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【痛み メカニズム 本】本当の「痛み」とは何か。小説から読み解いてみる。

 悲しいことがあると胸がしめつけられるように痛む。事故や怪我、病気によって身体が痛む。

痛みというのは人間にとって不快なものですが、一方で危険を知らせる大切な役割があります。乗り越えられる急性の痛みもあれば、慢性的に悩んでいた痛みも人との触れ合いで感じなくなる瞬間があったり、痛みのメカニズムは医学的にもまだ解明されていません。今回は文学からみた「痛み」をテーマにした作品を紹介いたします。

痛みに悩まされている方、痛みに寄り添いたい方はどうぞ。

 

ペインレス(上・下)

ペインレス 上巻

天童 荒太(著) (新潮社)
 こころの痛みを感じない麻酔科の女医万浬。普段から痛みに関心を抱いていた。そこに現れたテロで痛みを感じなくなった森悟。主観的であり、個人差もある痛みとは何なのか。

肉体的、精神的な痛み、それぞれが絡みあう痛みの問題。それを理解してもらえない辛さ。著者が20年かけて構想した骨太な作品。ディープな性描写もありますが、揺れ動く人間性を感じさせられます。

 

疾走(上・下)

疾走【上下 合本版】 (角川文庫)

 重松 清(著) (角川文庫)
 ごく平凡な家庭で育った中学生のシュウジ。優等生といわれていた兄が犯罪を犯し、一家は苦難の道を歩むことになる。

父は家出、母はギャンブル依存症、イジメ・・・。暗く重く、破滅に向かって疾走するシュウジに救いの道はあらわれるのか。聖書、救済といったテーマも含み、抱え続ける痛みをどう癒していくのか。強くありたいと思わされる一冊です。表紙の恐さにおびえずに読んでみてください。

 

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

 村上 春樹(著) (文春文庫)
 個性もない、特技もない多崎つくるは劣等感を抱いて生きている。決断力もなく自信もない。周りが羨ましいばかり。

大人になって駅をつくるという夢を叶えたかのように思えたつくるだが、相変わらず色彩を持たない自分と向き合うことになり、高校の頃にグループから絶縁されたメンバーたちを訪ねる巡礼にでかける。

痛みと痛みによってつながる人間模様。永遠に変わらない過去と時の経過によって変化する関係。欧米でもベストセラーとなった空虚な痛みを感じる一冊です。

 

 他人の痛みだから理解できないと断ち切ってしまうのは人間としてどうかと思います。痛み、苦しんでいる人の傍にいて癒してあげれるような人間になりたい、他人の痛みを少しでも理解したいと思わせてくれる本です。
 

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