医療ミステリーのブームからどんどん医療小説に人気が集まった昨今。「チームバチスタ」や「神様のカルテ」などのヒューマンドラマから悪徳病院、モンスター患者、高齢化問題、医師の長時間勤務など現実に問題となっている医療環境をテーマにした作品が次々に発売されています。
普通のミステリーに飽きてしまった方、医療関係に興味のある方に読んでほしい小説を紹介いたします。お医者さんが主人公で、避けては通れない病の苦しみ。命の尊さをテーマにした作品です。お気に入りの作家さんを見つけてくださいね。
ひとつむぎの手
知念 実希人 (著) (新潮社)
2019年本屋大賞ノミネート作品。大学病院が舞台のヒューマン作品です。
一流の心臓外科医を目指し、懸命に医療に向き合う医師9年目の祐介を主人公に、研修医三人の入局に奮闘する日々を送っている。医師としてのポストを獲得するには、医療現場の過酷さや院内の派閥争いなど、技術や知識だけでは務まらないという医師の葛藤も描かれており、現役の医師が執筆した作品だけにリアリティがあります。現代版「白い巨塔」との呼び声もありますが、読後感はとてもさわやかです。
泣くな研修医
中山 祐次郎 (著) (幻冬舎)
地元の医学部を卒業し、都内総合病院の外科で研修中の雨野。何もできず、何もできないという無力感と、先輩医師に叱られながらも激務に耐えています。
いろんな患者さんに対応する毎日。生活保護で認知症の老人、同じ年で末期がんの青年、交通事故で瀕死の5歳の少年。命を助けるために学んできたのに、現場に立ったら全然役に立たないという悔しさ。そして、人の命を助けることができる達成感。
現役外科医の著者による過酷な医療現場と研修医の葛藤と成長を描いた感動作です。
最後の医者は桜を見上げて君を想う
二宮敦人 (著) (TOブックス)
同じ医学部を卒業した三人の医師はそれぞれ生死観が異なります。残りの時間を大切に生きることをすすめる桐子、絶対諦めない福原、どっちつかず悩み続ける音山。それぞれの医師がぶつかりあいながらも、患者さんの死に向き合っていく姿に、自分の姿を重ねて深く考えさせられる作品。本読み書店員が選ぶ感動小説1位を受賞し、映画化も企画されている作品です。
いつもお世話になっているお医者さん。にこやかな笑顔を見せてくれても、その裏では激しい心の葛藤や激務の疲れにムチを打って頑張っているのかもしれません。きちんと感謝をして労ってあげてくださいね。