歴史と伝統が今なお残る街、美しい街並が魅力の京都。日本の良き昔ながらの文化が今なお色濃く残る街です。四季折々の顔をのぞかせ、訪れる度に表情を変えるのも魅力の一つ。今回は、そんな京都を舞台とした小説を紹介いたします。
「古都」
川端 康成・作
京都の祭りや名所がたくさん登場する作品。しっとりとした京都の風景、四季の移ろいや儚さが丹念な文章で描かれています。美しい少女は捨て子という境遇んのなかでも周りの愛情に支えられて生きている。生き別れた双子との出会いというスリリングなストーリーに、はんなりとした京ことばが光ります。失われた古都がここにあります。
「檸檬」
梶井 基次郎・作
1907年、京都・三条通麩屋町に開店していた丸善京都本店が舞台。日常のなかの怠惰、おしよせてくる不安が美しい文章によって色鮮やかに、爽やかなところまで昇華されている。ラストシーン、本屋で檸檬を置いて立ち去るシーンは有名で、2015年に丸善が再オープンした時に檸檬置き場の籠が置かれたほど。甘酸っぱい檸檬の爽やかな香りが文章の中から漂ってきます。
「マリアの空想旅行」(ちくま文庫)
森 茉莉・作
さすが森鴎外の娘、森茉莉。「芸術新潮」から古都を旅して「ひともする古都巡礼」という連載のエッセイを頼まれたものの、旅嫌いのため、一年間一度も現地に行かずに写真や映画、思い出を元に書いたというエピソードが常識外れで笑えます。後半は大好きな巴里についてのエッセイです。子ども心を失わない独特の美意識の世界を堪能あれ。
「鴨川ホルモー」
万城目 学・作
京都の大学サークルに所属する青年たちのナンセンスな青春もの。陰陽師、式神など京都らしいものが登場。現代の京都の恋愛や異界が混じった爆笑エンターテイメントです。映画化もされているので、あわせてチェックしてみてはいかがでしょうか。
小説の中でも色んな表情をみせる京都。旅のおともに一冊いかがでしょうか。旅行前に読んでおくと、また違った景色がみえるかもしれません。