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【小学生が夢中になる本】仲間とライバルの小説3選

小学生が夢中になって読める本を探すなら、冒険、スポーツ、会話のテンポがある物語から入るといい。仲間と力を合わせる楽しさ、ライバルに出会う緊張、自分とは違う相手と向き合う面白さが、自然に物語の中で伝わってくる。

今回は、ひとりで読み進めやすい冒険物語から、友情と競争の熱があるスポーツ小説、会話の掛け合いで読ませる青春小説まで、3冊に絞って紹介する。

 

小学生が物語に夢中になる本は、関係の変化が見える

小学生の読書で大事なのは、「ためになる本」より先に「先が気になってページをめくれる本」に出会うことだ。正しいことが書いてあるかどうかより、次の場面を知りたくなるか。主人公の失敗に少し笑えて、危ない場面で胸が縮まり、うまくいった瞬間にほっとできるか。その感覚があると、本は勉強ではなく、自分の時間になる。

仲間やライバルが出てくる小説は、その入口として強い。ひとりで何かを成し遂げるだけではなく、誰かと出会ったことで自分の力の出し方が変わる。助けられることもあるし、腹が立つこともある。相手がいるから、負けたくない気持ちも生まれる。

今回の3冊は、同じ「友だちの物語」ではない。『エルマーのぼうけん』は、知らない世界へ踏み出す勇気の本。『バッテリー』は、才能と才能がぶつかる緊張の本。『THE MANZAI 上』は、言葉を交わすうちに相手との距離が変わっていく本だ。

本を読むのがまだ得意ではない子には、まず冒険のわかりやすい面白さから入るといい。スポーツや勝負が好きな子なら、野球を通して人間関係の濃さに触れられる。学校の空気や会話のテンポが好きな子なら、漫才コンビという少し変わった友情の形がすっと入ってくるはずだ。

小学生が夢中になる仲間とライバルの小説3選

1.エルマーのぼうけん(福音館書店)

『エルマーのぼうけん』は、読書の入口に置きたい一冊だ。主人公のエルマーは、年老いたのらねこから、どうぶつ島に捕らえられているりゅうの子の話を聞く。そこでエルマーは、りゅうを助けるために船に乗り、知らない島へ向かう。物語の骨格はとてもまっすぐだ。困っている存在がいる。助けに行く。危ない場面が続く。それを知恵と道具で切り抜ける。

このわかりやすさが、小学生の読書にはとても効く。難しい心理描写を追わなくても、次に何が起こるのかが気になる。島には、こわい動物たちが次々に現れる。けれど、エルマーは力で戦うのではない。持ってきた品物を使い、相手の性格を見て、うまくやり過ごしていく。そこに、子どもが好きな「自分でも考えれば何とかなるかもしれない」という手触りがある。

仲間というテーマで見ると、この本の相手は同級生ではない。エルマーが助けに行くのは、まだ会ったことのないりゅうの子だ。つまり、友だちになってから助けるのではなく、話を聞いただけで動き出す。ここがいい。目の前にいない相手のために、自分の小さな勇気を使う。小学生にとって、それはかなり大きな想像力だ。

読みながら感じるのは、冒険の空気が乾いていないことだ。かばんに詰めた道具、船に乗る緊張、島に入ったときのざわざわした感じ。ひとつひとつの場面が、子どもの頭の中で絵になりやすい。暗い森の湿った匂いや、動物たちの息づかいまで、想像の中で立ち上がってくる。

本を読むことにまだ慣れていない子には、こういう「場面が見える本」が強い。文字を追っているだけなのに、頭の中では地図が広がる。次は何を使うのか、エルマーはどう逃げるのか、と自然に先を読みたくなる。読書が苦手な子でも、章ごとに小さな山があるので止まりにくい。

また、主人公が完璧なヒーローではないところもいい。エルマーは強い剣を持っているわけではないし、大人のように何でも知っているわけでもない。けれど、観察して、考えて、少しずつ前に進む。その姿は、「自分には特別な力がない」と感じている子にも近い。

この本が刺さるのは、長い本に挑戦する前の子、物語の面白さを体でつかみたい子、冒険や動物が好きな子だ。宿題の読書ではなく、夜に少しだけ続きを読みたい。朝、昨日の場面を思い出して続きを開きたい。そんな読み方に向いている。

仲間やライバルの物語というと、すぐに学校やスポーツを思い浮かべるかもしれない。でも、その前に「誰かを助けに行く」「知らない相手のために動く」という物語の原型に触れておくと、その後に読む友情小説やスポーツ小説の受け取り方も変わる。『エルマーのぼうけん』は、小学生が物語の扉を開けるための、明るくて強い一冊だ。

2.バッテリー (角川つばさ文庫)

『バッテリー』は、仲間とライバルの関係をまっすぐ描く児童・青春小説だ。主人公の原田巧は、天才的な投球の才能を持つ少年。自分の力を信じていて、野球に対して妥協しない。周囲に合わせることより、自分の球をどう投げるかを優先する。その鋭さが、物語の最初から空気を少し硬くしている。

巧が出会うのが、永倉豪だ。豪はキャッチャーとして巧の球を受ける。ここで描かれるのは、ただの友情ではない。仲良しだから一緒にいるのではなく、相手の力を認めざるを得ないから近づいていく。気が合う、というより、目をそらせない。小学生高学年から中学生にかけての読者には、この距離感がかなり刺さるはずだ。

スポーツ小説として読むと、もちろん野球の緊張がある。ボールがミットに収まる音、投げる前の静けさ、速球を受けたときの衝撃。けれど、この本の本当の強さは、勝ち負けだけではない。才能がある子が、まわりとどうぶつかるか。自信を持つことと、ひとりよがりになることの境目はどこにあるのか。その痛い部分を、野球の場面に重ねて描いている。

巧は、わかりやすく「いい子」ではない。読んでいて、少し腹が立つこともある。言い方がきつい。人の気持ちを置いていく。けれど、そこに嘘がない。自分の中に絶対に譲れないものを持っている少年が、まだうまく人とつながれない。その不器用さが、物語に熱を与えている。

豪の存在は、その巧をただ受け止めるだけではない。豪にも豪の考えがあり、体の強さだけでなく、人との距離を測る感覚がある。バッテリーとは、投手と捕手の組み合わせだが、この物語では「相手を必要とすること」の名前にもなっている。自分ひとりで完璧だと思っていた少年が、誰かの手を必要とする。その瞬間に、仲間という言葉の重みが変わる。

この本は、スポーツをしている子には入りやすい。試合に出たい、うまくなりたい、負けたくない。そういう気持ちを持っている子なら、巧の強さにも、危うさにも反応するだろう。一方で、スポーツをしていない子にも届く。クラスの中で自分の立ち位置がわからないとき、周囲に合わせるのが苦手なとき、自分だけが少し浮いているように感じるときに、巧の孤独は不思議と近くなる。

親や大人が読むと、巧の扱いに迷う場面もあるかもしれない。伸ばすべき才能なのか、直すべきわがままなのか。その判断が簡単ではないから、この物語は大人にも読まれてきた。子どもにとっては、巧の鋭さに引っぱられながら読む本であり、大人にとっては、子どもの中にある激しさを見直す本でもある。

小学生にすすめるなら、高学年以降が合う。文章の読みやすさだけでなく、人間関係の苦さも味わえる年齢のほうが深く届く。単純な友情物語では物足りなくなってきた子、ライバルという存在に憧れがある子、勝負の中で人が変わっていく話を読みたい子に向いている。

『エルマーのぼうけん』が「外の世界へ出る物語」なら、『バッテリー』は「他人という壁にぶつかる物語」だ。相手がいるから、自分の力が見える。相手がいるから、自分の弱さも見える。仲間とライバルは、きれいに分けられるものではない。その両方が混ざった熱を、小学生にも届く形で読ませてくれる一冊だ。

3.THE MANZAI 上(ポプラ文庫ピュアフル)

『THE MANZAI 上』は、友情を「会話」から描く一冊だ。主人公は、転校生の瀬田歩。できれば目立たず、ふつうに学校へ行き、ふつうに過ごしたいと思っている。そこへ、同じクラスの秋本貴史が現れる。秋本は、歩を漫才の相方にしたいと言い出す。恋愛の告白のような呼び出しから始まるのに、目的は漫才コンビ。最初のズレだけで、もう物語が動き出している。

この本の面白さは、スポーツのような勝負ではなく、言葉のテンポにある。相手の言葉にどう返すか。黙って流すのか、つっこむのか、逃げるのか。歩と秋本のやりとりは、ただ笑わせるためだけにあるのではない。会話を重ねるうちに、相手の押しの強さや、こちらの戸惑いが少しずつ見えてくる。

小学生や中学生にとって、友だち関係はいつもきれいなものではない。話しかけられてうれしいときもあれば、放っておいてほしいときもある。距離を詰めてくる相手に、どう反応していいかわからないこともある。『THE MANZAI 上』は、その微妙な感じを重くしすぎずに読ませる。

秋本は、歩にとって最初から心地よい相手ではない。むしろ、かなり面倒くさい。声が大きく、体も大きく、思い込みも強い。歩が望んでいた静かな学校生活に、突然、風の強い窓が開いたように入り込んでくる。けれど、そのうるささの中に、相手を見つけた喜びがある。秋本は、歩の中に何かを見ている。

一方の歩は、流されるだけの人物ではない。平凡でいたいという願いの奥に、自分を守りたい気持ちがある。転校生としての緊張、学校の空気になじもうとする疲れ、目立ちたくないのに見つかってしまう居心地の悪さ。笑いのある物語なのに、そこには十代前半の肌ざわりがある。

この本は、読書に少し苦手意識がある子にも向いている。会話が多く、場面の切り替わりも軽やかで、ページの進みがいい。重い説明に沈む前に、誰かがしゃべる。言葉が行ったり来たりする。そのリズムが、読者を引っ張ってくれる。

『バッテリー』と同じ著者の作品だが、こちらは野球の緊張とは違う角度から人間関係を描く。才能のぶつかり合いではなく、言葉の掛け合い。勝つか負けるかではなく、組むか組まないか。相手と一緒に立つことを、自分が受け入れられるかどうか。そこに、この本ならではの青春がある。

この本が刺さるのは、学校の人間関係に少し疲れている子、友だちとの距離感に迷っている子、笑える話から入りたい子だ。誰かにぐいぐい来られるのが苦手な子にも届く。自分のペースを乱されることは、しんどい。でも、ときどきその乱れが、自分ひとりでは開かなかった場所を開けてしまう。

漫才という題材は、ただの笑いではない。相方がいなければ成立しない。ひとりで完結できない。だからこそ、この作品は「仲間」の話として読むと深い。相手の言葉を受け、返し、また受ける。その往復の中で、少しずつ関係ができていく。大げさな友情宣言がなくても、人は一緒に何かを始められる。そのことを、軽やかな会話の中で感じさせてくれる一冊だ。

読む順と選び方

3冊の中で、最初に読みやすいのは『エルマーのぼうけん』だ。冒険の目的がはっきりしていて、場面も追いやすい。本を読む習慣をこれから作りたい子、長い文章にまだ少し身構える子には、まずこの一冊がいい。物語を読む楽しさを、頭ではなく体でつかめる。

スポーツや勝負が好きな子には、『バッテリー』から入るのもいい。野球の場面に引っ張られながら、才能、努力、仲間、ライバルの関係に触れられる。ただし、気持ちのぶつかり合いも濃いので、小学校高学年から中学生にかけてのほうが受け取りやすい。

会話のテンポで読みたい子、学校の人間関係が出てくる話が好きな子には、『THE MANZAI 上』が合う。笑いながら読めるが、ただ軽いだけではない。友だちになる前のぎこちなさや、相手に巻き込まれる戸惑いがある。読後には、誰かと話すことの面白さが少し違って見える。

読み進める順番としては、冒険の楽しさを味わう『エルマーのぼうけん』、勝負と関係の熱に入る『バッテリー』、会話と友情の揺れを楽しむ『THE MANZAI 上』の流れが自然だ。小学生の読書では、難しい本へ急ぐより、「読み切れた」という感覚を積むことが大事になる。読み切った本が一冊あると、次の本を開く手が軽くなる。

まとめ

小学生が夢中になる本には、はっきりした入口がある。冒険なら、次の危機を知りたくなる。スポーツなら、勝負の音が聞こえる。会話の物語なら、次の一言を待ちたくなる。今回紹介した3冊は、それぞれ違う方向から、仲間やライバルの大切さに触れられる本だ。

『エルマーのぼうけん』は、読書の入口として心強い。『バッテリー』は、仲間とライバルが同時に立ち上がる熱い物語として読める。『THE MANZAI 上』は、会話から関係が生まれる面白さを教えてくれる。

  • 本を読む習慣をつけたい子には、『エルマーのぼうけん』
  • スポーツや勝負が好きな子には、『バッテリー』
  • 会話のテンポや学校の空気を楽しみたい子には、『THE MANZAI 上』

次に進むなら、同じ著者のシリーズを読み続けるのもいいし、スポーツ小説、冒険小説、学校を舞台にした青春小説へ広げてもいい。大事なのは、子どもの今の気分に合う一冊を選ぶことだ。夢中で読める本は、読書が好きになる前に、まず「続きを読みたい」という小さな火をつけてくれる。

FAQ

小学生には何年生くらいからおすすめできる?

『エルマーのぼうけん』は、小学校中学年ごろから読みやすい。ひとり読みがまだ不安な場合は、読み聞かせや親子読みにしても楽しめる。『バッテリー』と『THE MANZAI 上』は、人間関係の揺れや会話の面白さがわかる小学校高学年以降に向いている。中学生が読んでも十分に面白い。

男の子向けの本として選んでもいい?

もちろん選んでいい。ただし、男の子だけに限定する必要はない。冒険、野球、漫才という題材は入り口としてわかりやすいが、描かれているのは、誰かと出会って自分が変わる瞬間だ。勝ち負けが好きな子、友だち関係に興味がある子、テンポのいい会話が好きな子なら、性別に関係なく楽しめる。

読書が苦手な子にはどれから渡すといい?

まずは『エルマーのぼうけん』が渡しやすい。目的がはっきりしていて、場面ごとに小さな山があるため、続きを読みたい気持ちが生まれやすい。会話の多さで読みやすい本を選ぶなら『THE MANZAI 上』もいい。『バッテリー』は物語に熱がある分、人間関係の濃さもあるので、少し読書に慣れてからのほうが入りやすい。

3冊読んだ後は、どんな本に進むといい?

冒険が好きなら、仲間と旅をする児童文学へ進むといい。スポーツの熱に惹かれたなら、野球に限らず、駅伝、サッカー、剣道などの青春小説へ広げられる。会話や学校の空気が楽しかったなら、同じあさのあつこの作品や、クラスメイトとの関係を描いたYA作品が合う。読後に残った感情を手がかりにすると、次の一冊が選びやすくなる。

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