今回は本屋勤務の私がおすすめする、ベストセラービジネス書を紹介いたします。
ビジネスの成功戦略やコミュニケーションスキルが身につく名著、名作になります。
- 1.脱・社内奴隷 「伝説の先輩」が教える幸せになるための仕事のルール
- 2.キャリアノートで会社を辞めても一生困らない人になる 自分らしく働き続けるこれからの人生戦略
- 3.田原総一朗責任編集 2時間で人生が変わる! 嫌われることを恐れない突破力! 世間という牢獄から脱出する方法
- 4.この国を出よ
- 5.脳がよろこぶ仕事術
- 6.論理思考は万能ではない
- 7.ピンチに勝てる脳
- 8.佐藤可士和のクリエイティブシンキング
- 9.プラットフォーム戦略
- 10.5%の人 時代を変えていく、とっておきの人間力
- 11.2030年 メディアのかたち
- 12.自分は評価されていないと思ったら読む本
- 13.小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!
- 14.「ありがとう」と言われる商い
- 15.君たちに伝えたい3つのこと—仕事と人生について 科学者からのメッセージ
- 16.「あれこれ考えて動けない」をやめる9つの習慣
- 17.大前研一の新しい資本主義の論点
- 18.残念な人の思考法(日経プレミアシリーズ)
- 19.それでも企業不祥事が起こる理由
- 20.情報を見抜く思考法
- 21.日本の若者を世界に通用する人材に—サブプライム後のビジネス教育のゆくえ
- 22.私は変わった変わるように努力したのだ—福原義春の言葉 (「生きる言葉」シリーズ)
- 23.あたりまえだけどなかなかできない 42歳からのルール (アスカビジネス)
- 24.イライラしがちなあなたを変える本
- 25.男が40代でやっておくべきこと
- 26.企業価値向上論講義 社長の値打ち
- 27.KGビジネスブックス TEAMで安心を育てる ヒューマンエラー対策からリスクマネージメントへ
- 28.好きなことに、バカになる
- 29.海外経験ゼロ。それでもTOEIC900点 改訂版—新TOEICテスト対応
- 30.史上最強の投資家 バフェットの大不況を乗り越える知恵
- 31.「こんな職場じゃやってけない!」と思ったら読む本
- 32.凹まない人の秘密
- 33.自分らしいキャリアのつくり方
- 34.出世力--なぜあなたの「頑張り」が認められないのか
- 35.夏野流 脱ガラパゴスの思考法
- 36.企業メセナの理論と実践 (文化とまちづくり叢書)
- 37.JAL再生の嘘
- 38.日本人へ リーダー篇
- 39.「見せかけの勤勉」の正体
- 40.考えよ! ——なぜ日本人はリスクを冒さないのか?
- 41.リスクの中に自由あり—市民主役社会におけるリスクマネジメント
- 42.金融破綻と経営規律—金融コンプライアンスの挑戦
- 43.フィンランド流 社長も社員も6時に帰る仕事術
- 44.庄内の起業家—創造的挑戦の軌跡
- 45.日本人はなぜ国際人になれないのか
- 46.『ビジネス』の発想法
- 47.仕事に必要な言葉
- 48.田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる!中国人の金儲け、日本人の金儲け ここが大違い!
- 49.KGビジネスブックス 利益を生みだす人事改革 7つの法則 人事科学の新たなグローバルスタンダード
- 50.アイデアはどこからやってくる?
1.脱・社内奴隷 「伝説の先輩」が教える幸せになるための仕事のルール
脱・社内奴隷 「伝説の先輩」が教える幸せになるための仕事のルール
小林一郎, 栢原伸也
ユナイテッド・ブックス(阪急コミュニケーションズ)
本書では、答えが一つしかないような考え方を改めることから始まります。また、努力の仕方はルールによって異なることを明示します。面白い指摘として、「努力も惜しまないし、徹夜作業も厭わないので、頭と身体をすべて使って全力でぶつかっていける仕事を三日分だけでもいいから用意してほしい」といっても、大方は会社はそのような仕事は存在しないと著者は解釈します。つまり、本当に自身が全力で取り組めるほど好きな仕事は、意外にも企業には存在しないと言いきっていることです(p.28)。
また本書は短期的な目先の利益を微分型と捉え、これに比較して努力というものを積分的な能力に例え、多くの蓄積が成果を生むことに繋がると指摘しています。
さて、本書の題名にはドキッとさせられますが、結局のところ自身の行いを変化させることの重要性を説いています。つまり「どのように個人の主体性を取り戻すか」と読み替えてみると本書の内容がよく理解されるでしょう。
2.キャリアノートで会社を辞めても一生困らない人になる 自分らしく働き続けるこれからの人生戦略
野津 卓也
東洋経済新報社
長く同じ組織にいると、居心地が良くなり、そのぬるま湯に浸りきってしまう。本書は既に居心地が良くなった者ほど危機感を抱くべきであり、今後自身のキャリアに対して、キャリアリッチとキャリア貧乏に二極化すると警告しています。
そのキーファクターとなるのが、PIと呼ぶ自分らしさを表すパーソナルアイデンティティであり、著者はこのPIを向上させることを本書で表しています。他律的転機ではなく、如何に自律的転機をもたらすか、それと努めている会社との関係など、面白いです。
自身が主体的にキャリアを刻んでいくに当たり客観的に自身のキャリアを考えてみることを促す点では、本書はそのきっかけになるでしょう。
3.田原総一朗責任編集 2時間で人生が変わる! 嫌われることを恐れない突破力! 世間という牢獄から脱出する方法
田原総一朗責任編集 2時間で人生が変わる! 嫌われることを恐れない突破力! 世間という牢獄から脱出する方法 (2時間で人生が変わる!)
勝間和代, 堀江貴文
アスコム
田原氏、勝間氏、堀江氏の3人の対談形式の内容です。人間、好かれる人は嫌われる人でもあると思いますが、読者は、自身の人生を懸命に悔いなく生きていることそのものが、嫌われても恐れを抱かないのだと本書を読んで悟ることでしょう。
本書の中では、ライブドアのニッポン放送株の件で、ラジオもテレビも経営者が変わると番組の質に影響するような論調をしていたことの奇妙な論理や、テレビ局の電波の寡占状態など興味ある内容にも触れています。確かに電波の寡占が参入障壁でもあり、業界給与の格差などの不平等を招いているのは確かです。また,勝間氏の主張する機会の平等など面白いトピックもあります。公会計の複式簿記化・開示という案も面白いです。
4.この国を出よ
大前 研一, 柳井 正
小学館
柳井氏と大前氏の共著です。日本の閉塞感を打開する提言が散りばめられている内容です。
日本が絶望的であるにも関わらず、危機感すら持たない国民や政治に対して現状の何が問題であるのかを丁寧に説明しています。
柳井氏のドラッカー論や大前氏の日本再生のアイデア等、読者が期待する内容も取り上げられており、両氏の考え方を理解する上でも勉強になるでしょう
問題は、産業に携わる人の危機感に比べ、政府のだらしなさや何をしたいのか明確でない政策に対し呆れている背景す。英語の社内公用語を含め、そのうち企業の本社機能も本格的に海外に移ってしまうこともあるかも知れません。
これからのビジネスを進める上での背景を知る意味では、一読すべきかも知れません。
5.脳がよろこぶ仕事術
マデリン・ヴァンヘック, ケン・パラー, リサ・キャラハン, ブラッド・コラー
ベストセラーズ
全体的には、脳科学分野というよりも心理学における認知科学的要素が強い内容のように感じました。信頼感やアイデアの創造など、面白い知見は得られます。特に創造性において、他人の判断や意見を気にすることが制約になってしまうことなど、意外と気付かない点かも知れません。これを仕事に応用すると、逐一報告やチェックを必要とするような仕事においては、創造性は発揮し辛いということを意味するのでしょう。
しかし、ジャズを参考にそのような制約においても、制約の範囲内で自由度があるとイノベーションが発揮可能ということも記述されており、なかなか考えさせられる面白さを与えてくれます
本書で取り上げられている内容は、直接仕事術には結びつかなくても、理解していることで間接的に影響を与えることはできるでしょう。
6.論理思考は万能ではない
松丘 啓司
ファーストプレス
本書は副題に「価値観」を入れているように、客観的判断により論理思考を施したつもりであっても、そこには主観的判断は含まれていることを指摘しています。故に価値とは極めて主観的なものであると捉えます。これは日々考察される仮説検証においても同様であると著者は捉えます。コンサルとして使用してきたロジックの多くが本当に客観的かつ論理的であるのかを問うています。
そこで本書は価値観に関して考察されます。著者は、価値観には自分が本来有する内発的価値観と環境により自分の中に取り込まれた外発的価値観があるとします。外発的価値観は入社以降、内面化していきます。しかし、その人の軸がぶれない判断力は、内発的価値観に依拠するもので、その内発的価値観が何であるのかを見極めることの必要性を説きます。
意志決定における「価値観」を論じた専門書は多いですが、それを実践経験のある著者により表現できている点で本書の価値はあります。
7.ピンチに勝てる脳
茂木 健一郎
集英社
本書は、考えるためのヒントが分散されており、著者ならではの面白い観点に気付かされます。
たとえば、アリとキリギリスの話を、全体最適と部分最適の話に置き換えて説明するなど、その理解のしやすさについては抜群です。
特に著者が強調するのは、「解はひとつしかない」ということはないという点です。つまり、世の中は「遇有性」の中にあり、様々な要素がまじりあう中で容易に決められない中にあるということです。この「遇有性」に対応するために教養が必要と説いています。本書を構成している軸となるものは、この「遇有性」です。また、「遇有性」を味わうには、生活や精神性の安定も必要であり、現在の日本が、上げ足を取ったりするような、けなし文化なのは、内面にストレスを溜めていることと無関係ではないと著者は表現しています。
8.佐藤可士和のクリエイティブシンキング
佐藤可士和のクリエイティブシンキング (日経ビジネス人文庫)
佐藤 可士和
日本経済新聞出版社
佐藤可士和流の思考方法が簡潔に述べられています。著者が新たなデザインやビジネスに関して、もがいている様が本書に現れているようです。
一つは、どのようにして本質をつかむかという点です。その中で、悩み行き詰ったらとにかく書いて表すとのこと。つまり書いたものを改めてみることで、自分の思考を俯瞰で眺められるメタ認知と同様の論理を自身で編み出しています。
同様に、お客様目線とお茶の間目線という発想もメタ的な思考であり、如何に物事を俯瞰で捉え、そこから本質を見極め、その本質を象徴としてデザイン化ないしビジネス化するかという著者の思考の過程を本書を通して学ぶことができます。
9.プラットフォーム戦略
平野 敦士 カール, アンドレイ・ハギウ
東洋経済新報社
ビジネスを展開するに当たり、それを構成する場であるプラットフォームを意識していなければ、これからの企業の生き残りは難しいことが実例を示しながら構成されている本です。
著者は、既に商品としての価値よりもプラットフォームの一部としての価値が大切であるとの認識の上に立ちます。これはもはやグローバルな戦略として有効性を持ちます。
本書は随所に的確に図が挿入されており、「三角プリズム機能」など理解促進に役立っています。またなぜテレビが駄目になったのかという視点も、プラットフォーム戦略の観点から説明が可能です。面白い観点としては、最初にリスクをとって参入したものが勝利するという従来考えられていた法則が成り立たないということです。
10.5%の人 時代を変えていく、とっておきの人間力
清水克衛
サンマーク出版
人間としての軸がぶれず、信念を持ち、諦めない。大衆に迎合し流されて生きるより、あえて5%の中に存在する人になる。簡単に読めてしまう割には考えさせられる内容でした。
特に青木功の「逆に考えると!」という思考の紹介や、「うさぎとカメ」、確かに競争しようと言いだしたのはカメであり,勝者もカメです。カメ的な生き方とは、思い込みからの解放が必要で、これを自身に適応するのは難しい側面は確かにあります。本書はそれを「ただの思い込みに過ぎない」と促し、自ら行動するために肩を押してくれています。
最後は坂本龍馬やスティーブ・ジョブスの話でしめていますが、これから自身を取り戻し「前に進もう」と考える人には励みにある書でしょう。
11.2030年 メディアのかたち
坪田 知己
講談社
本書は、冒頭にて「情報の速さ」が重要ではなく、「情報を活かせる」ことこそ情報の本質であり重要であると強調します。これは正しいです。現在でも、情報の迅速性を重視し、経営等に活かしているとする企業はありますが、肝心の情報の活かし方、活かせるだけの情報の目利き者が育っていないところは多いです。
著者のメディア世界の将来をみる観点は、一対多、多対多、多対一という流れになっていると捉え、これからは多対一、つまり個人にあわせたメディアサービスに変化していくと考えています。
コンテンツ産業に興味を持っている人は、一読してみると良いのではないかと思う本です。
12.自分は評価されていないと思ったら読む本
小笹芳央
幻冬舎
題名のように思っている人は会社員だったら当たり前のように多いことでしょう。本書でもそのように分析されています。
本書では、基本的に周りを冷静に見てみる能力を持つことと、天動説的な自己の考え方を変化させることなど、自身の考え方と別の観点を見つめることで現状認識を改めることを勧めていると思われます。
また人が評価するからには公平さを担保することには無理があることもきちんと示されており、基本的に不利な面もあることも提示してくれます。
本書は、自身の評価に疑問を持つ人は一通り読んでみるとある程度の客観性を掴むことはできると思わます。ただ本書に諭されて評価されてないと認識する会社に居座るのも自身の可能性を自身で否定することになるかも知れず,人の評価はその人の人生を左右するだけにやはり難しいテーマであることには間違いないです。
13.小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!
山元 浩二
中経出版
著者は最初に就職した銀行で自身の努力や成績と評価者が評価する指針とのギャップを感じ、人事評価制度に疑問をもったことが、現在の人事評価に関するコンサルタントのきっかけになっているそうです。
人事評価制度はやる気のある社員の「やる気」を永続させるか低下させるかに直接作用します。またその影響は会社全体の「やる気」すらも形成してしまうため会社にとっては基幹的な重要性を持ちます。
ここでは経営のビジョンや賃金制度、人事評価制度、評価者の育成など、一連の人事評価に関するシステムの構築を簡潔に説明しています。中小企業に標準が向いているため、何を評価し、何を重要視するかといったことが述べられており、理解し易い体系化が本書で展開されています。
14.「ありがとう」と言われる商い
小阪 裕司
商業界
地方の小さな商店や企業においては驚異の年商を叩き出しているところもあります。そのような企業が何故登場したのか、本書はそのエピソードを紹介し商いにおけるワクワク感の醸成が語られています。
基本的にはその商店が生き生きと活動できる「場」をどのように構築し,どのように育んでいくかというのが本書の本質でしょう。それを表現した言葉が「ワクワク感」なのでしょう。
それにはまずは自己分析、お客さんとの関わり、コミュニティの形成、顧客との継続的な関係など、やさしい言葉を用いて述べられています。
実際にワクワク系商人の体験とその内容なども事例として掲載してあり、様々な商いの形態に著者の考えが適応できていることを示しているのでしょう
考え方や思いを変えるだけでも商いそのものが変化することが本書で読み取れます。
15.君たちに伝えたい3つのこと—仕事と人生について 科学者からのメッセージ
君たちに伝えたい3つのこと―仕事と人生について 科学者からのメッセージ
中山 敬一
ダイヤモンド社
著者が言う3つのこととは、人生の目的と戦略の重要性、自身のために生きること、ルーチンワークとクリエイティブに関することです。
考え方は非常にシンプルであり、これら3つのことは人生の選択を行うときや新たにチャレンジしようと思うとき等、人生のイベントの至るところで読み返すと良い刺激になるでしょう。
また後半は研究者としての著者の考え方が率直に展開されており、女性の働き方など現在の社会を見据えた上で少々きついことでも言いきっています。
内容全ては当たり前のことですがそれを実行できない人が多い。自分の人生をドライに評価できるメタ認知における分身を持ち、常に自分を問う必要があるでしょう。
16.「あれこれ考えて動けない」をやめる9つの習慣
「あれこれ考えて動けない」をやめる9つの習慣 (だいわ文庫)
和田 秀樹
大和書房
人間に悩みは尽きません。でも悩んでいるときにどのように行動するかは実はその人の人生をも左右する重要な問題だと思います。
本書はそのようなときに「行動」することを促します。9つの習慣とは、とにかく動く、できることだけやる、他人に頼る、計画しない、休む、失敗してみる、感情に従う、真似する、法則を見つける、の9つです。
ある種、自分勝手な部分もありますが、基本的には自分の実力をしり納得するには自分に正直に生きることが必要なことを悟らせる内容であると感じます。
無理に苦手なことをするのではなく、自分の好きなことを思いっきり伸ばす方が人生としても楽しいし上手くいく(納得いく)ことが多いのではないでしょうか。
17.大前研一の新しい資本主義の論点
大前 研一
ダイヤモンド社
ハーバード・ビジネス・レビューの論文の中から今日の資本主義の一面を評している内容が編集されている書です。
多くの論者による見解が網羅されている関係で、文章が短く、図表が多いものもあります。
政府と企業の関係、ステークホルダー重視の見直し、ネットのプライバシー、GEの戦略、人材のグローバル化、ICT、など今日の社会を理解する意味でも、興味をそそるトピックが掲載されており、考えさせる内容です。
現状を理解するには大変示唆に富んだ内容です。各論の分量にやや物足りなさを感じますが、その分トピックの内容を新たに探求してみたい思いを抱かせます。
18.残念な人の思考法(日経プレミアシリーズ)
山崎将志
日本経済新聞出版社
能力が高く、一生懸命働いていても残念な人がいます。本著は、単に機会や運に見放された残念な人を対象とするものではなく、機会を得る本質を自ら断念していることに気がつかないまま精を出す、本当に残念な人を対象としています。
例えば論理思考があっても、前提となる仮定が間違っていること、便利になると残念な人が増えること、見える化と仕組みなど、なかなか面白い内容が掲載されています。なかでも、残念なパン屋さんの例などは、日本のそこかしこにある実例ではないでしょうか。
仕事の目的、方法などを「塗り絵」として分かりやすく記述してありますが、随所にコンサルタント的な基礎を簡易の内容に置き換えて提示してあり、ビジネスに関心が無くても気楽に読み進められるでしょう。
19.それでも企業不祥事が起こる理由
國廣 正
日本経済新聞出版社
著者が企業不祥事の本質にせまるキーワードとする、社会の要請に応えるフェアプレー、「あってはならない」呪縛からの解放、危機への姿勢、の3つに関して不祥事の具体例を交え、構成している本です。
今や、コンプライアンスと言えば、弁護士や法学者の名前が前面に出てきますが、決して最初はそうではなかったことが本書の中で感じられます。著者は最初にコンプライアンスが単に「法令遵守」ではないことを、述べます。
本書の指摘は適切であり、p.180にあるように、危険を意識しないシステムを構築するあまり、「リスクに遭遇しても危険を察知する能力がない」それが「かえって重大な事故につながってしまう」危機に気付いているものは少ないのではないかと思います。
20.情報を見抜く思考法
伊藤 惇夫
ビジネス社
政治に関する周辺情報や、情報そのものの価値など、政党の事務局を歴任された著者の経験から導き出された内容が記述されています。ただし、本書を読んで「情報を見抜く」能力が得られることは少ないでしょう。
情のかけ方、話を聞く力、小沢氏と選挙、「事実は一つ、真実は無数」、「ウラ」の情報、台風の目、ビジョンなどなど、興味を引く内容もところどころに散りばめられており、納得感を得られます。
私は政界には疎いですが、これを経営に変えて捉えてみても、面白い知見を得ることができます。少しの時間で読み終えることができる分量なので、待ち時間などにはもってこいの書籍です。
21.日本の若者を世界に通用する人材に—サブプライム後のビジネス教育のゆくえ
日本の若者を世界に通用する人材に―サブプライム後のビジネス教育のゆくえ
久原 正治
学文社
昨今はグローバル人材の育成と言われて久しいですが、実際にグローバル人材を育てる難しさを本書で知ることができます。英語のみで講義されるプログラムは、日本人学生に敬遠され、その構成人員は中国、韓国、台湾、その他アジア諸国の者が殆どとなります。大学運営でも安定的な資金源としての日本人学生であることと同時に、日本人にとって必要な知識を提供していても寄り付かないのは困った現象です。
著者は、ドメスティックな日本の大学での教育を、グローバルに開かれたものとするための考察を、本書の後半で行っており、日本のMBA教育を始め的確に特徴を言い当てていることには感銘を受けました。これからMBAを目指す人や、既に大学院での教育を実行している人には、ここで書かれてあることを、時代の背景として認識しておく必要があると感じます。
22.私は変わった変わるように努力したのだ—福原義春の言葉 (「生きる言葉」シリーズ)
私は変わった変わるように努力したのだ―福原義春の言葉 (「生きる言葉」シリーズ)
福原 義春
求龍堂
福原氏のこれまでの著書からとった名言集的内容です。この本の中では、「時代が変化する。だから毎年同じ仕事を繰り返してはいけない。」や「ここは、あなたの会社です。あなたの成長が会社を良くしそれが社会へ広がります。」など、素朴であり、かつ、本質を言い当てている言葉には好感が持てました
更に、読書の有用性を後半に説いている。私も本を読むようになって、随分考え方に奥行きが生まれてきたように感じます。
人が変わることそのものが成長でもあると考えると、努力の先に自己の変革があるとも言えるのでしょう。本書の言葉を、考えながら味わうことができれば、十分本書の行間を埋めることができるでしょう。
23.あたりまえだけどなかなかできない 42歳からのルール (アスカビジネス)
あたりまえだけどなかなかできない 42歳からのルール (アスカビジネス)
田中 和彦
明日香出版社
基本的には、自立した大人として振舞うことを主たる考え方として全体が構成されている感があります。例えば「同質な人とばかり群れるな」や「時給5000円の仕事をしているか」、「『諦めた大人』にだけはなるな」など、40代で陥り易いことに関して警笛を鳴らしています。
40代は既に仕事の上でもベテランの域に達している者が多く、会社人間としては十分活躍しても、人間としての魅力に乏しかったり、会社での将来性から希望を諦めた人も少なくありません。本書には書かれていませんが、名刺の会社名や肩書に頼らず生きていけるものを備えておくことが、40代には必要だと考えると、本書で述べていることは概ね理解できると思われます。
24.イライラしがちなあなたを変える本
安藤 俊介
中経出版
仕事を含め、日常生活においてはイライラすることは少なくありません。イライラした時に短絡的に考えたことや行動したことに、後で後悔したことも少なくないとしたら、これらを上手くマネージすることで少しはまともな自分になれるかも知れないと思い読んでみました。
基本的には、この種の本が提供する自身の考えを整理し明確にすること、そして自身で客観的な視座を得やすくするような行動を促すという内容からは逸脱していません。ここでの方法は、イライラを他人の視点で考察する、イライラの内容を記録してみる、その内容をポジティブな内容に修正し読みかえる、という三つが紹介されています。
つまりは如何にイライラの内容やその構造に関して、俯瞰して眺められるかにかかっています。全体把握の重要性という観点では、ビジネスの案件処理に関しても同様のことが言えると感じた次第です。
25.男が40代でやっておくべきこと
川北 義則
三笠書房
この手のノウハウ本では、様々に興味を抱く話が挿入されています。本書では、西部劇の1対1の血統において、後に銃を手にした方が有利だそうです。つまり、その分相手を良く見定めていることが重要と説いています。この例から、著者は、自身の会社を冷静に見つめる能力の必要性を説いています。これは、会社の将来を見定める目をも持たなければ、生活の基盤をかけることもままならないということでしょう。
また、後半では、自身の決定への納得感をえることも必要と説いています。「貴方の国で最高の大学は?」と聞かれた時、英国人は「オックスブリッジ」、米国人は「アイビーリーグ」、イタリア人は「息子が入学した大学」と答える例から、健全で明るく「これでよかった」と納得できる潔さも必要らしいです。
26.企業価値向上論講義 社長の値打ち
佐山 展生
日本経済新聞出版社
一橋大ICSでのゲストスピーカーによる講義が本書の基となっています。
本書に登場する10名のゲストスピーカーの各々の事業に関する考え方が理解できる内容です。星野リゾートの星野氏の話では、アルツ磐梯の「カレー保証」でのクレームで、御飯のべたつきを指摘され、3日後には現場の自主的判断で炊飯器を買い替えていた話など、企業にとり何が優先されるのか、従業員が自ら考え行動すること、その実践が良く理解できるエピソードでもありました(pp.23-24)。
また、アスクルの岩田氏からは、常識と非常識、見える化、中途採用人材など、経営の特徴が良く読み取れるよう構成されています。
このように、各々のゲストスピーカーからは、教訓めいた「何か」が本書を通じて引き出されており、読み物としても面白いです。
27.KGビジネスブックス TEAMで安心を育てる ヒューマンエラー対策からリスクマネージメントへ
KGビジネスブックス TEAMで安心を育てる ヒューマンエラー対策からリスクマネージメントへ
和田 重恭, ANAラーニング
角川学芸出版
故障なく運行できて当たり前の航空会社において、機体整備などに関わるチームのリスク管理、組織行動、チームワークなども含め、多様化する管理とその能力、技術力の維持・育成に関わる内容が網羅されています。
リスク管理においては、抽象的な内容で、現場での適用に不向きな書籍も多くみられる中にあって、本書は、現場でどのように向き合うのかが的確に述べられています。機体は確かに航空会社のものですが、その製造者ではなく、機体使用のユーザーでもあります。そのユーザーによる整備・確認の日々の作業が、今日の航空運航を支えていることが理解できます。そこには堪えず安全運航を追求する社員の地味ではあるが重要な努力が払われていることを知ることができます。
28.好きなことに、バカになる
細野 秀雄
サンマーク出版
研究者である著者の生き方が伺える内容です。また、好きなことを好きなだけトライできる環境というものが羨ましく思えます。
面白いトピックとしては「井の中の蛙」に関して、空の高さを知るが故に、海の広さも推測できるとする考え方を提示しています。そして、失敗の回避が成功では無く、失敗を通過したものが成功であるといいます。いわゆる材料学者として度重なる失敗こそが、成功への道程であることが端的に理解できる言葉です。
しかし、それはぬるま湯の環境ではなく、かんかんがくがくの真剣勝負の議論が交わされることが必要であるという厳しい面も覗かせます。
著者は「ものづくり」という言葉を嫌い、ものを作らないひとが、ものを作る人にものを作らせるという制度的なものであるという認識の上に立っています。
29.海外経験ゼロ。それでもTOEIC900点 改訂版—新TOEICテスト対応
海外経験ゼロそれでもTOEIC900点 (扶桑社BOOKS)
扶桑社
宮下 裕介
TOEICの点数UPを図るためのノウハウ本の一つです。既に多くの語彙が忘却の彼方にある私にとって、何か楽できる勉強法があればと、題名だけで購入したものです。
本書は、著者にあった語学の習得のやり方の一端が記述されています。これが読者全てに当てはまるものであるとは限りません。ただ、「トレーニングの最大の敵は、お酒」、「2番目の敵は、旅行や出張」、「3番目の敵は、精神的な悩み」というのは、あらゆる学習や勉強に向かっている社会人にとっては十分に納得できる内容ではあります。特に「お酒を控えること」は重要性が高いと私も思います。
その他の項目に関しては、「著者はそう思う(する)わけね〜」と、第三者的な感覚で読んでみると良いでしょう。
30.史上最強の投資家 バフェットの大不況を乗り越える知恵
メアリー・バフェット, デビッド・クラーク
徳間書店
投資においても、短期で考えるのではなく、長期において存続と利益を考えられる堅実な企業に、投資を行うことで、無理をせずとも健全な投資効果が得られることが、その基礎であることを十分理解できます。
また、経営者として如何に仕事が好きであるか、執着をもっているかが問われているところであり、企業経営者は参考となる知恵を得られるでしょう。そして、その堅実さは、対人においても個人を上手く褒めると同時に、正すべきことは正すことを実行し、また、経営者のほのめかしによる間接的な命令など、三行となることは多いです。さらに、企業における過ちや失敗への対処に関しても本書から良きアドバイスを得られることでしょう。
とかく日本企業は経営者の周辺をイエスマンで固めますが、それを戒める記述もあり、企業、経営者、永続性をしっかりと見つめているバフェットの姿勢を感じ取れる内容に、共感できる部分は多いです。
31.「こんな職場じゃやってけない!」と思ったら読む本
荒井 千暁
PHP研究所
決して、職場が嫌なので、放任や慰留を促す内容ではないです。ここでは、現在の職場に潜む主に人間関係を中心としたあらゆる問題点の洗い出しと、その対応に関して、社会学や心理学などの知見を参考に、解説しています。
例えば、日本経営者団体連盟が1995年に作成した『新時代の「日本的経営」』では、長期的視点に立ち、人間中心の下、従業員を大切にしていくことが謳われていますが、昨今の現実は、これとは逆に短期的成果などが求められていると指摘します。この間の、人事考課・賃金制度を画策し運営するのは人事部門であり、人事の責任の大きさを改めて理解する必要があるでしょう。
下向き、横向き、後ろ向きの日本企業だからこそ、人事の活性化への期待が大きいのかも知れないと感じた次第です。
32.凹まない人の秘密
アル・シーバート
ディスカヴァー・トゥエンティワン
基本的には、自分を如何に客観的に把握し、感情一辺倒になるのではなく、その原因となる事象を捉え、それにアプローチするかという視点の転換が必要なことを様々に説明しているように思います。
その困難克服は、体験すると強固になり、(本書内に言葉としては出てきませんが)いわゆるストレス耐性などに繋がるようである。その考えの根底にあるのは、「自分が環境をコントロールする力をもっているという考え方を保ち、そして自分からことを起こすことができる人間たちが道を開いていく(p.49)」という点です。つまり、自身主体的関わりによって、如何様にも操作することが可能なのです。
また、「成功者といわれる人は、過去に大失敗をしている(p.95)」という点も重要かも知れない。経験から学ぶことを知ることが重要です。その点で、凹まない人は学ぶ人なのでしょう。
33.自分らしいキャリアのつくり方
高橋 俊介
PHP研究所
組織と個人、私生活を含め、キャリアをどう認識するか、その考え方の一助となる書籍でしょう。著者のこれまで記した著作において、そのポイントとなる点は、本書においても表現されています。また、スローキャリアに関する記述も、単なる生活重視ではなく、仕事の質とプロセスを大切にすることが必要であると、誤解を生じやすい言葉に、解釈を加えています。
本書の中では、自身のキャリア育成に関し、仕事とは結婚に近い関係があるらしく、例えとして結婚やパートナーなどの記述が多くみられます。確かに類似する点があると思われるが、独身の私にとっては、いささか理解力が足りないかもしれません。
自身のキャリアに関して疑問が生じたときに、素直に読める本でもあります。また、仕事に熱中している諸氏も、一度立ち止まって、本書を通して、自身のキャリアを考えてみるのも悪くないと思います。
34.出世力--なぜあなたの「頑張り」が認められないのか
尾崎 弘之
集英社インターナショナル
本書はこれから社会人となる学生に対し、仕事とは何か、その上で出世とはどのような意味を持つのかを丁寧に解説しています。
既に社会人である者も著者の考え方として、「結果と成果の違い」など考え方を改めるには良い内容もあります。「結果と成果の違い」では,学園祭のタコ焼きの出店を例に解説してあり、学生にも著者の意図が何であるか良く理解できるでしょう(pp.117-120.)。
また年功序列と成果主義に関しても、言葉面だけの理解ではないその本質は何なのかを解説してあります。
「出世」ということだけではなく、「働く」ということを考える意味で参考になる書でしょう。
35.夏野流 脱ガラパゴスの思考法
夏野 剛
ソフトバンククリエイティブ
本書は、いきなり国、企業、個人、つまり社会の「ヘン」(変)なしくみを提示することから始まります。本来、効率的に実施されるはずの社会が、大きなひずみの中にあることを理解する点で、本の導入としては、読者をひきつけるまえがきです。
その上で、未だ年功序列が続き、危機感の感じられない企業、グローバル化を叫びながらそこに息づかなければ企業の将来がないことが理解できているはずなのに、英語すらろくに活用できない幹部、「昔はよかった」と回顧する者、現状認識不足のメディア、世の中の見えない首相、などなど様々な「ヘン」が挙げられ、われわれに考えることを促しています。
著者は携帯電話でのiMODEの立ち上げに寄与した人であり、昨今のステレオタイプで揶揄される携帯のガラパゴス化に関しては、その主張が如何に現実を見ていないかを本書でも優しい言葉で指摘しているようです。
36.企業メセナの理論と実践 (文化とまちづくり叢書)
企業メセナの理論と実践 なぜ企業はアートを支援するのか (文化とまちづくり叢書)
菅家 正瑞
水曜社
企業メセナを経営学の理論体系の中に位置づけることは非常に難しい課題です。本書はそれを企業メセナの理論としてチャレンジしている。また、企業メセナの哲学的観点等、理論的論述が本書の前半を占めています。
後半は、企業メセナの実践として、それに関わってきた著者らの体験や経験を基にした内容であり、どのように企業メセナと付き合っていくのかという観点で読むと、それぞれに感銘をうけることがあります。
企業メセナに関する知識を持たずに読まれた人は、少々理論部分が重たい感じを抱くのではないだろうかと感じます。しかし、これまでの企業メセナに関わる書籍の多くは、企業のメセナへの取り組みに関する部分に注視し、「なぜメセナなのか」の問いを学問の理論として考察することはなかったのではないかと思います。その点において、本書は異彩を放っていると言えるでしょう。
37.JAL再生の嘘
屋山 太郎
PHP研究所
今日のJALがどのような背景で企業再生へと至ったかが良く理解できます。マスコミではJALの年金の話など話題にことかかなかったですが、著者による年金の報道は情報操作である旨の解説は、妙に納得のいく内容でもあります。
JALでは、一般に企業内組合の問題、政府との関係などが知られているが、本書では航空行政とJALの関係も糾弾しています。また、日本の空港も黒字空港は、熊本、鹿児島、新千歳、伊丹の4空港だけであり、私の住む福岡はマイナス6,709(百万円)と、最大の赤字を計上しています(p.60)。
著者は、JAL再生をよいことに、ANAとの比較において決して公正とはいえない国の施策にダメ出しを行っています。国の施策によりJALに対して健全に経営しているANAが不利になることは、間接的には利用者たる国民を犠牲にしています。
いざとなったら国が面倒を見てくれるという体質から抜け出せなかったJALの経営、御用組合等を含めたJAL全体の組織腐敗がある程度見渡せる内容となっています。
38.日本人へ リーダー篇
塩野 七生
文藝春秋
著者が古代ローマのことを研究されているだけあって、生き生きと描かれています。様々な項目が簡潔にまとまっており、大変読みやすいです。
歴史を知った上で、日本に関する現実に対して示唆をする観点は参考になるところが多いです。例えば「成果主義のプラスとマイナス」(p.152)という内容で、マイナス面として、能力の質、日本人の特質、拙速の危険の三つの弊害をあげています。また、日本人の盲信ともいえる法律への過剰な信頼(p.188)なども、鋭い指摘の一つでしょう。
ローマの時代を語る部分と、現代の事象を語る部分で多少温度差を感じるものの、日本人の特質に関しては相対的に理解できます。故に、リスクを取ることに対して消極的な日本人像というものが、ここに表れています。
39.「見せかけの勤勉」の正体
太田 肇
PHP研究所
多くのモチベーションに関する書籍はありますが、「やる気」に関して、それが何故疎外されてしまうのかを、真剣に向き合って論述している著作として質が良いです。
働く日本人には表情がない(p.23)など、確かに見受けられることが多いです。自身の所属する組織と関連付けて内容を把握すると、多くの事象が身近で起こっていることに納得させられます。サテライトオフィスや、評価者から離れた所に勤務するものは帰りが早いなど、面白い知見も散見されます。
また「やる気」と「管理」が密接に関わることは前から知っていますが、その内容がきちんと述べられている点、さらに自発的なやる気につなげている精神的飢餓状態を意欲に結び付けている例など、大変参考となります。
40.考えよ! ——なぜ日本人はリスクを冒さないのか?
考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)
イビチャ・オシム
角川書店(角川グループパブリッシング)
私自身、サッカー世界や戦術には疎いですが、これをマネージという観点から捉えると、日本ないし日本企業に勤める人たちに共通の特性や行動が見て取れます。
「リスクを負わないチャレンジはない。そういう日本人に欠けている哲学の部分を埋めたい(p.7)」
「生活の中で規律正しい日本人は意外にも、試合の中でディシプリンを貫くことがそれほど好きではないように見える(p.44)」
「日本人の選手は不必要な個人的ミステイクを犯しがちだ(p.45)」
「日本人は『自分は何をすればいいか』と人に依存する性質があるが、自分で考えて質問する機会は多くない(p.187)」
これら著者による多くの示唆は、日本のビジネスシーンでも通用する叱咤激励でもあります。オシムの要求に応えられるようなビジネスマンは少ないでしょうが、それでも必死についていこうとする骨のある人が今の日本に必要不可欠であることは、サッカーの世界でもビジネスの世界でも同じでしょう。
41.リスクの中に自由あり—市民主役社会におけるリスクマネジメント
リスクの中に自由あり―市民主役社会におけるリスクマネジメント (シリーズ“負けない企業人”になるための本)
(シリーズ“負けない企業人”になるための本)
上野 治男
東京法令出版
本書は、現状に甘んじて何もしないことこそ最大のリスクであるという理解から、リスクをとることの中に自由があるという主張をしています。
リスクマネジメントとしては、高度な倫理観と社会常識の理解と共に、その秘訣として、自己の利益と社会の利益を合致させることをが重要と説いています。これは、私なりに理解すると、自己の利益と、組織の部分最適の利益、組織の全体最適の利益、社会の利益がそれぞれ合致していなければ、いくらリスクマネジメントを論じても、ひずみがその機能を妨げることに繋がることを意味していると思います。
私達は、リスクに対して、認識を新たにする必要性を感じなければならないと本書を読んで感じる次第です。日本企業の後ろ向きなリスクへの対処の仕方も、そろそろ見直す時期に来ているのかも知れません。
42.金融破綻と経営規律—金融コンプライアンスの挑戦
御宿 義
民事法研究会
「コンプライアンス」を「法令遵守」のみに限定して理解している人や、会社の経理の透明化、はたまた仕事の自由度が妨げられているというネガティブに反応している人は、多いです。しかし、本来のコンプライアンスは法令遵守ではなく、企業の根底にある経営の基本です。それには、信頼関係が必要不可欠の要素です。
本書の内容は、金融に関係したものではありますが、その基本的なものは「経営規律」に焦点が当てられています。ここでは法令遵守が先にあるのではなく、そもそも経営の根幹たる信頼関係の揺らぎ、そして経営そのものの規律のあいまいさに繋がり、最終的に法令をも守れない組織になってしまう過去の不祥事の反省から、表面として表れる法令遵守がコンプライアンスでは無いと説いています。
43.フィンランド流 社長も社員も6時に帰る仕事術
田中健彦
青春出版社
最初はフィンランドの様々な仕組みを礼賛するだけだろうと思っていましたが、読んでみると日本との違いに良きヒントを与えてくれる内容でした。本書には日本においても6時に帰っても十分世界と戦える通用する組織になるためのヒントがフィンランドでの著者の経験の中から述べられています。
フィンランドについて考えると地道にコツコツとやる日本のイメージが覆されます。フィンランドには日本のような「ホウレンソウ」で管理しなくても良い教育と信頼がそこにあります。そして何よりも違うのは「考える能力」が小さな頃から養われていることにあります。
日本の場合は一度決まれば突き進む傾向がありますが、その一度決める意思決定のあり方に疑問を感じる著者の主張には納得させられます。
44.庄内の起業家—創造的挑戦の軌跡
石田 英夫
東北出版企画
筆者の現在住んでいる山形県庄内地方での社会起業家へのインタビューに基づいた、起業家として何が重要な点なのか、その環境はどうであったのか。著者なりの分析もされており、大変興味を持てる内容でした。
本書の中には、ケースも収められており、ケースを作る側の視点と、それをどのように活用するかといった視点も網羅されており、長くケースメソッドでの教育にあたられた筆者ならではの見解が述べられています。
以外にマイナーな東北地方の出版社による書籍であるため、入手は難しいも知れません。ビジネススクールのケースメソッドに興味を持つ人、特に山形県の人は是非読んでみると、ケースが身近に感じられること間違いなしです。
45.日本人はなぜ国際人になれないのか
榊原 英資
東洋経済新報社
著者は、日本が翻訳により古くは中国から、近年は欧米から、各国の用語を日本語化することで知識の吸収に大きな効果を得てきたことを評価しますが、その半面、各国の用語を各国の言葉として認識する思考が発展してこなかったと危惧を提示します。
確かに、中学生から英語を勉強しても試験英語に対処するだけで、本当のコミュニケーションには繋がらなかったし、むしろこの試験英語が英語を苦手とする人を増やしてきたようにも思います。
ビジネスの上では、日本はグローバル化の中で生きていかざるを得ません。その中で、英語を道具として使い、真のコミュニケーションそして議論する力を養わなければ日本そのものの衰退は確実に起こってくるでしょう。
現地の言葉で現地の言葉を理解することの重要性を何故著者は説く必要があったのか、本書を読む中で、その「危機感」を味わう必要があるでしょう。
46.『ビジネス』の発想法
正解のない難問を解決に導く バックキャスト思考 - 21世紀型ビジネスに不可欠な発想法 - (ワニプラス)
木村 剛
ナレッジフォア
著者の起業からの苦労話や、ビジネスを行う上での教訓、考え方を網羅した書籍と言えます。また、多くの経営者からの言葉の引用も多いですが、基本的な本書のスタンスは、ドラッカーの経営学に沿った内容であることと、稲盛氏の考え方に同調している点は、考え方の端々で伺えるでしょう。
日本ではドラッカー崇拝的な人は多いです。確かにマネジメントの父として、利に適った考え方、そしてそれが日本での特に金儲けを嫌う土壌では、極めて受け入れやすい内容であることには間違いありません。
本書の全体を通じて、文章や見出しは口語的で、経営に全く興味がなくても、読みこなすことは可能なように丁寧に書かれてある点が良いと思います(文字が大きいので、年配者に喜ばれるでしょう)。
47.仕事に必要な言葉
島田 精一
かんき出版
著者が、心に書き留めた様々なフレーズと、その意味する内容が簡潔にまとめられている書籍です。
著者は、メキシコ三井物産副社長時代に拘置所に入れられるなど、特異な経験ももっています。それらの経験から紡ぎだされる言葉は、経験に裏打ちされたエピソードを含んでいます。
内容そのものは、有名なフレーズも度々登場します。作家・井上ひさしさんからの引用で、「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを面白く」という表現は、学生から会社員まで様々な場面で応用が利く、良い言葉です。
簡単に読めるので、短い休憩時間にさっと目を通してみるのも良いかも知れません。
48.田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる!中国人の金儲け、日本人の金儲け ここが大違い!
田原総一朗責任編集 2時間でいまがわかる!中国人の金儲け、日本人の金儲け ここが大違い! (田原総一朗責任編集2時間でいまがわかる!)
宋 文洲
アスコム
田原氏と宋氏の対談で構成されている本です。この本でキーワードとなるのが「大」という文字で、本書では「大企業」など、日本人は大きいことに進みたいという欲求があることを示唆しています。
宋氏の考え方は、いたってシンプルですが、日本の中で長年育つと、そのシンプルさがゆがめられていることが本書の内容からも良く理解できます。堀江氏、村上氏、三木谷氏、孫氏に対する宋氏の考え方のユニークさも、田原氏が上手く引き出しているように見えます。田原氏は某「朝まで・・・」では、強引な司会の仕方が表出するが、書籍だと、その辺が大らかに推移しているのは面白いです。双方同様の意見を持っているときは、このように素直な議論になるのでしょうか。
宋氏の考え方は「素直」に現実を直視しているため、ビジネス・スクールなどで企業行動や経営戦略を考えるときに、変なセットアップをつけない見方を養うには手頃です。
49.KGビジネスブックス 利益を生みだす人事改革 7つの法則 人事科学の新たなグローバルスタンダード
KGビジネスブックス 利益を生みだす人事改革 7つの法則 人事科学の新たなグローバルスタンダード
鈴木 智之
角川学芸出版
人事に関して、モチベーションやコーチングなどの手法を問う書籍が多いのに対して、その人事戦略の有効性を問う書籍は少ないです。本書は、人事戦略と利益の関係を客観的に捉えています。
旧来のモデルの固定化ないし定形化した行身が中心であれば、製造中心の携帯で十分競えましたが、ソフトの時代である今日、その主軸をなすのは、人材そのものであり、人材改革がまじめに取り組まれてこなかったことが、経営の強弱にも大きく影響します。
マネジャーとリーダーを混同する日本の現状や、研究の効果、理念の浸透など、従来のアプローチの仕方と異なる方法が随所にみられ、読んでいて大変勉強になります。
50.アイデアはどこからやってくる?
岩井 俊雄
河出書房新社
アイデアは、何もせずに急に空から降ってくるものではなく、それにいたる「何かの蓄積」があった上で、トリガとなる現象から見出されるものであることを本書を通して理解することができます。
本書は「14歳の世渡り術」シリーズの中の一冊ですが、14歳に拘らず、大人が読んでも十分ためになる内容を多く含んでいます。著者の作品である『100かいだてのいえ』や『どっちがへん?』に至る発想や、ジブリ美術館にある『トトロぴょんぴょん』の展示までのエピソードなど、作品を通じた人の繋がりにも興味がわきました。
さて、著者が思うアイデアの創造は、第6章以降にまとめられています。本書を読もうと思われる人は、ここだけ読むのではなく、是非最初から読み進めてもらうと、第6章の内容が脳裏に浮かびながら理解できることでしょう。
社会人の方にはこちらもおすすめです。