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【怪奇小説 おすすめ】思わずゾッとする本、怪奇色の強い文学作品おすすめ3選

怖いものや恐ろしいものには、どこか人を惹きつける魅力があります。
小説の世界でもホラー小説や怪奇小説は人気ジャンルの一つで、一大勢力をを築いていますよね。
今回はそんな怪奇色の強い小説の中から、文芸というよりは文学に寄ったセレクトで三作品ご紹介いたします。


『黒猫』

 

黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)

エドガー・アラン・ポー

ポーによる名作短編です。
短い話なのでネタバレなどを避ける意味でも粗筋は割愛しますが、個人的にはこの話を読んだ時に感じた気味の悪さは未だに忘れられないほど強烈なものです。
ポーにはおどろおどろしい怪奇色のある作品が多数ありますが、そのなかでも『黒猫』にはゾッとするようなおぞましさがあります。
一人称の独白で綴られるこの物語は、主人公の心情を克明に描写しつつ、その奥に潜む不気味で宿命的な何かを見事に浮かび上がらせています。
この物語は、単純にストーリを追うだけなら大して恐ろしい話ではないと片付けることも出来ると思います。しかし、主人公の眼を通して物語られることで、読者は作中の一連の出来事の間に忌まわしい関連性を見出すこととなり、異様さや不気味さを感じさせられることになります。
『黒猫』は短編なので、本作を読む場合には短編集を手に取ることとなると思います。ポーの小説には他にも『アッシャー家の崩壊』を始めとして怪奇的な雰囲気の漂う名作が多数あるので、併せて楽しんでいただければと思います。

 

『ねじの回転』

ねじの回転 (光文社古典新訳文庫)

ヘンリー・ジェイムズ

いわゆる「意識の流れ」といわれる潮流の先駆者ともいえる、ヘンリー・ジェイムズの小説です。
ある女性が家庭教師を務めることになった屋敷で体験した恐怖が描かれています。
心霊現象を扱った作品ではあるものの主軸になるのは人物の心理描写で、心理小説の傑作に数えられています。
本作で一番恐ろしいのは人間です。幽霊は不吉な影をちらつかせとてつもない邪悪を象徴してはいますが、直接的な害はなしません。
様々な解釈のある作品ですが、人間の心理を巧みにとらえたこの物語には邪悪さの持つ普遍的な恐怖が描かれているように思います。
また、何度か映画化もされている名作で、近々再映画化されるようなのでこの機会に一読されてはいかがでしょうか?


『歯車』

歯車―他二篇 (岩波文庫 緑 70-6)

芥川龍之介

芥川龍之介が晩年に書き、死後に発表された作品です。
この作品を芥川の最高傑作に推す声も多数ありますが、その内容は不気味で病的なヴィジョンに満ちています。
主人公である作家の行く先々に現れるレインコート始め、赤い色、飛行機、火事、歯車などといった不穏なヴィジョンには、自殺してしまった晩年の芥川龍之介の衰弱した精神状態が反映されているのでしょう。
芥川龍之介は作品によって実に多様な顔を見せる器用な作家ですが、陰鬱で危うい鋭敏さを持った晩年の作品たちからは他の時期の作品にはない異様さを感じます。
その中でも、怪奇的で悪夢のような恐ろしさを孕んだ本作は、芥川ファンの方でなくとも一度は読んでみる価値があるものだと思います。

 

さいごに

以上、怪奇色の強い文学作品を3つご紹介いたしました。
不気味なもの、怪奇的なもの、人間の心に恐怖を引き起こさせるものには、何か根源的な作用があるように思います。
それが作品の魅力につながっているのかもしれませんね。
そんな怪奇的な世界をぜひともお楽しみください。

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