
健康だから偉いんじゃない。病と共存することは、人間性を否定することにはならないことを、闘病中の方も健康な方も知っておいてほしいと思います。いつか必ず通る道。自分だけではなく、大切な誰かが病にかかったときに読書が大きな力となって支えてくれることがあります。
いのちの初夜
北条 民雄(著) (角川文庫)
ハンセン病を扱った書籍であり、暗くて辛い話なのだろうと私自身しばらく読めないでいましたが、魂を揺さぶられるような衝撃を与えてくれた作品です。日本版「夜と霧」ともいえる、強く真っすぐ生きる姿。作者の自伝的小説です。人間ではなく生命だ、という一言が頭の中でずっとリフレインし続けています。
未闘病記――膠原病、「混合性結合組織病」の
笙野 頼子(著) 講談社
芥川賞作家である著者の私小説「未」闘病記。膠原病にはいろんな種類があること、一人一人症状が違うことで誤解を招いてしまうことに配慮して「未」闘病記とつけられています。難病って今は国で認められてるんでしょう?お金くれるんでしょう?なんていった誤解から軽々しく話してはいけないことが理解できると思います。希少疾患のうえ、治療療法も確立されていないのに社会から取り残される孤独感。私小説として闘病記を書き綴ったこの本も、笙野ワールド全開です。
普及版 モリー先生との火曜日
ミッチ・アルボム(著)(NHK出版)
ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病に侵された大学の恩師と過ごす最後の数週間。「死」を受け入れるということは簡単なことではありません。その最後のひとときをも愛弟子に講義を行うモリー先生。心の在り方や、最後まで人と寄り添う姿に、自分の最後もこうありたいと感じさせられました。アメリカで大ベストセラーとなった一冊です。
人は自分が体験したことでないと理解できないことも多々あります。病との闘いは、それゆえ孤独になりがちです。誰にも話すことができない心のわだかまりもページを開けば取り除いてくれるような優しい本です。