きょうだいげんかが絶えないときも、赤ちゃんが生まれて上の子がざわついているときも、最後に支えになるのは「自分は大事にされている」という実感だと思う。この記事では、兄弟愛と友情をやさしく描いた絵本・児童書を10冊、実際に読んでよかったと感じたものから厳選して紹介する。読み聞かせにもひとり読みの時間にも、子どもの心にゆっくり染み込んでいく物語ばかりだ。
おすすめ本10選
1. ふたりはともだち (ミセスこどもの本)
がまくんとかえるくんという、どこか不器用で、でも根っこのところで深くつながっている二人の毎日を描いた短編集だ。おしゃれな哲学書のように語られるのではなく、「手紙が来ない」「ベッドから出たくない」といった、子どもにも大人にも身近な出来事が淡々とつづられていく。そのなかで、相手を思いやるとはどういうことか、友だちとしてそばにいるとはどういう感覚かが、じわじわと伝わってくる。
兄弟愛という言葉をそのまま扱っているわけではないが、「いつも一緒にいる誰か」との距離感を考えるにはうってつけの一冊だ。きょうだい同士で読めば、お互いにとっての「がまくん」「かえるくん」が誰なのか、自然と重ねてしまう子も多い。小学2年生の教科書にも採用されてきた作品なので、親世代が懐かしさを感じながら一緒に読むのもいい。
こんな人にすすめたい本だ。兄弟げんかを繰り返しながらも、なんだかんだ相手のことが気になる子ども。友だちづきあいとの違いに戸惑っている年長〜小学生。自分のペースを大事にしながら誰かとつながっていたい内向的な子にもよく合う。短編ごとに完結しているので、寝る前の「一話だけ読み聞かせ」にも使いやすい。
読み返すたびに「友だちって、こうやって続いていくんだな」と肩の力が抜ける本だと感じている。派手な事件は起こらないのに、がまくんとかえるくんの小さなやり取りが、子どもの日常とぴたりと重なる。兄弟愛をテーマにした絵本リストの一冊目として、この本を置いておくだけで、記事全体の空気がやさしく整うような存在だ。
2. ないたあかおに (絵本・日本むかし話)
人間と仲良くなりたい優しい赤おにと、その願いをかなえるために自分を犠牲にする青おに。物語としては有名だが、あらためて読み返すと「本当の友情とは何か」という問いが胸に残る。兄弟のように育った友だちや、実のきょうだいの関係にもそのまま重ねられるテーマだ。
この絵本は、勧善懲悪では終わらないところに深さがある。赤おには人間と仲良くなる夢をかなえたものの、大切な青おにとは会えなくなる。その喪失感を抱えたまま、それでも前を向いて生きていく姿が描かれている。子ども向けの絵本としてはかなり重い余韻だが、その重さがあるからこそ、兄弟や友だちの存在をあらためて考えるきっかけになる。
読み聞かせで使うと、最後のページを閉じたあとにしんとした沈黙が落ちることが多い。すぐに感想を言葉にできない子もいるが、数日たってからぽつりと「青おに、かわいそうだった」「あかおに、うれしいけどさみしいよね」と話し始めることもある。そういう時間ごと、子どもの心の成長につながっていく本だと思う。
兄弟げんかが続いている家庭や、友だちとの別れを経験した子どもに読んであげたい一冊だ。無理に「だから仲良くしようね」とまとめなくていい。ただ物語を共有して、何か感じることがあれば少しだけ話を聞く。そのくらいの距離感が、この絵本にはちょうどいいと感じている。
3. デブの国ノッポの国 (子どものための世界文学の森 18)
フランスの作家アンドレ・モロワによる児童文学で、エドモントとチェリーという兄弟が、地下の不思議な国に迷い込むところから物語が始まる。体型や性格の違いをめぐる偏見や対立、戦争の影が描かれながらも、その中心にあるのは「違うからこそ支え合える兄弟」というテーマだ。
絵本というより児童書に近い分量なので、小学中学年ごろからのひとり読み向きだが、読み聞かせで少しずつ章を分けて読むのもおすすめだ。デブの国、ノッポの国という極端な世界は、子どもにとってユーモラスで分かりやすい。けれど読み進めるうちに、「自分と違う相手を笑いものにしていないか」「多数派と少数派の関係って何だろう」といった問いが自然と浮かんでくる。
兄弟のどちらかが「からだの大きさ」「運動神経」「勉強」などで比べられてしまいがちな家庭には、とくに響く一冊だと思う。違いを否定するのではなく、違いを持ったまま共に困難に立ち向かう姿が描かれているからだ。きょうだいのタイプが対照的なほど、二人の姿に重ね合わせやすい。
読み終えたあと、「自分たちがデブの国とノッポの国に行ったらどうする?」と対話を広げると、子どもなりの正義感や恐れ、勇気が見えてくる。兄弟愛の絵本を少し卒業して、もう一段階深い物語に触れたいときに手に取りたい一冊だ。
4. ちょっとだけ (こどものとも絵本)
赤ちゃんが生まれて、お姉ちゃんになったなっちゃん。お母さんは赤ちゃんのお世話で手いっぱいで、なっちゃんは「じぶんで、ちょっとだけ」いろいろなことをがんばろうとする。牛乳を自分で注いでみたり、ボタンを留めてみたり。けれど、うまくいくことばかりではない。
この絵本がすごいのは、上の子の視点にとことん寄り添っているところだ。赤ちゃんを嫌いになったり、家出したりするような大きなドラマは起こらない。小さな我慢、小さな不安、小さな誇らしさが積み重なっていく。その積み重ねを「ちょっとだけ」というフレーズで静かにすくい上げている。
読み聞かせをしていると、ページをめくるたびに表情が変わる上の子の姿が印象的だ。自分もこんなふうにがんばっている、自分も本当は甘えたい、そんな感情が行ったり来たりしているのが伝わってくる。最後にお母さんが「だっこ、してあげようか」と言う場面で、子どもがほっと息をつくことも多い。
第二子以降を迎える家庭の「上の子ケア絵本」として、鉄板でおすすめしたい一冊だ。兄弟愛は、最初からきれいに育つものではない。小さな嫉妬やがんばりの上に、すこしずつ形を変えながら生まれてくる。その過程を、お説教抜きで丁寧に描いてくれている本だと感じている。
5. あかちゃんがやってきた (こどものとも絵本)
タイトルどおり、赤ちゃんが家にやってくる日から始まる物語だ。お母さんのおなかがだんだん大きくなっていく時間、病院に行く日を待つ時間、そして赤ちゃんが家に帰ってきてからの毎日。上の子が、その変化をどんなふうに感じているのかが、やさしい絵とことばで綴られている。
特徴的なのは、「うれしい」だけでなく「とまどう」気持ちもきちんと描かれているところだ。赤ちゃんはかわいい。けれど、お母さんをひとりじめできなくなるさびしさもある。その複雑さに大人が気づかないと、上の子は「良いお兄ちゃん」「良いお姉ちゃん」を演じ続けてしまう。絵本はその内側の揺れを丁寧にすくい取る。
第二子出産前後の家庭で、上の子と一緒に読みたいタイミングがたくさんある。おなかの赤ちゃんに話しかける場面では、おなかに手をあてながら読むと、きょうだいとしてのつながりが一段と実感しやすくなる。退院の日の描写を読めば、「うちもこうなるのかな」とイメージがふくらむ。
兄弟愛のスタート地点を前向きな記憶に変えておくことは、その後の関係にも長く影響する。この絵本は、親の不安も子どもの不安も、いったん受け止めてくれるクッションのような役割を果たしてくれる。出産祝いとして贈っても喜ばれる一冊だ。
6. ぼくはおにいちゃん 改訂新版
主人公の男の子は、お兄ちゃんになったことを誇らしく思いながらも、心のどこかで「お母さんは弟のことばかり見ているのでは」という不安を抱えている。その揺れが、場面ごとの細かな表情やしぐさに丁寧に表れている。
兄弟愛の絵本というと、最初からほほえましい場面が続くものが多い。この本は、そこに至るまでの複雑なプロセスも描こうとしている。やきもちを焼いたり、ちょっと乱暴してしまったり、素直に抱きしめられなかったり。子どもの「きれいじゃない感情」にも光を当てているぶん、実感を持って読める親子は多いと思う。
読み聞かせをしていると、「ぼくもこう思ったことある」とポロリと本音が出てくることがある。そこから、親子で小さな対話が生まれる。「弟ばかり見ているように感じていた?」と聞いてみたり、「お兄ちゃんだからって、がまんしなくていいんだよ」と伝え直したりするきっかけになる。
改訂新版という形で今も版を重ねているのは、こうした兄弟関係の揺れが、時代が変わっても普遍的だからだろう。第二子以降で、とくに「長男・長女」の気持ちが気になっている家庭には、一度目を通しておいて損のない一冊だと感じている。
7. おとうとが おおきくなったら
まだ小さな弟を前に、「おとうとが大きくなったら、いっしょに何をしようかな」と想像をふくらませていくお兄ちゃんの物語だ。現実の弟は、泣いたり、こぼしたり、思うように遊べなかったりする。けれど、心のなかでは未来の弟と全力で遊んでいる。
この絵本は、「今」の不便さだけではなく、「これから」を楽しみに待つ視線を子どもに手渡してくれる。兄弟愛というと、過去の思い出を振り返る話が多いが、この本は未来形の兄弟愛を描いているところが新鮮だ。時間をかけて関係を育てていく感覚が、ごく自然に伝わってくる。
読み聞かせをすると、上の子が「大きくなったら、こんなこともしたい」と自分の言葉で話し始めることがある。キャンプに行く、公園で鬼ごっこをする、ゲームを教える。どれもささいな計画だが、「弟がいるからこそ思いつく未来」だ。その想像を一緒に楽しむことが、兄弟愛の土台になっていく。
弟や妹がまだ赤ちゃんで、「今はただ騒がしいだけ」に見えてしまう時期ほど、この本のような未来へのまなざしが支えになる。兄弟げんかが増えてきた時期に読み返すと、「こんなふうに思っていた時期もあったね」と原点を思い出させてくれる一冊でもある。
8. ぼくはひなのおにいちゃん
妹の「ひな」が生まれて、お兄ちゃんになった男の子の日常を描いた絵本だ。おむつ替えのにおい、ミルクをこぼした床、泣き声で眠れない夜。きれいごとだけでなく、暮らしの手触りがそのままページに載っている。だからこそ、「あるある」と笑いながら読める親子は多いと思う。
この本の魅力は、妹を世話するお兄ちゃんの姿が、「えらいね」と持ち上げられすぎていないところだ。ときには面倒くさがり、ときには得意げになり、ときにはお母さんに甘えたくなる。その揺れをそのまま受け止めてくれている。兄弟愛は、立派さだけではなく、こうした不器用さの中にこそ宿るのだと感じさせてくれる。
日常場面が中心なので、読み聞かせもしやすい。一日の終わりに「今日はどんなことをひなとした?」と振り返りながら読むと、その日一日が少しやわらかく締めくくられる。写真アルバムを眺めるような感覚で、何度も開きたくなる本だ。
妹や弟がいる家庭の、定番の一冊として本棚に置いておきたい。兄弟愛を声高に語らないぶん、読み手それぞれの経験がすっと入り込む余白がある。そういう余白の多さが、繰り返し読める絵本の条件なのだと思う。
9. おにいちゃん (絵本・ちいさななかまたち)
浜田桂子さんによるこの絵本は、「おにいちゃん」という役割そのものをテーマにしている。親や周囲から「おにいちゃんなんだから」と期待されることの重さと、実際の自分とのギャップ。そのあいだに挟まれて戸惑う心が、繊細な線と色で描かれている。
兄弟愛を語るとき、つい「優しくしてあげてね」「守ってあげてね」と上の子に求めてしまいがちだ。この絵本は、その裏側にある葛藤を代弁してくれる。読みながら、「そうか、こんなふうに感じていたのかもしれない」と親がハッとする場面も多い。
上の子が感情をうまく言葉にできないタイプの場合、とくに助けになってくれる本だ。読み聞かせをしたあと、「ここ、今の自分に似てる?」と指で指し示すだけでも、子どもなりのサインが返ってくることがある。そこで初めて、「おにいちゃんだから」と無意識にかけていたプレッシャーに気づくこともある。
兄弟愛をうまく育てたいと思うなら、まず上の子の気持ちをほどいてあげる必要がある。この絵本は、その入口にそっと灯りをつけてくれる存在だと感じている。
10. ぼく「お兄ちゃん」なんだから (みらいの心をつくる絵本)
こちらは、まさに「お兄ちゃんだから」という言葉を正面から扱った一冊だ。主人公の男の子は、周りの大人から何度も「お兄ちゃんなんだから」と言われる。そのたびに、うれしいような、苦しいような、何とも言えない気持ちになる。その揺れを物語が追いかけていく。
この絵本のいいところは、「お兄ちゃんなんだから」という言葉自体を完全に否定しているわけではないところだ。頼られることの誇らしさも、ちゃんと描かれている。そのうえで、「がまんばかりではなく、助けてと言ってもいい」「甘えてもいい」というメッセージが、物語の流れの中で自然に伝わってくる。
兄弟愛は、上の子と下の子のどちらか一方ががまんして成り立つものではない。この本を通して、「お兄ちゃんだからこそ感じること」を大人も学び直すことができる。読み終えたあと、「うちではどんな言葉のかけ方をしているかな」と振り返るきっかけにもなるだろう。
「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」という言葉を日常的に使っている家庭には、一度読んでおきたい本だ。兄弟愛をテーマにした絵本リストの最後に置くことで、きょうだいの関係だけでなく、親子の関係もそっと見直す流れが生まれる。
兄弟愛・友情の絵本を選ぶときのポイント
兄弟愛や友情をテーマにした絵本を選ぶときは、「きれいな関係だけが描かれているかどうか」よりも、「揺れや葛藤にどこまで寄り添っているか」を基準にすると選びやすい。やきもちや怒り、さびしさといった感情がきちんと描かれている本ほど、子どもの心には深く届く。
もうひとつ大事なのは、子どもの年齢と読み方だ。未就学児には短くてリズムのよい絵本を、小学中学年以降には物語として読みごたえのある児童書を、と段階に合わせて選ぶと、無理なく物語に入っていける。兄弟げんかが激しい時期は、あえて説教臭くない本を選び、「どう思った?」とだけ聞いてみるくらいの距離感がちょうどいい。
親自身が子どものころに読んだ本をもう一度手に取ってみるのもおすすめだ。自分が何に心を動かされたのかを思い出すと、今の子どもと向き合うときの視線も少しやわらぐ。兄弟愛の絵本は、子どものためだけでなく、大人のためのリトマス試験紙のような役割も果たしてくれる。
関連グッズ・サービス
- 読み聞かせをたっぷり楽しみたいなら、 Kindle Unlimited を使って電子版の絵本や児童書をまとめて読むのも便利だ。紙の本と合わせて使うと、外出先でも兄弟愛の物語を楽しめる。
- 移動中や寝かしつけ時に物語に触れたい家庭には、 Audible で児童書の朗読作品を流しておくのも一つの方法だ。耳から物語に触れると、きょうだい一緒に同じ世界を共有しやすい。
- 兄弟で読む時間を大切にしたいなら、子ども用の読み聞かせライト付きのスタンドや、寝室に置ける小さな本棚などもあると便利だ。お気に入りの兄弟愛絵本を一箇所にまとめておくと、「今日はどれにする?」というやり取りも自然に生まれる。
まとめ:今の兄弟関係にいちばん近い一冊から
兄弟愛を描いた絵本は、きれいな仲良しの姿だけでなく、やきもちや不安、誇らしさや照れくささまで、子どもの心の輪郭をそっと浮かび上がらせてくれる。兄弟愛 絵本 おすすめと検索してたどり着いたなら、今のきょうだいの姿や気分にいちばん近い一冊から手に取ってみてほしい。
- 気持ちをじっくり味わいたいなら:ふたりはともだち/ないたあかおに
- 上の子のケアをしたいなら:ちょっとだけ/あかちゃんがやってきた/ぼくはおにいちゃん
- 少し大きい子に読みごたえを求めるなら:デブの国ノッポの国
兄弟関係は、親がコントロールできるものではないが、物語という「共通の言葉」を渡しておくことはできる。今日紹介した10冊のうちどれか一冊でも、きょうだいの記憶に長く残る本になればうれしい。
よくある質問(FAQ)
Q: 兄弟愛の絵本は何歳ごろから読める?
A: 赤ちゃんが生まれる前後なら2〜3歳ごろから読み聞かせで十分楽しめる。児童書タイプは小学中学年くらいから、自分で読む本としてすすめるといい。
Q: 兄弟げんかがひどいときに読んでも効果はある?
A: すぐに仲直りさせるための魔法の道具ではないが、物語を通して相手の気持ちを想像するきっかけにはなる。けんかの最中に読むより、落ち着いた時間に少しずつ触れていくのがおすすめだ。
Q: 上の子が絵本を嫌がるようになってきた場合は?
A: 無理に絵本だけにこだわる必要はない。マンガや児童向け小説、オーディオブックなど、物語の入り口はいくつもある。兄弟や友だちとの関係を描いた作品を一緒に探すところから始めるといい。
Q: 兄弟のいない一人っ子が読んでも楽しめる?
A: もちろん楽しめる。きょうだいの関係は、親友やいとこ、クラスメイトとの関係にも重ねて読むことができる。兄弟愛の絵本は、人との距離の取り方や思いやりの感覚を育てる物語として、一人っ子にも十分意味がある。









