絵本は子どものためだけにあるものではありません。研ぎ澄まされた感性を持った大人だからこそ心に響いてくるものがたりがあります。美しいイラストを美しい文章とともに隅々まで味わいつくせるのは大人になった今だからこそ。絵画を鑑賞するようにゆっくり美しさを味わい、読み進めてください。
森の絵本 (講談社の創作絵本)
長田 弘 (著) (講談社)
シンプルで洗練された詩をつくる長田弘さんと大胆なタッチが魅力的な荒井良二さんがタッグを組んだ大人のための絵本。たいせつなものを探しに森のなかへでかけます。そこにあるのは一面に広がる風景。風を感じ、木々の揺らぎを感じ、そこから生命の息吹を感じることができます。まるで森林浴をしているようにリフレッシュできる絵本。木漏れ日を感じ、木々のせせらぎに耳を澄ませてみてください。
ぼくは なにいろの ネコ?
ロジャー デュボアザン (著) (子ども文庫の会)
原色の世界が広がる美しい絵本。黄、赤、青、黒、白のネコたちが登場し、自分がいかに優れているかを自慢しはじめますが、お互いの色とまじりあったときこそ真の美しさにきます。
著者は有名な画家であり、児童書のイラストを多く手掛けています。コラージュや様々なタッチの絵画の技法を試行錯誤し、70歳にして改めて原色という原点に戻った作品。ニューヨーク科学アカデミーの児童書部門受賞作品です。
ダーナ (イメージの森)
たむら しげる (著) (ほるぷ出版)
人物のタッチはとてもシンプル。その分、色彩の濃淡に深い感動を覚える青色が冴えわたる大人のための絵本。荒廃した星で暮らしている老人とクマ。今は亡き荒野のなかで3時間かけてとった2匹のさかな。レストランに入るとコックさんのネジをまき、ムニエルにしてくれと頼みます。ただそれだけの話なのですが、切なさや悲しさ、失われたものへの郷愁を深く感じさせられる絵本。SFのような不思議な世界観です。
絵本には動きが感じられます。何度手にとった小説でも読むタイミングが違えば解釈も変わってきますが、シンプルだからこそ機敏に心の動きをとらえ、感受性を高めることができるのです。静かな時間を過ごしたいときに手にとってみてください。