雨続きの日や、なんとなく気持ちが沈むとき、色鮮やかな絵本を開くだけで空気が一気に変わると感じることがある。この記事では、実際に「ページをめくるだけで元気が湧いてきた」と感じたカラフルな絵本を、Amazonで手に入る現行版から10冊だけ選んで紹介する。ビビッドな色、やわらかな色、海外と日本の色づかいの違いも味わいながら、親子で色の世界にひたってほしい。
カラフルな世界を楽しむ絵本おすすめ10選
1. はたけのにゃーこ(童心社のおはなしえほん)
のらねこの子ども・にゃーこが、お気に入りの畑を自由に駆けまわる一日の物語だ。土の茶色、野菜の緑や赤、空の青が、少しレトロでやわらかなトーンで描かれていて、「畑の空気そのもの」を感じるような色づかいになっている。2019年初版の比較的新しい絵本で、畑の光や風まで伝わってくるようなページが続く。
誰かに飼われているわけではないけれど、畑のおじさんや近所の人たちが、にゃーこをあたたかい視線で見守っているのが印象的だ。小さな子にとっては、のびのびと走り回るねこの姿がうれしいし、大人が読むと「見守るまなざし」のやさしさに少し胸が熱くなる。ストーリーは素朴で、絵は丁寧で、それでいて色はしっかり明るい。派手さよりも、じんわり元気になるタイプのカラフルさがほしいときに合う一冊だ。
幼稚園〜小学校低学年くらいまで幅広く読めるが、特に外遊びが大好きな子、動物が好きな子にはぴったりだと思う。読み聞かせをしていると、にゃーこの姿を追って指差しが止まらなくなる。日々の暮らしの中にある“小さな幸せ”を、豊かな色でそっと照らしてくれる絵本だ。
2. しましまぐるぐる(いっしょにあそぼ)
赤ちゃん向け絵本の定番中の定番ともいえる一冊だ。はっきりした赤・黄・青・黒・白のコントラストと、「しましま」「ぐるぐる」というシンプルな模様だけで、驚くほど長い時間子どもの視線を引きつける。出版から時間がたっても、0歳〜1歳向けコーナーには必ずと言っていいほど並んでいるロングセラーだ。
まだ物語を追えない月齢でも、目で追いやすい太い線とビビッドな色は、ほんの数秒で赤ちゃんの「じっと見るモード」を引き出す。ページをめくるたびに「ぐるぐるだ」「しましま出てきたね」と声をかけていくと、少しずつ表情が変わったり、手を伸ばして触ろうとしたりする。文字量も少なく、寝かしつけ前の“最後の一冊”にも使いやすい。
とにかくシンプルなので、大人から見ると「これでこんなに食いつくのか」と驚かされる。派手な仕掛けはないが、色と形だけでここまで世界が広がるのかと、絵本そのものの可能性を改めて感じさせてくれる。
3. すこやかあかちゃんえほん (4) カラフル
タイトルどおり「カラフル」というテーマに絞った赤ちゃん絵本だ。丸や三角などシンプルな形と、赤・青・黄色といった基本色が組み合わさり、リズミカルにページが進んでいくシリーズの一冊になっている。0歳からを対象とした構成で、余白が大きく、色そのものが主役として目に飛び込んでくるデザインだ。
「これはあか」「これはきいろ」と色の名前を伝えるのはもちろんだが、同時に「まるがころころ」「どーん」といった音のイメージと一緒に読んでいくと、視覚と聴覚の両方から世界が立ち上がる。色が動いているように感じられるページ構成なので、指差しやページに触れるしぐさも自然に増えていく。
色の概念を教えるための教材、というより、「色って気持ちいい」と身体で感じてもらうための絵本という印象だ。機嫌がぐずっとしているとき、テレビの代わりにこの本を開いて一緒に声を出して読むと、空気がふっと軽くなる。
4. いろいろいろのほん
フランスの絵本作家エルヴェ・テュレによる、インタラクティブな色の絵本だ。ページに描かれた丸を「ぽん」と指で押したり、こすったり、ゆらしたりすると、次のページで色や形が変化しているという仕掛けになっている。赤・青・黄色などの原色が、絵の具の質感そのままに紙面いっぱいに広がり、「色で遊ぶ」とはこういうことだと教えてくれる。
3歳くらいから小学校低学年まで、長く楽しめるタイプの一冊だと思う。大人が読んでも「つぎはどうなる?」とページを急いでめくりたくなるほど展開が軽快で、同じところを何度も読んでほしいとリクエストされることも多い。ことばはシンプルだが、谷川俊太郎の訳文がやわらかく、声に出すと自然にリズムが乗る。
色の混ざり方や、暗い色・明るい色の対比も体感的にわかるので、後から「絵の具でやってみようか」と遊びに発展させやすい。読み終わるころには、机の上が小さなアトリエのようになっているかもしれない。
5. はじめてのいろ―リズムでおぼえる!
こちらは、色をテーマにした「ことばえほん」シリーズの一冊だ。赤・青・黄・緑といった基本的な色が、リズミカルなフレーズとともに登場する。色と対象物(りんご、バナナなど)が結びつくように工夫されていて、日常の中で子どもが目にしている世界と自然につながるようになっている。
文章は短く、繰り返しのリズムが多いので、2〜3歳くらいになると子どもが自分からフレーズを口ずさむようになる。「あかい りんご」「きいろい バナナ」と、親子でかけ合いながら読むと、スキンシップの時間そのものが歌遊びのようになっていく。
カラーパレットとしては素直な配色だが、それぞれの色がくっきりと画面に立ち上がるように構成されているので、色の名前を覚える時期にはとても頼りになる。おもちゃを買い足すより、まずこうした一冊を手元に置いておくほうが、長く使えると感じるタイプの本だ。
6. でてこいでてこい(0.1.2.えほん)
黄色い背景に大きな穴のあいたページから、次々とものが「でてこいでてこい」と登場してくる赤ちゃん絵本だ。穴からちらっと見える色と形が、めくる前からワクワク感を高めてくれる。0・1・2歳向けシリーズの一冊で、厚紙仕様のため、多少乱暴に扱ってもへこたれない心強さがある。
「でてこいでてこい」と声をかけながらめくると、子どものほうからも小さな声で「でてこい」と返してくれることがある。意味のある会話というより、色と音のリズムを楽しむコミュニケーションに近い。ページに開いた丸い穴からのぞく赤や青がとにかく鮮やかで、短いお話の中に何度も小さな驚きが仕込まれている。
読み聞かせ会などでも使いやすい構成なので、1〜2歳クラスの集まりで一冊だけ選ぶなら、候補に入れておきたいタイプの本だ。穴をのぞき込むしぐさも可愛くて、読んでいる大人のほうが癒やされる。
7. まるのおうさま(かがくのとも絵本)
「まる」「さんかく」「しかく」といった形が主人公になり、それぞれの世界を作り出していく一冊だ。特に「まるのおうさま」の世界は、色彩がとても自由で、まるが重なり合ったり、にじんだりしながら、不思議な景色をつくっていく。もともとは月刊絵本として出ていた作品で、その後ハードカバー化されて息の長いロングセラーになっている。
色の組み合わせは少し大人っぽく、4〜5歳以上の子のほうが世界観を楽しみやすいかもしれない。とはいえ、小さな子でも、ころころと転がるまるの動きや、ページいっぱいに広がる色のグラデーションを見ているだけで引き込まれる。まるとさんかくが出会う場面は、形遊びの広がりを感じさせる象徴的なシーンだ。
「絵本の中の抽象画」を眺める感覚に近く、アート好きな大人にもおすすめできる。読み終えたあと、紙に丸や三角を描きたくなったり、自分だけの「かたちの王さま」を考えてみたくなったりする。色と形の関係に好奇心が芽生える一冊だ。
8. ボードブック はらぺこあおむし
もはや説明不要の世界的ベストセラーだが、「色鮮やか」という観点から見てもやはり外せない。あおむしの体の緑、食べ物の赤やオレンジ、背景の白との対比がとても印象的で、どのページを開いても強い色の記憶が残る。ボードブック版は厚紙で作られており、小さな子が自分でページをめくっても破れにくい仕様だ。
曜日感覚や数の概念を学べる絵本として知られているが、単純に「色と穴あきの面白さ」を楽しむだけでも十分価値がある。穴からのぞく色を見ながら、「きょうは何を食べたかな」と話していくと、絵本と現実のごはんがふんわりつながっていく。
0歳から楽しめる一方で、小学校に上がってからもう一度読むと、色の重なりやコラージュの美しさに気づいて、別の意味で感動する。長く家に置いておいて、年齢ごとの受け取り方の変化を見ていくのもおもしろい。
9. きいろいのは ちょうちょ
五味太郎の代表作の一つで、「きいろいのは ちょうちょ」「あおいのは なんだろう」といった問いかけとともに、色とものの名前が次々と登場する絵本だ。黄色・青・赤など、はっきりした色面がページいっぱいに広がり、そこにちょこんと描かれた生き物やものが、ユーモラスな表情でこちらを見ている。
問いかけに対して、子どもが自分なりの答えを口にする時間が楽しい。「きいろいのは?」と聞くと、「バナナ」「バス」など、絵本に描かれていない答えが返ってくることも多い。それも含めて、この本の魅力だと思う。親子の会話が自然に広がり、ページをめくるスピードも、その日の気分で変えられる。
色の名前を覚え始めた子にはもちろん、少し大きくなってからでも、「予想→答え」というシンプルなゲームとして楽しめる。五味太郎らしい、ちょっと皮肉の効いたおもしろさもあり、大人が読んでも飽きない。
10. ぞうのエルマー いろいろさがしえブック
パッチワーク模様のゾウ・エルマーが主役の、色をテーマにしたさがし絵絵本だ。赤・青・黄など、見開きごとに「テーマ色」が設定されていて、その色をまとったものたちの中から、エルマーや仲間たちを探していく構成になっている。色の名手デビッド・マッキーが、その持ち味を存分に発揮した一冊だ。
探し絵なので、3歳くらいから小学生まで幅広く楽しめる。簡単なページもあれば、大人でもちょっと本気を出さないと見つけられないほど情報量の多いページもあり、「もう一回」「まだやる」と言われがちな本だ。色のトーンはビビッドだが、どこかやさしさがあり、画面全体のバランスが絶妙なので、眺めているだけで満足感がある。
エルマーシリーズの物語絵本をすでに持っている家庭なら、「色」にぐっと焦点を当てた一冊として並べておくと、シリーズの見え方がまた変わる。雨の日にじっくり時間をかけて読みたいタイプのカラフル絵本だ。
おわりに:色の力を、日常のなかに
淡い色合いの静かな絵本も心に残るが、気持ちが少し沈んだときや、エネルギーを持て余しているときには、今回のようなカラフルな絵本がとても頼りになる。色には、気分を切り替えたり、身体をふっとゆるめたりする力があると実感する。
気になった一冊を、まずは一緒に眺めるところから始めてみてほしい。ページをめくるたびに、子どもの表情や言葉が変わっていく。その小さな変化こそが、色鮮やかな絵本がくれるいちばんの贈り物だと感じている。









