生まれながら醜く生まれたがために抱える孤独、苦悩。文学における醜い男はとても繊細で、歪みを持たず、切実に人間の本質を映し出します。リアルではイケメンが好きというあなたも、心の美しさに触れてほしい3冊を紹介いたします。
「人間椅子」
江戸川 乱歩・作
鬼才と呼ばれた乱歩の代表作。ある日、有名作家である主人公の女性のもとに「醜い容姿の椅子職人は、大きな肘掛け椅子に入ることをおもいつき、実際にその椅子に入ったまま何か月もの日々を過ごします」という手紙が届く。はたしてこの男の目的は何か?奇想天外なストーリーと探偵小説の要素が入り交じり、人間の心理描写が細部まで描かれていて、時代を超えてもハラハラさせられます。
「ノートル=ダム・ド・パリ」
ユゴー・作
1482年のパリが舞台。醜い姿の鐘つき男カジモトとジプシーの踊り子エスメラルダ、司教のクロードを中心に中世の社会に翻弄される民衆の生活が描かれている。人間の宿命との向き合い方、欲望と欲望がぶつかり合う根源的な葛藤、宗教からの解放が描かれている傑作。岩波文庫で上下巻発売されています。映画やミュージカルとはラストシーンが異なります。
「フランケンシュタイン」
(光文社古典新訳文庫) メアリー シェリー・作
当時19歳の女性が書いた哀しくも美しい小説。産業革命の真っただ中、天才科学者フランケンシュタインが怪物を産み出すところから物語は始まる。醜さゆえの孤独に悩む人間性が描かれた本作は「生命の誕生」といった壮大なテーマに取り組んでいます。冒険怪奇小説、推理小説、法廷小説、教養小説、哲学小説、紀行小説と色んな側面を持っている作品。最新の翻訳である光文社古典新訳文庫版をおすすめします。
長い間読み続けられている古典作品からは、時代を超えても変わらない普遍性があるテーマを扱っています。コンプレックスといった単純なものではなく、そこにある葛藤や孤独が人を強くさせるものだと感じました。