人生いろいろ…ワケありな小説
平凡な人生を描いた小説もほっこりさせてくれますが、個性的な人やちょっと影のある登場人物に引き寄せられることはありませんか?
平和なだけじゃ面白くない、人生いろいろあるからこそ人間に味が出るのです。
今回はそんな愛すべきダメ人間や運命に振り回された人が登場するワケあり小説を紹介いたします。しんみりと静かな世界観にひたってみてください。
はんぶんのユウジと
壇蜜 (著) (文藝春秋)
タレント・コラムニストとして人気の壇蜜さんによる初めての短編小説集。
見合い結婚をして早々、夫のユウジが亡くなって未亡人になってしまったイオリ。悲しむ間もないまま、半分に分けられた夫の遺骨と暮らし始めますが…。
「文學界」に掲載された表題作のほか「タクミハラハラ」「パット エミデテ テレルフターリ」「にびいろ八分咲き」「スカイコート101号室」の5編が収録されています。
それぞれ完結した短編が、ときに交わりすれ違っていく不思議な読み心地。
接客業や葬儀に関わる仕事をされていた壇蜜さんだからこそ書ける孤独と縁、死人と残された者の哀しみや優しさが描かれています。
スナック墓場
嶋津 輝 (著) (文藝春秋)
日常の一コマを切り取ったようなクセのある人たちの生活が描かれた短編集。第96回オール讀物新人賞受賞作の「姉といもうと」を含む7編が収録されています。
どこか昭和のにおいがするような明るさと寂しさが漂い、どこか懐かしく、そっと心に寄り添って癒してくれる作品ばかり。知人の話を聞いているかのように、すっと本の世界に入っていけます。
シニカルな文章のなかにも笑いがふとこみあげてくるようなエスプリがある個性的な作家さん。新人さんとは思えないほどの実力です。
人間
又吉 直樹 (著) (毎日新聞出版)
現代版「人間失格」との呼び声も高い作品。人間とは何か、どうしてうまく振舞えないのか、生きることの苦悩と葛藤を描き出しています。単純なようで複雑な人間の本質。
影島と永山という二人の人物に作者自身を重ね問答をしているかのよう。新聞掲載された小説ですが、どこまでも純文学の領域をでることはなく、良い意味で作家としての意気込みを見せてくれました。
ピースファンはもちろん、作家又吉ファンとしても読んでおくべき作品です。
どの作品も個性的で他には見当たらない設定ばかり。心のなかで何度も反芻するようなジーンと響いてくる小説です。是非手に取ってみてくださいね。