現役医師が書いた医療小説を紹介いたします。死というものは恐れるものではなく、常に前向きにとらえたいと思っています。
人間の生死に携わる医師だからこそ描ける世界観、エンターテイメント性の高いものや純文学まで味わってみてください。
「チーム・バチスタの栄光」
新装版 チーム・バチスタの栄光 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊・作
映画やドラマ化され有名な作品です。医療ミステリーというジャンルですが、登場人物がみんな個性的で、専門的な医学用語が出てきますが、軽快な文章で、すらすらと読み進めていくことができます。臨場感あふれる手術のシーンもあり、映像化されたものよりもより緊張感を味わうことができると思います。
シリーズもので躊躇している方、ミステリーに興味がないという方にも是非おすすめしたい一冊です。
「ダイヤモンドダスト」
南木 佳士・作
第100回芥川賞を受賞した表題作のほか、難民医療に携わる医師の話など四つの短編集。著者は信州に住んでいる臨床医だそうで、描かれる木々や山の風景、ぴりっとひきしまるような冬の描写もその場にいるように感じられます。死生感がテーマですが、どの話も重くなりすぎず、読み進めていくうちに強く惹きつけられます。
生まれたからには必ず人は死ぬ。そのときに医師としてどう接すればいいのか、著者自身が経験されたであろう葛藤も伝わってきます。医師も一人の人間なんだなと感じさせられました。
「サイレント・ブレス」
南 杏子・作
終末期医療、在宅医療をテーマにした六つの短編集。延命治療が本当に幸せなのか答えは人それぞれ違うと思いますが、いざ自分がそういう立場になったとき、こんなにかっこよく最期を迎えられるのかと思いました。それぞれの患者の死生観によって葛藤しながらも望む最期を準備する医師。大学病院では診察に時間がかかりすぎとダメ医師扱いされていた主人公ですが、真摯に患者に向き合う姿は人間らしくもあり、医師としてこうあってほしいとおもう理想の姿です。
この作品がデビュー作とのことですが、もっともっと執筆していただきたい作者です。
さいごに
日頃、無意識に生きているからこそ、命の大切さを見失うこともあります。生きていくために、死について考えてみる機会があれば、より人生を楽しむことができると思います。