藤田嗣治とは
1920年、芸術が華ひらいたパリ。モンマルトンで活躍した外国人画家たち。そのうちの一人が藤田嗣治。おかっぱあたまと丸めがね、柄つきのシャツとオシャレでモダン、フーフー(お調子者)と呼ばれ、パリで愛された画家です。日本画のタッチを生かした裸婦像は「乳白色の肌」と呼ばれて多くの芸術愛好家を魅了してきました。
帰国後、戦争画を描いたことにより日本美術界から責任を押し付けられパリに帰化することになった藤田。長い間沈黙を守っていた藤田に関する資料が見つかり、藤田の絵画展も2018年に日本全国を周り、その個性的で現代イラストのような独特のタッチに魅了された方も多いことでしょう。
今回は、藤田嗣治について詳しく知りたいという方におすすめの本を紹介いたします。絵とともに藤田の人生についても触れてみてください。
藤田嗣治「異邦人」の生涯
近藤 史人(著) (講談社)
第34回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した藤田の人物像、時代背景、フランスと日本の評価の差など真実が描かれた作品。藤田自身が綴った文章からの引用、他の画家との戦争画の対比など分かりやすく説明してくれています。作品は時系列にそって掲載されており、日本近代美術史の暗く閉塞した部分まで詳細に描かれています。作品を見て、藤田をもっと知りたいと思った方の最初の一冊としておすすめの本です。
藤田嗣治がわかれば絵画がわかる
布施 英利(著) (NHK出版)
没後50年をきっかけに「鏡」「線」「色彩」という3つのキーワードから藤田の作品を掘り下げた一冊。波乱の人生を生き抜いた藤田だからこそ描けた、その場所、その時代、その瞬間のこと。肖像画や少女、猫、裸婦、戦争画、宗教画に至るまであらゆるジャンルを描いてきた藤田を詳しく知ることによって、他の作家の絵画を鑑賞するときにも視点が変わってくることでしょう。
藤田嗣治手しごとの家
林 洋子(著) (集英社)
パリ南郊にある「メゾン=アトリエ・フジタ」は藤田が建てた小さな家。絵画以外にも、身近な小物や食器、洋服までこだわりぬいて作った美しいものに囲まれた生活。藤田の美意識が隅々までつまった幸せが伝わってくる生活です。藤田の多才ぶりと芸の細かさがカラー写真で蘇ります。世界でたったひとつだけの美しいものに囲まれて暮らす小さな家は素朴ながらも藤田の奇抜さが溢れかえっています。
腕一本・巴里の横顔
藤田 嗣治(著) (講談社)
藤田自身が書いたエッセイ集。日本への郷愁や作品を作り上げていく情熱と努力、当時の画壇の様子などを知ることができます。ユーモアにあふれた文章で、自身を天才と呼びながらも努力を重ねてきた姿は、一人の人間としても憧れを抱いてしまいます。同時代を生きた天才画家たちとの触れ合いも芸術好きにはたまらない一冊です。
藤田の人生は、オダギリ・ジョーさん主演で映画化もされているそうです。絵画をみて、本を読んで、いつまでも絵のなかにこもった藤田の魂に触れてみてください。