「好きなエッセイ本」によくリストアップされている名作
どんよりと気持ちが落ち込んだとき、少し生活に疲れがたまってきたときに読むと心が穏やかになるエッセイを紹介いたします。
女性が書いた作品は生活に根づいたエッセイが多くあります。その暮らしぶりに憧れたり、自分に足りないところをマネしてみると毎日が楽しくなるかもしれません。
今回は「好きなエッセイ」によくリストアップされている名作を紹介いたします。一日の終わりや家事・仕事の隙間時間に読んで癒されてくださいね。
コットンが好き
高峰 秀子 (著) (文藝春秋)
「銀座カンカン娘」など昭和を代表するキネマ女優・高峰秀子さんが集めたお気に入りのものたち。骨董、飾り棚、はんこ、風呂敷、真珠、浴衣、腕時計、手燭、ダイヤモンド、天眼鏡…。身の回りにある素朴な日常品から思い入れのある一品まで、値段に関わらず大事にされてきたものたちがオールカラーで紹介されています。
物と思い出のエピソードを読んでいると、楚々として品がよく少し茶目っ気がある高峰さんの笑顔が浮かんでくるよう。
旦那様との愛にあふれた生活とシンプルだけど心地よい暮らしを綴ったエッセイです。
自分だけの宝物に囲まれて暮らしたいという方におすすめの一冊。
私の浅草
沢村貞子 (著) (暮しの手帖社)
連続テレビ小説「おていちゃん」の原作になった本。
大正から昭和にかけて、著者が20年余り過ごした東京下町・浅草に育った著者による人情あふれる長屋の住人との触れ合い、子供たちとの生活や家族の思い出、関東大震災、四季折々の町の表情などを綴ったエッセイです。
気風の良い江戸っ子気質や人の命の儚さ、日本人の真面目さなどいまは忘れかけた大和魂を感じさせてくれます。
まあまあふうふう。
八千草 薫 (著) (主婦と生活社)
上品で穏やかな八千草薫さん。中国語でいい加減という意味の「馬馬虎虎」からとった題名とのこと。
思い出があるものたちを大切にしながら丁寧に暮らしてらっしゃる様子や、趣味の山登りのこと。癌が見つかり、死を覚悟したうえで「まぁいいかな」といえる強さ。どこまでも自然体で凛とした文章は八千草さんの柔らかな表情と同じ。
読んでいる間、優しい時間が流れていくようです。惜しくも遺作となってしまいましたが、手元において心が疲れた時に何度も読み直して大切にしたい本です。
無理をせず、自然体。だからこそ生活の些細なことからも、その人となりが見えてくるから不思議です。どのエッセイも今の自分を受け止めてくれるような優しさに溢れていて憧れてしまいます。生活することは生きること。毎日の暮らしを大切にしてくださいね。