毎日の生活をまるでコマ送りのように過ごすのなら、それは動物と一緒。「人間は考える葦である」パスカルが唱えた通り、人間は思考するからこそ人間なのです。
哲学や思想を持つということは立派なことです。自分なりの考えをもって世界を見渡すことができるのは自由を手に入れること。
何もかもロボットのように黒か白かで判断することは人間性を失うことにつながります。今回は、そんな自由の翼を手に入れることができる哲学的で心揺さぶられる本を紹介いたします。
世界を、こんなふうに見てごらん
日高 敏隆(著) (集英社文庫)
動物行動学者の著者のエッセイ集。自然の世界は人間が思っているよりもずっと不確かで曖昧なもの。
人間の作り出した小さな世界をくぐりぬけ、真理があると思いこまずにイリュージョンだと思って眺めてみなさい。
常に複数の視点を持つこと、いろんな生き物の生き方をたくさん研究することなど、科学や生物が苦手な方にもやさしい語り口で哲学的に語りかけてくれます。
いつでもそばにおいておきたい大切な一冊です。
アルベール・カミュ (1) カリギュラ
アルベール・カミュ (1) カリギュラ (ハヤカワ演劇文庫 18)
アルベール・カミュ(著) (早川書房)
「異邦人」「シーシュポスの神話」と共にカミュの不条理三部作と呼ばれている作品。愛する妹を亡くし絶望したカリギュラは暴君になってしまう。月が欲しいと不可能性を克服することにより自由を手に入れようとするカリギュラ。
自分が不条理な存在になることによって、世界を膝まずかせようとしました。残虐の仮面をつけて戦いを挑むその先には何があるのか。カリギュラは本当に暴君だったのか。カミュが投げかけた不条理の問いにみなさん自身が答えを出してください。
ゆっくりおやすみ、樹の下で
高橋 源一郎(著) (朝日新聞出版)
小学校5年生のミレイちゃんは鎌倉のおばあちゃんの家「さるすべりの館」で不思議な夏休みを過ごすことになります。おばあちゃんのバーバ、ぬいぐるみのビーちゃん、愛犬のリング。
赤い部屋、止まった時計、緑の部屋の肖像画。謎がいっぱいの館で出会った人はいったい誰?純粋な子供心と忘れてはいけない大切な記憶を思い出させてくれる児童小説。バーバのすべてを見通したような優しい哲学に胸をうたれます。
効率的で論理的な人は哲学の世界が鬱陶しく感じるかもしれません。答えがないからこそ、常に考え続ける必要がある学問だからです。生きていくこと自体が答えのないものだからこそ、人生の壁にぶつかったとき、一番近くで寄り添ってくれる知識です。これをきっかけに、日々「無駄なこと」を考える習慣をつけてみてはいかがでしょうか。