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耽美な少女たちの物語 

 文学界で耽美な世界に似合うのは「少女」とされ、多くの作家が少女を描いてきました。穢れを知らない存在として、現実の不確かさや暗さを補うために、より一層少女のみずみずしい感性を引き立たせるためにモチーフとされてきたようです。
 決してエロティズムに走らず、さなぎが蝶に羽化する瞬間のような神秘性を感じることができるからでしょうか。少女はとても耽美的なのです。
 今回はそんな神秘的で耽美な世界にひたれる本を紹介します。オシャレな世界観なので、女性に楽しんでもらいたい作品です。

 

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ジョン・M. マグレガー (著) (作品社)
 人との付き合い方が苦手なアスペルガー症をもっていたヘンリー・ターガー。半世紀にもわたり、一人黙々と描き続けた作品が彼の死の直前に発見され、アウトサイダーアートの代表的な作家として評価されるようになったそうです。
 アウトサイダーアートとは画集と小説、作者の経歴によって構成された本で、ヴィヴィアンガールズという少女達が主人公の「非現実の国で」は19才から81才まで書き続けられた1万5千ページにもわたる作品。ファンタジックなイラストとは相反するグロテスクな描写もあり、世界と闘争、絶望と希望が描かれています。シュールだけど美しい。理解しようとせず、感じるがままに受け止めてみてください。

 

ミネハハ

ミネハハ

 フランク・ヴェデキント (著) (リトルモア)
 映画「エコール」の原作本。ベルギー・フランス合作映画で、アニエス・ベーが衣装を提供したと女性ファッション誌でも話題になりました。
 かつて少女だった老婆が残したみずみずしい少女時代の記録の回想記。
 世間と隔離され、美しい森の中で毎日ダンスと音楽を学びながら暮らす少女たち。施設に入ってくる新しい少女は裸で棺に入ったまま運び込まれ、年長の少女は誰にも何も告げずに外の世界へと出ていきます。植物と水と光に満ち、幸福感に溢れた無垢な少女時代を、儚くも美しく描いた不穏な世界。美しい描写に頭がクラクラしてきそうな本です。

 

スワン―アンナ・パブロワのゆめ

スワン―アンナ・パブロワのゆめ

 ローレル スナイダー (著) (BL出版)
 極寒のロシア、サンクトペテルブルグで生まれ、貧しい家庭で育ったアンナ。ある晩、母親とはじめてバレエを観たことをきっかけに、バレリーナになると決意します。努力の末、世界屈指のバレリーナへと成長します。
 世界のプリマドンナとの名声を得たあとも、富裕階級のための芸術だったバレエを一般向けに公開するように、バレエが盛んでない地域の人々へ解放するために世界巡演に出かけ、積極的にバレエを広める活動もこなしてきたアンナの生涯を描いた絵本。イラストも美しく、夢と希望を与えてくれる作品です。

 

 自分が少女だったころは、とても長い時間と感じ早く大人になりたかったものですが、振り返ってみるとそのときしかない美しさがあるんだなと一時一時をより大切にしたくなるような作品です。キラキラふわふわした世界観が好きな方は是非手にとってみてください。

 

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