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【トラが登場するおすすめ絵本10選】じゅうたんになりたかったトラなど読んでほしいまとめ

トラの絵本は「強い」「こわい」だけで終わらない。ずるさやさみしさ、やさしさまで映るから、読み聞かせのあとに子どもの言葉が少し変わる。ここでは『トラのじゅうたんになりたかったトラ』の面白さを軸に、トラが出てくる絵本を10冊に広げて、気分と年齢で選べるように並べる。

 

 

おすすめ10選

1. トラのじゅうたんになりたかったトラ(岩波書店/大型絵本)


 痩せこけた年寄りトラは、王さまが敷いているトラのじゅうたんになりたがります。

この絵本の気持ちよさは、トラが「悪いことをしてやろう」ではなく、「楽してぬくぬくしたい」という、子どもにも大人にも覚えのある欲で動くところにある。だから笑える。しかも、笑っているうちにだんだん苦しくなる。太っていくのは贅沢の証明であり、正体がバレるカウントダウンでもあるからだ。

読み聞かせで効くのは、テンポを上げすぎないことだ。トラの表情や沈黙の間が、次のドタバタを増幅させる。子どもは「ここでバレる」と分かっていても、やっぱりその瞬間を待てない。笑いが先に出て、あとから「どうするの」と心配が追いかけてくる。

そして最後に残るのは、強者の象徴みたいなトラが、じつは一番せつないという感触だ。憧れが、ひょうきんさに化けて、また憧れに戻っていく。トラが好きな子ほど刺さる。ちょっと生意気で、ちょっと甘えたい子にも、よく似合う一冊だ。

2. 金剛山のトラ 韓国の昔話(福音館書店/世界傑作絵本シリーズ)


 ユボギ少年は生まれたときから父親がいません。父は金剛山のトラに殺されたと知り、大きくなったら仇をとろうと武術の練習に励み、たくましく育ちます。

この本のトラは、かわいげのある「憧れのトラ」ではない。森の奥の理不尽そのものとして立っている。だからこそ、ユボギの決意が薄まらない。父を奪われた痛みを、時間をかけて体に入れていく物語になっている。

読み聞かせは、夜よりも明るい時間が向く。怖さがあるぶん、ページをめくる手が軽いと安心できる。絵の迫力は、子どもが「見たい」と思った瞬間に効いてくるので、無理に説明しないほうがいい。ここ、こわいね、と言える子は強い。

日本の昔話に慣れていると、決着のつき方の肌ざわりが違って感じるはずだ。その違いが面白い。善悪の整理より、怒りと祈りが混ざったまま進む。強い話を読みたい日、心がざわついている日、こういう昔話が助けになる。

3. ウェン王子とトラ(徳間書店/大型絵本)

 

 昔、猟師に子どものトラを殺されてしまった母トラ。憎しみと悲しみのあまり、人間の村を襲うようになります。

この絵本は、怖い話の顔をしているのに、芯にあるのは「憎しみの終わらせ方」だ。トラは敵として描かれるけれど、ただの怪物にはならない。母であること、痛みがあることが、ずっと絵の中に残っている。

王子ウェンは、自然と人間のあいだをつなぐ存在として育っていく。そこが泣ける。強さを身につけるのに、誰かを踏みつける必要がない。静かな優しさが、ちゃんと力として描かれる。読み終わったあと、部屋の空気が少し澄むタイプの絵本だ。

なお、この作品は「2005年ドイツ児童図書賞受賞」として紹介されることが多い。受賞の言葉が、内容と似合っているのが面白い。

4. おちゃのじかんにきたとら 改訂新版(童話館出版/絵本)

チャイムが鳴って、扉を開けたらトラが立っている。しかも礼儀正しい。ここで子どもは一度、安心してしまう。そして次のページで、安心がきれいに裏切られる。食べる、飲む、まだ食べる。家の中の「いつものもの」が消えていくのが、妙にリアルだ。

読み聞かせのコツは、トラの声を「こわい声」にしすぎないことだ。丁寧なお願いの口調のまま、量だけがとんでもなくなっていくのが面白い。子どもはそこで大笑いする。大人は「それ、全部なくなるぞ」と心の中で焦る。親子で違う場所がくすぐられる。

最後に残るのは、豊かさの話というより、家族の機転の話だ。なくなったなら、工夫すればいい。次の一手がある。そういう生活の強さが、さらっと置かれている。気持ちが明るくなるトラを読みたいなら、この一冊が強い。

5. とらのこ とらこ(小学館/絵本)

とらこは、親のまねをする。うまくいかない。でも、やめない。この「失敗が当たり前の時間」を、絵がぜんぶ肯定してくれる。危険がある世界の話なのに、読後は不思議と温かい。

いちばん刺さるのは、親トラのまなざしだ。怒鳴らない。急かさない。呼びかけるだけで、子どもの背中を押している。育児の理想論ではなく、体温のある距離感で描かれるから、読んでいて息が楽になる。

「できない」から「できる」へのジャンプではなく、「できない」まま進む感じがある。だから、できるようになった瞬間がちゃんと眩しい。がんばり屋の子にも、慎重な子にも似合う。親のほうが先にぐっとくる可能性も高い。

6. トラのバターのパンケーキ(評論社/絵本)

トラが怖いから服をよこせ、と迫ってくる。ババジくんは服を渡す。トラは増える。ここだけ聞くと最悪なのに、物語は妙に軽やかに転がっていく。子どもは「え、また?」と言いながらページをめくるのが止まらない。

この本は、声に出して読むとさらに良い。トラの台詞を少し早口にすると、欲の勢いが出る。逆にババジくんは淡々と。すると、怖さよりも可笑しさが前に出て、最後の展開が気持ちよく決まる。

ただ、背景にある「怖さ」は消えない。だからこそ、子どもの中で「こわいけど、知りたい」という感情が育つ。トラを入口にして、昔話の荒々しさに触れさせたいときに向く一冊だ。

7. まよなかのトラ(WORLDLIBRARY/絵本)

夜中に目が覚めたら、隣にトラが寝ている。現実なら叫ぶ。でもこの絵本の主人公は、叫ぶより先に「返さなきゃ」と考える。そこが優しいし、ちょっと可笑しい。悪夢をトラに見立てて、子どもの怖さを抱きしめてくれる話になっている。

寝る前に読むなら、部屋を暗くしすぎないほうがいい。半分明るいくらいで十分。トラが「怖いもの」から「扱えるもの」に変わっていく過程を、子どもが自分の体で追える。

夜が苦手な子、考えすぎて寝つけない子に向く。読み終わったあと、トラの寝息を真似して遊び出したら、その晩は勝ちだ。怖さを笑いに変える練習として、すごく効く}

8. だるまちゃんととらのこちゃん(福音館書店/こどものとも傑作集)

とらのこちゃんは、トラの町のペンキ屋さんの子だ。黄色と赤の土でペンキを作って、町じゅうに模様を描いていく。この「やってみたい」が連鎖する感じが、だるまちゃんシリーズの醍醐味で、読んでいるうちに部屋が少しカラフルに見えてくる。

トラの“強さ”ではなく、手先の器用さと遊びの天才さが出てくるのが良い。トラが出る絵本を探しているのに、読み終わると「友だちっていいな」に着地する。そこが長く愛される理由だ。

読み聞かせのあと、子どもが何か描きたがったら、ぜひ一緒にやるといい。紙でも床でもいい。絵本が行動に直結するタイプなので、思い出が増える。トラが、家の中の創作スイッチになる。

9. トラといっしょに(徳間書店/絵本)

美術館で見たトラの絵が、心の中で大きくなっていく。家に帰って描いたトラは、紙の中に閉じ込められない。想像が現実を押し広げていく話で、読んでいるうちに「怖い」より「かっこいい」が勝つ。

この本は、子どもの「好き」の本気を信じている。好きなものを描きたい、近くに置きたい、一緒にいたい。その気持ちを笑わない。だから、絵が好きな子には直撃する。読後、クレヨンを探し始めるかもしれない。

トラが出る絵本の中でも、ここまで「創作」に寄った一冊は貴重だ。動物園のトラとは違う、自分の中のトラ。子どもが自分の内側を言葉にしにくい時期に、こういう絵本がそっと肩代わりしてくれる。

10. トラック トラくん(新日本出版社/絵本)

トラくんは、のりものの世界を走る。どのページにもトラくんがいて、探し遊びみたいに読める。トラが好きで、しかも車も好き、という子にはこれ以上ない直球だ。

読み聞かせは、実況みたいにすると盛り上がる。「トラくん、いまどこ」「ここだ」と、親子で指さしが始まる。物語を聞くというより、同じ画面を一緒に冒険する感じになる。疲れた日の夜でも成立するのがありがたい。

トラが怖い子にも入りやすい。獣のトラではなく、キャラクターのトラだからだ。トラ入門としても優秀で、ここから『トラのじゅうたんになりたかったトラ』みたいな“トラのずるさ”へ移っていくと、読書の幅がきれいに広がる。

関連グッズ・サービス

トラのぬいぐるみ

絵本のトラは、読後に部屋のどこかに残る。小さなぬいぐるみが一匹いるだけで、子どもは「さっきのトラ」を現実に持ち込める。怖い話を読んだ夜ほど、抱っこできるトラが効く。

動物図鑑

物語のトラを好きになったら、次は本物のトラが気になる。図鑑を一冊置いておくと、「しま模様ってなんで」「どこに住むの」みたいな質問が自然に出る。絵本の余韻が、そのまま学びの入口になる。

外出先の読み聞かせ用に

紙の絵本が重い日もある。移動中は、Kindle Unlimitedで絵本を探しておくと助かることがある。耳で落ち着かせたいときは、作品によってはAudibleの音声も相性がいい。

まとめ

トラの絵本を10冊並べると、強さの形が一種類じゃないことが見えてくる。笑わせるトラ、怖がらせるトラ、寄り添うトラ、遊びに誘うトラ。子どもはその日の気分で、必要なトラを選んでいる。

  • 気分で選ぶなら:トラのじゅうたんになりたかったトラ
  • じっくり読みたいなら:ウェン王子とトラ
  • 怖さをやわらげたいなら:まよなかのトラ

読み終えたあと、子どもが一言でも何か言ったら、その言葉を拾ってやるだけでいい。トラは、案外、会話の扉になる。

FAQ

Q. 何歳くらいから楽しめるか

トラの「面白さ」なら幼児から入れるが、「怖さ」を含む話は子どもの気質で変わる。怖がりでも、笑えるトラ(『トラのじゅうたんになりたかったトラ』『トラック トラくん』)なら入りやすい。怖い話に挑戦するなら、昼間に読むのが無難だ。

Q. 読み聞かせでトラの声は作ったほうがいいか

作ってもいいが、やりすぎないほうが長持ちする。怖さを強調すると、子どもが途中で閉じることがある。丁寧な声、眠い声、急いでいる声など、感情の温度だけを変えると、物語が自然に立ち上がる。

Q. 「怖い」を言い出したらどうするか

止めるか、ページを戻すか、いったん閉じる。どれも正解だ。「怖い」と言えた時点で、子どもは自分の感情を扱えている。次に読むときは、安心できるトラを挟むといい。たとえば『だるまちゃんととらのこちゃん』を先に読んでから戻るだけで、印象が変わる。

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