仕事をやめたい、転職をしたい。
そんな時におすすめの転職本や面接本ばかり探してませんか?
今回はそんな時だからこそ、
読んで欲しいおすすめビジネス本を紹介します。
もっと視野を広く、何がやりたいのか、どう働きたいのかを見つけてみませんか?
- 1.仕事は楽しいかね?
- 2.まず、世界観を変えよ——複雑系のマネジメント
- 3.希望の仕事術
- 4.人が辞めない会社はヤバイ!
- 5.イノベーションできない人は去りなさい!
- 6.コカ・コーラに学ぶ ビッグ・ウォレット戦略
- 7.アイディアのレッスン
- 8.「マイナス」のプラス—反常識の人生論
- 9.三賢人に聞く 大不況は日本型資本主義で乗り切れ!
- 10.どんな仕事も楽しくなる!25のルール
- 11.ひとりのメールが職場を変える——こころのマネジメント
- 12.J‐POPマーケティング—IT時代の音楽産業
- 13.“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事
- 14.マネジメント基礎力—はじめてリーダーになる人の本
- 15.イノベーションを興す
- 16.日本型プロフェッショナルの条件—アメリカ的論理思考では問題は解決できない
- 17.仕事ができる人は「負け方」がうまい
- 18.プロの残業術。 一流のビジネスマンは、時間外にいったい何をしているのか?
- 19.忘却の整理学
- 20.競争力の原点
- 21.ここが変だよ日本の会社
- 22.ビジネス読解力を伸ばす未来経済入門
- 23.ワールドインク なぜなら、ビジネスは政府よりも強いから
- 24.カオティクス—波乱の時代のマーケティングと経営
- 25.企業の研究者をめざす皆さんへ—Research That Matters
- 26.危機の経営 ~ サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション
- 27.異業種競争戦略
- 28.考え抜く社員を増やせ!—変化に追われるリーダーのための本
- 29.希望を捨てる勇気—停滞と成長の経済学
- 30.今後50年を生き抜く新・経営パラダイム
- 31.日本経済の戦後復興—未完の構造転換
- 32.「質の時代」のシステム改革—良い市場とは何か?
- 33.社員のモチベーションは上げるな!
- 34.ビジネスと資本主義—経営史序説
- 35.組織の限界
- 36.榊原式スピード思考力
- 37.どの会社でも結果を出す CEO仕事術 いつも「経営者の目線」を持て
- 38.市場の秩序学—反均衡から複雑系へ
- 39.北尾吉孝の経営道場
- 40.竹村式お金に振り回されない習慣術—60歳からは少ない収入で大きな幸せ
- 41.経済学はなぜ間違え続けるのか—マルクスもケインズも見逃した経済の2つの法則
- 42.日本人の精神と資本主義の倫理
- 43.英語をやっていて、本当によかった。—吉越流ビジネスマンのための英語塾
- 44.世界一やさしい問題解決の授業—自分で考え、行動する力が身につく
- 45.アホ社長の頭の中
- 46.グローバルリーダーの条件
- 47.ギスギスした職場はなぜ変わらないのか たった一人からでも始められる「職場活性化」の方法
- 48.偏差値30からの英語やり直し学習法
- 49.新しい資本主義
- 50.リーダーになる人に知っておいてほしいこと
1.仕事は楽しいかね?
デイル ドーテン
きこ書房
単に成功を目指すのではなく、その根底には常に変化を求め、自身を変えていく努力を行うことが重要であることを物語として記述してあります。
私も速読のために、ノウハウ本の類は結構読んでいるのですが、多くの書籍で同様の視点から、後付けの成功要因を述べているものは多いです。問題は、それらのノウハウを求めるのではなく、自身が変化を求め変わること、それは苦ではなく楽しい行動であることが理解できます。
最初は、ありきたりの内容に思えますが、ページをめくるにつれ、面白みが増してきます。仕事に思い悩んでいる人は一読してみては如何でしょうか。
2.まず、世界観を変えよ——複雑系のマネジメント
田坂 広志
英治出版
本書は、著者の『複雑系の経営』を改題加筆した内容です。著者が『複雑系の経営』を提示した時は、まだ複雑系に関して人々があまり認識していない感覚を持ちましたが、こうして改題された本書を読むとまさしく複雑系の中にわれわれは巻き込まれてしまっていることを強く感じざるを得ません。
それは、決して還元主義的考察の中では発見できず物事の複雑化に伴い「新たな性質」を獲得することにあります。経営を共進化のプロセスと捉えると、また新しい経営の見方をイメージすることができます。
本書は比較的引用する理論の基となる書籍などが文中にあふれており、それら基となる書籍を読んでみたくなる衝動にかられてしまいます。私にとっては経営学において応用できるヒントが多く散りばめられており、大変有用な視点を提供してくれる良書です。
3.希望の仕事術
橘川 幸夫
バジリコ
著者の経験からくる人生訓です。なかでも「簡単に手に入るものは誰でも手に入るもの。」、「お客様は神様ではない。神様だとしたら、神様からお金をもらってはいけない。」、「資格がなくても生きていけるようになってから、資格を取るべきだろう。」、「利益とは『試験の点数』みたいなものである。」などなど、ユニークなものが多いです。
著者は様々な職業で様々に経験したそこから絞り出される言葉であるため、的を得た内容は多いです。仕事とは「自分の思いを社会化すること」とはよくできた言葉です。確かにそう。この不況の時期だからこそ、仕事を持つ者も持たないものも、じっくりと仕事の意味と意義を考える必要があるでしょう。そのためのきっかけを与えてくれる、簡潔な言葉を提供する書籍です。
4.人が辞めない会社はヤバイ!
宋 文洲
ベストセラーズ
多くの会社に共通する会社の弱体化の理由、それをまとめている本であり、気楽に読める反面、「確かに!」と頷きながら確認できます。それは自身の組織にも大きく当てはまる内容そのものだからかも知れません。
会社組織の中にいる、もしくは居すぎると、会社の中の大きな勘違いを勘違いと知らずに過ごしていることが多いです。それらを勘違いと見抜くには、やはり著者のように外から第三者として眺める視点が必要のようです。また、よそとの比較ができるような環境に身を置くことも必要です。
本書は、オーディオのスペックの例や、飲ミニケーションなど、いつものようにユニークな内容で満たしてくれています。
5.イノベーションできない人は去りなさい!
小林 陽太郎
PHP研究所
本書は、丁寧な言葉使いで記述されており、高校生や、大学の学部生に対して、経済同友会に参加する経営者から、次代の方向性に対する考え方が理解できると思います。
終章では、スウェーデンの中学の教科書に登場するドロシー・ロー・ノルトの「子ども」の詩を題材に考えさせる設問が掲載されています。ここに、明らかに知識(暗記)重視の教育から「考えさせる」教育への転換が出来ていない日本の弱さを感じてしまいます。教育の差は、イノベーションの差に繋がることを、さりげなく終章で示していることが、著者らの願いを端的に示しています。私達ははもっと自分の頭で考えなければならない。それこそが全体最適に導くイノベーションの出発点なのでしょう。
6.コカ・コーラに学ぶ ビッグ・ウォレット戦略
古谷 文太
東洋経済新報社
コカ・コーラの日本各地にあるボトラー、そしてそのボトラーの特徴(例えば61ページに示される、主要株主の違い)など、個々の企業活動による部分最適な構造から、これらを一つの大きな全体最適化への転換に関する内容が本書には記されています。その全体最適への戦略を、著者は「ビッグ・ウォレット(大きな財布)戦略」と呼びます。
本書では、ビッグ・ウォレット戦略により、どのようなメリットが得られるのか、丁寧に説明しています。また、それを実際に適合するために、何を実践してきたのか、克明に記述してあります。また、その全体最適と部分最適の歪の解消のために、すり合わせを行っていますが、この様子も理解することができます。特に、各ボトラーでの部分最適的視点から見た時の考察まで至っている点は評価できるでしょう。また、本書は、最後に、この戦略の限界と可能性も示しています。
7.アイディアのレッスン
外山 滋比古
筑摩書房
アイディアというものは一体何か、どのようなルールからなるのか、どのような環境の中から発生し得るものなのか、様々な観点からアイディアをとらえようとする書です。
全体として、アイディアが考え出せないのは自身の頭を使って考えようとしないことであることが理解できます。使わなければ出てこないのです。そのためには、比喩や結合、類推など様々な思考をすることが大切であるということが良くわかります。
アイディアだけに特化した書籍は珍しいですが、ものごとのヒントを思い浮かべる方法として一読するとそれなりに面白い視座を得ることができるでしょう。
8.「マイナス」のプラス—反常識の人生論
外山 滋比古
講談社
物事を見つめる視点の面白さを感じる本です。最初にプラスを得る人生は、マイナスを知らない分いずれは大きなマイナスに向かうこともある。それに対し、最初にマイナスを味わうと、その悔しさから、やがては大きなプラスを得ることに繋がることがある。本書はそのような類例が著者の経験として述べられています
また、「北欧の外交官にとって、雪の降る国は信用できる」という点、「気のおけない人」の意味など面白い観点も掲載されています。
人生、マイナスを知ってしまうと、結構無理をしてでも、壁を登って行く勇気を得るように思えます。その意味で、絶望的な体験を早々にしておくことは、その時はダメージが強くてもやがてそれが活かされるのだと思えます。人生、回り道をしているようで、実はそれこそが最短の道だったりするのかも知れません。本書は、人生を再考させるには良い題材を提供してくれる書籍です。
9.三賢人に聞く 大不況は日本型資本主義で乗り切れ!
三賢人に聞く 大不況は日本型資本主義で乗り切れ! (PRIME NEWS BOOKS)
水野和夫、田坂広志、榊原英資
文藝春秋
本著は、BSフジの番組『PRIME NEWS』における、水野和夫、田坂広志、榊原英資の出演で話された内容を記したものです。三者の述べている内容は、それぞれの近著に即した内容です。
水野氏の主張は、アメリカに比べ日本の方が、先頭を走っていましたが、逆に小泉・竹中構造改革はアメリカを見習う政策であり、うまくいくはずはないというないようでした。田坂氏は、ヘーゲルを基にした螺旋構造モデルから、今日の資本主義を概観します。そして、榊原氏は、今度こそ本物の構造改革を実行すべきと説き、その一つの考えとして現代版「廃藩置県」をすすめます。
いずれも、日本は、他の国に追従した考え方ではなく、日本が自身で考えなけれならないことを示しています。三者の主張するエッセンスだけでも簡潔に知りたい人には、気楽に読める内容となっています。
10.どんな仕事も楽しくなる!25のルール
大林 伸安
ダイヤモンド社
著者の性格と人柄が随所に語られるエピソードでわかります。仕事の善し悪しも気の持ちようかも知れません。
どうせ人生の多くの時間を仕事に費やすのであれば、それに楽しさや意義を自分なりに見出し、熱中できるに越したことはありません。著者はそれを自身の経験から読者に語っています。
著者は「大目的」と「小目的」にわけて解説していますが、多くの会社は目の前の「小目的」に捉われ自身の仕事が社会の何に貢献し、人々のどんな幸せに寄与しているのかというマクロな視点が失われながら仕事を黙々とこなしている人も少なくないでしょう。特にセクショナリズムの進んだ企業はそうでしょう。
顧客の幸せを感じ、さらに+αの心づかいができる、それは仕事をする上での楽しみであり生きがいに繋がる。そう著者は言っているように思います。
11.ひとりのメールが職場を変える——こころのマネジメント
田坂 広志
英治出版
以前著者が書いた『こころのマネジメント』の加筆版として新たに書籍になったものです。
本書では、職場において週に1回発信するウィークリー・メッセージの効用をうたっています。職場でのコミュニケーションが希薄になっている現在において、職場の人の深層である心に接近するためにもこの方法は効果があるとしています。
中高年になるとノミニケーションでも良いという反論もあるかも知れませんが、決してノミニケーションでは得られないその人の思考法や物事の捉え方、今考えている何かに出会えることが、職場のコミュニケーションが円滑に働くために有効であるとします。
直接仕事に関わらない情報による共有したナレッジも、仕事には必要であることを理解させてくれます。
12.J‐POPマーケティング—IT時代の音楽産業
J‐POPマーケティング―IT時代の音楽産業 (CK BOOKS)
岸本 裕一, 生明 俊雄
中央経済社
本書は日本の音楽産業とりわけJ−POPを巡るマーケティングの内容が、簡単ではありますが、理論立てて述べられています。基本的には先の『タイアップ・マーケティング』の内容を網羅しています。また、『タイアップ・マーケティング』の内容の多くは、本書にも活用されています。
さらには、欧米と日本のアルバムのコンセプトの違い、日本の流通システムの特徴、レコード会社の組織形態の変化、インターネットの活用、映像化、カラオケなど、幅広く音楽産業を考察しています。
iPodが登場する前までの日本の音楽産業を俯瞰して把握する意味においては、活用できる書籍です。その後のiPodや携帯電話での音楽など、本書は音楽産業の発展に対してその切り口の提示の仕方という点では数少ない書籍であり、更にこれを理論的な構築として展開すると学術論文の域に入ることも可能ではないかと思われます。
13.“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事
“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事
小暮 真久
日本能率協会マネジメントセンター
元戦略コンサルだった著者だけに、ビジネスモデルの新たな構築としても良くまとめられている書籍です。この手の多くの本が志や社会的貢献、想いだけに終始している中、この本はビジネスとして成立するNPO活動ということがきちんと描かれており、現実的な内容で好感がもてます。
社会企業家としてどのような観点でその事業を見ているか、またそのための著者の経験と考え方はどのように変化したかということが手に取るように理解できます。また活動に好意的な企業が現れたとしても、曲げてはいけないところは妥協してはいけないことも述べられています。
14.マネジメント基礎力—はじめてリーダーになる人の本
中西 晶, 家田 武文
エヌティティ出版
著者の一人は心理学系の知識が豊富ですが、マネジメントに登場する基本的な心理学系の理論は本書においても登場しています。本書はこれからマネジメントを行う立ち場になる人や、リーダーに求められる基礎的な知識や能力が記述してありますが、そうでない人にも十分理解できる内容であり、この本に書かれてあることと自身の上司の対応などを比較しながら読み進めてみると、色々な発見ができるでしょう。
目的と目標の違い、PDCAプロセス、問題解決など、心得ておくべきことは押さえられており好感のもてる内容です。その他、人間関係、コンフリクトなど、内容は幅広く網羅しています。
15.イノベーションを興す
伊丹 敬之
日本経済新聞出版社
著者はイノベーションには三つの段階プロセスがあると説きます。それは筋のいい技術を育てること、市場への出口を作ること、社会を動かすこと、の三つです。確かに、良きシーズを得、それを市場に出すまでに磨き、そのことが社会に受け入れられ、社会の発展に寄与することは技術に限らずイノベーションと言ってよいでしょう。
本書はこれら三つの段階を丁寧に解説しています。その中でも市場への出口を作ることに関わる「外なる障壁、内なる抵抗」は、組織の中で働く者にとっては多く感じるところであり、著者によって良く考察されていると感心しました
社会を動かす観点からは、コンセプト、ビジネス、デザインに関わるイノベーションを解説しています。また第4部のイノベーションの発生メカニズムも考究されており、読み応えがある内容です。著者は創造的破壊ではなく、破壊的創造という言葉を使っています。MOTに興味がなくても、経営に関する書籍として一読して損はありません。
16.日本型プロフェッショナルの条件—アメリカ的論理思考では問題は解決できない
日本型プロフェッショナルの条件―アメリカ的論理思考では問題は解決できない
安永 雄彦
ダイヤモンド社
ビジネスパーソンが基本として身につけておくべき考え方を本書を通して理解できると思える内容です。オイゲン・ヘリゲル『弓と禅』での弓の師匠の話は大変参考になります。内的な標的と外的な標的の合一、これは企業の中の自分、自分と他人、企業と社会、多くの場で参考となる基準でもありましょう。
苦手な領域への挑戦に関しても一読する価値はあります。また本書では山本七平の引用もみられ、久しぶりに山本作品を読みなおそうかと思った次第です。基本的に著者はビジネススクールで教鞭をとる経験もあり、随所にMBAに関する内容や物事の捉え方などが表れています。さらに僧侶でもある著者のビジネスマンに対する優しさというものを感じ取ることができます。
暇な時間に自分探しの一つとして一読してみては如何でしょうか。
17.仕事ができる人は「負け方」がうまい
宋 文洲
角川学芸出版
著者の作品はいつも物事の捉え方、観点で学ぶべきところが多いです。
たとえば、トヨタの強み(p.52)などは、一般に言われているところとは違って、著者の捉えどころは正しいと感じられます。また、「偽」に関するカーター元大統領のお母さんのインタビュー(pp.126-128)、どん底の効用(p.136)等など、我々がまだまだ日頃気付かない観点は多いことが良くわかります。
そもそも我々は物事をゼロベースで考えることをせず、思考の最初の状態からある種の限定されたなかで思考しているために、本人が「考えた」といってもそれが本当に最良の内容であるのかは疑問です。このことを著者の本は素直なゼロベースの思考から説いていることで、その差となって現れる「おかしい」という感覚を我々に知らせてくれています。まだまだ著者の視点から学ばなければと思う次第です。
18.プロの残業術。 一流のビジネスマンは、時間外にいったい何をしているのか?
プロの残業術。 一流のビジネスマンは、時間外にいったい何をしているのか?
長野慶太
草思社
本書は残業を奨励しているわけではなく、自身が遅れている点、付けなければならない点を、自身のために活用するために活かせと説いています。よって多くの日本の企業がかつて単にだらだらと時間外をしてきたことに関しては否定しています。
中には「自腹を切らない研修は無意味」など、私も同意見でます。会社が費用を払うのではなく、自身が払うということをしないと研修だから昼に寝れるという本末転倒の社員を作ってしまいます。
「アメリカの管理職になぜ個室があたえられるか」といった観点も面白いです。逆に日本の管理職に個室を与えると、周囲を気にしないことでかえって非効率になる可能性も高いかも知れません。
19.忘却の整理学
外山滋比古
筑摩書房
忘却に焦点をたてた大変ユニークな書籍です。全体を通じて、日頃忘却は良くないことと思っていたことが、嘘のように忘却こそが成長へのカギであるかのように思えてくることに本書の威力があります。
あたかも呼吸は吐いてから吸うように、忘却があることで新しい知識の吸収に役立つという考え方も大変興味をひきました。また、「田舎の学問より、京の昼寝」もなるほど、妙に説得力を持ちます。ノートを取らないことも、知識の整理という点からは納得してしまいます。
良い読書の時間を過ごさせていただきました。問題は、このことが忘却の彼方に忘れ去られるか否かです。
20.競争力の原点
遠藤 功
PHP研究所
これから日本が世界のプレーヤーとビジネスにおいて競り合う時にどのように立ち向かえば良いのか。著者は、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本の戦い方に、その解決方法を見出します。
ビックプレーヤーに対して緻密なきめ細かい戦術が効果を発揮するとし、これを著者は「スモール・マネジメント」を呼びます。同様の経営はホンダやトヨタでも実践されており、それを例として提示しています。そして現地、現物、現人の三現主義を提唱します。また昨今のミドルがおとなしくなってしまったと嘆きもします。最後に著者は日本の生き残りに「プレミアム立国」の可能性を提唱します。
全体として、製造業のヒントを得るには良い視点を提供してくれている。
21.ここが変だよ日本の会社
宋文洲が語る ここが変だよ日本の会社 リーダーになる人が考えておくべきこと
宋 文洲
PHP研究所
宋さんの本は、正直言って面白いです。面白いといっても、内容は正直。
例えばトヨタの「改善」にしても、多くの書籍は「なぜを5回」とか、表面的なことを教訓として記述しているものが多いが、宋さんは「最大の強みは標準化」と捉えます。それは、至極当然な本質であって、それを書籍で指摘して読者に知らせてくれるわけです。
また料理に愛情を込めたら本当においしいのか?という内容も大変有意義で、愛情を込めても、下手な料理ではお客はおいしいとは言ってくれないのです。これは「がんばりさえすれば結果は良くなる」と思うことと同じで、プロセスを間違うとがんばっても結果は付いてこないわけです。日本人は精神論や感情論で動かされることは多いのですが、プロセスを司るマネジメントが弱いため、結果がついてこなくて不幸になっていることを端的に著者は示してくれています。
22.ビジネス読解力を伸ばす未来経済入門
小宮一慶
ビジネス社
著者は、現状を理解した上で決して悲観的にならずに日本の取るべき方法を演繹的に導いています。資源がない国で、英語もままならず、技術を持っていながらビジネスを構築できない日本という情けない将来からの脱却のヒントを与えています。
答えはフィンランド・メソッドにあるとおり、「考える人」を増やしてこなかったことに一つの要因があります。これはリスクをとってでも行動しようとする人を阻害してきたことにも繋がるかも知れません。
本書は、未来経済としての資源、IT、少子化、新興国などにも触れており、最後は知恵で締めくくっています。最終的にこの国が生きていくには、多くの知恵が生まれる土壌を作っていくことにあります。
比較的素直に書かれている内容なので、大変読みやすく仕上がっている。
23.ワールドインク なぜなら、ビジネスは政府よりも強いから
ワールドインク なぜなら、ビジネスは政府よりも強いから [DIPシリーズ]
ブルース ピアスキー
英治出版
企業の持続的な活動には「社会対応」が必要不可欠であるということが、トヨタやHPを事例に語られています。
従来の企業戦略としての良い品質と手頃な価格以外に、製品の中間工程での健全化も含めた対応が企業に求められていることを端的に示しています。
またリーダーも企業のためになることと、社会に必要なことの両方に目を向けた人が必要になることなど、多くの示唆に富んでいる内容です。
CSRや企業倫理などに関心のある人以外にも企業の経営を担う人など、一読しておくと今後の企業運営のヒントとなることに出くわすことでしょう。なかなか勉強になる内容でした。
24.カオティクス—波乱の時代のマーケティングと経営
ジョン・キャスリオーネ, フィリップ・コトラー
東洋経済新報社
リスクから身を守り不確実性に対処するしくみを新たにつくることをカオティクスと呼びます。本書は現代における企業にとってのリスクと不確実性を提示し、それへの対処方法を丁寧に論述しています。
ここではフランク・ナイトには全くふれていませんが、本書はフランク・ナイトの不確実性を現代に置き換えた内容と捉えても良いでしょう。著者は不確実性を起こすことを「乱気流」に例えて解説しています。
結果的には不確実性に対処するものとして、企業の反応性、強靭性、弾力性の三つを挙げて説明しています。それらは企業の持続可能性に密着に結びつき、倫理的で信頼性のある行動を促進させます。内容としては至極まっとうです。カオティックスという用語が一般化するかは少々疑問ですが、企業のCSRなどに携わる人は一読していて損はないと思われます。
25.企業の研究者をめざす皆さんへ—Research That Matters
企業の研究者をめざす皆さんへ―Research That Matters
丸山 宏
近代科学社
筆者はIBMの基礎研究所の元所長であり、研究職として仕事に携わる一方、途中のキャリアではIBMのコンサルタント部門への出向など単に研究職だけに特化していないために、貴重な内容を提供してくれています
本書の内容は著者の研究所長時代の所員(研究者)に向けたレターから展開されます。たとえばp.12では、研究者は何よりもまず結果が意味を持つような問題を選ぶことを奨励しています。何のために努力をしているのか明確にすることが、軸がぶれずにモチベーションを落とさずにいられることが肌身にしみます。またp.20では、「問題はあなたが解いてくれるのを待っている」というカーネギーメロン大学の金出教授の言葉など、新鮮な表現が多数散りばめられています。p.81のValueの変移や、p.105の市場調査の受け止め方、p.123のネットでの公開会議など、興味あるエピソードと、IBM内の知識創造の仕組みを得ることもできます。
26.危機の経営 ~ サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション
危機の経営 ~ サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション
吉川 良三
講談社
韓国のサムスン電子の変革に携わった著者によるその内容であり、大変興味をもって読ませて頂きました。変革の必要性は、現状に満足した中からは大変困難でありその道程は素直には進んでいかないことが理解できます。「今までのやり方」が通用しないのは、今日の日本に置き換えてみても十分理解できる内容でしょう。
本書は、著者の記述とともに、失敗学でおなじみの畑村氏のコメントが載せられており、更なる気づきを与えてくれています。
サムスンの変革も、「人の革新」の重要度が高かったことと、トップの指示の仕方、「考える人材」など、今日のどの企業も必須とされる要素が垣間見えます。本書は、同時に企業の目的や戦略、特に日本追従路線からの変更など、ターゲットとする市場と製品、価格など、これから日本の企業が第三国の市場を開拓する際に見習うべき要素も感じ取ることができそうです。
27.異業種競争戦略
内田 和成
日本経済新聞出版社
既にビジネススクールやビジネス書などでは多く接する機会のあるビジネスモデルの変化などを扱った内容です。
カメラがフィルムからディジタルに変化し、そこに関わる業界がカ、メラ本体にはパナソニックやソニーなどのメーカー、かつてのフィルム現像がプリンターに置き換わり、エプソンやキヤノンなどに変化していったことを簡潔にまとめてあります。同様にCDからネット配信など、最近の変化を改めて頭に刻み込むには良い内容です。
また、グーグル、アマゾンなどのビジネスモデルに関する記述、花王のソフィーナの化粧品参入と、対抗する資生堂のツバキブランドのシャンプー(花王のテリトリー)参入など、面白い内容も提供しています。
ビジネスモデルの変化や、俯瞰した観点で簡潔に理解できる文章により、自分なりに整理できる点では、大変有用な書籍です。
28.考え抜く社員を増やせ!—変化に追われるリーダーのための本
柴田 昌治
日本経済新聞出版社
本書は、考え抜く社員が少なくなっていることを危機感として知らせてくれています。社内で優秀とされる人は、本当に「考え抜いているだろうか」と素直に考えてみると、色々な発見ができます。
本書では、「さばく」という表現を使用していますが、単に案件を過去の慣例等に従って割り振るだけという作業に追われるミドルを端的に示しています。
与えられた枠組みの中でしか判断を迫られていないがために、思考がストップしてしまう。そのことを自ら感じ取れない管理者が多いことも理解でき得ます。
本書でも指摘する「そもそも」論や目的の欠落は、大きな組織でも多いことを読みながら感じます。特に、セクショナリズムの際立った企業は、セクションの考え方とその組織全体の目的との齟齬が多いことを改めて感じ取ることもできるでしょう。本書の129ページの図表5を眺めるだけで、サラリーマンには「はっ」とする瞬間があるかも知れません。
29.希望を捨てる勇気—停滞と成長の経済学
池田 信夫
ダイヤモンド社
なかなか面白い観点から経済を語っています。言葉面で他の経済学者を否定するところに人気ブロガーらしさがあるのでしょう。
結構色々なところで叩かれている人なので、あまり期待せずに読んでみましたが、なかなか内容的には鋭く、感心しました。特に、雇用を扱っている内容や、会社のガバナンス、すり合わせ、イノベーションといった内容は、一読すると新たな視点にお目にかかれます。
著者は、コンテンツ産業など(p.209)への切り込みを得意とするが、その点では著者の出身母体NHKも、その波を既にかぶっているでしょう。放送そのもののビジネスモデルが破綻ないし見直しを迫られている中、もっと辛口の記述を読んでみたいと感じた次第です。
30.今後50年を生き抜く新・経営パラダイム
今後50年を生き抜く 新・経営パラダイム 「カスタマー・プリンシプル」で売上と利益を持続させる
服部 隆幸
PHP研究所
著者は、これまでの「人、もの、金」を中心とした企業の活動に限界があると解し、これに「顧客」という要素を入れることの重要性を説いています。ただし、顧客第一主義ではなく、著者が定義する顧客プリンシプルなる概念が必要との認識にたちます。
そのカスタマー・プリンシプルは、顧客との対話によるものであると説きます。著者は、顧客との会話は絶対正論と説くが、ここは疑問が残る。また情に関しても記述しています。確かに概念としては理解できるが、その情を測ったり、プリンシプルの実態を理解できるまでは深くないため、微妙な読後感を得ることになります。
31.日本経済の戦後復興—未完の構造転換
日本経済の戦後復興―未完の構造転換 (東京大学ものづくり経営研究シリーズ)
武田 晴人
有斐閣
戦後の時期の企業をどのように見るのか、論者の中でも様々な観点を感じられますが、ここでは転換期・過渡期としてこれらの状況を捉えており、漠然とした今までの見方を改めるには良い機会を与えてもらったように思われます。
経済学者や経営学者も、この時代のことについてはかなりいい加減なところも多いです。しかし、歴史をきちんと理解することは大切です。本書は、需要構造、競争構造、企業再建、企業金融に関して、丁寧な論と、指標を基としており、大変読みやすく仕上がっています。
この時期の企業に興味がないと面白くはないでしょうが、今日の企業を形成してきた土台を見る意味では、敢えて面白くない本も読む価値があるでしょう。
32.「質の時代」のシステム改革—良い市場とは何か?
矢野 誠
岩波書店
最近の経済において、市場の質の低下が顕著にみられることを著者は懸念しています。それを打開する一つの考え方として「多様性の内部化」を提唱しています。著者は、市場の外部で起こるニーズや好みの多様化が、製品や技術の多様化を生み、それが市場に取り込まれる中で新たな市場が形成される一連の過程を「多様性の内部化」と称しています。
「砂漠のコーラの取引モデル」などは経済学を知らない人には面白い問題かも知れない。比較的簡単に理解できるので、経済学の初歩をおさらいするにも良い問題かも知れません。
最近になって終身雇用が見直されているが、著者が言うように終身雇用によって、労働の高質化は阻まれてきたという論は、私自身当たっていると思います。確かに終身雇用で安定性は確保できると思われますが、その安定性に見合うだけの努力を従業員が行っているかというと嘘でしょう。また、労働において多様性を阻むものも終身雇用かも知れません。
33.社員のモチベーションは上げるな!
宋 文洲
幻冬舎
本書はモチベーションに焦点を当ててはいますが、基本的にはどのように企業が従業員をみているかに尽きます。
いわゆる「ホウレンソウ」だが、著者はその徹底が責任転嫁を生むことを述べるが、基本的に「ホウレンソウ」そのものが責任転嫁の道具でもあります。実際のサラリーマンにとっては、上司の「聞いてなかった」防止の手段でしかありません。つまり報告してもそれに見合うマネージは行わず、聞いたとしても責任はとらず、これはうやむや発生構造そのものです。著者はそこまでは踏み込まないが、思っていることは同じでしょう。 自分が思う「愚痴」を、本書を含め著者が代弁してくれているようです。
34.ビジネスと資本主義—経営史序説
N.S.B.グラース
日本経済評論社
既に古書で入手が難しい本ですが、経営の歴史を探る上ではかなり勉強になる本です。というのも、経営史という講義が初めてハーバード大学のビジネス・スクールで行われた際の著者の講義に依拠する本だからです。
経済史の関係から資本主義を捉える本は過去も現在も豊富なのですが、経営史から資本主義を捉えている本は意外と少ないようです。本書は、研究する上でも基礎となる本ですので、経営の歴史を研究する人は一読していなければならない書籍でしょう。
時代の変遷とともに、経営と金融の繋がりなども読み解くことができます。古書も意外に良いものです。
35.組織の限界
ケネス・J.アロー, 村上 泰亮
岩波書店
組織の意思決定の限界に関しては、ハーバート・サイモンの研究が知られています。本書もサイモンの考察による部分も記述されています。
しかし、本書では、組織の行動計画における不確実性、権威と責任などにおよぶ解説に鋭い指摘を見出します。「大組織の中でもっとも権威の力が弱いのは知的専門職(p.73)」というのは大組織以外に所属しているものにとっては意外な感覚を抱き、大組織に所属するものはよくよく考えると著者の言うとおりと認識するでしょう。近年の倫理の慣例と行動の基準を考える上では面白い観点を提示しています。
様々な組織に属する人は、一読してみると少しは俯瞰的に物事を考えられるかも知れません。薄めの本なのでお勧めです。
36.榊原式スピード思考力
榊原 英資
幻冬舎
基本的には、現代の日本においては「見習うべきモデルがない」という認識であり、その結論としては「考える」ことの重要性を語られています。しかも、よりスピード感を持った意思決定が必要と説いています。この点で、著者を否定する人はいないでしょう。
思考法としては、相手の立場で考えること、ディベートの重要性、他人に迎合しないこと、論理的な思考、知識を蓄えること、異質なものへの積極的な働きかけなど、多くの視座にたって論じられています。
全てごもっともな内容です。本書で「反論されると全人格を否定されたように怒り出す人」とありましたが、感情的な激論に対しては、「やり過ごせ」と説く著者に親近感を覚えました。簡単に一読しておくには良書です。
37.どの会社でも結果を出す CEO仕事術 いつも「経営者の目線」を持て
どの会社でも結果を出す CEO仕事術 いつも「経営者の目線」を持て
吉越 浩一郎
朝日新聞出版
組織というのはマネジメントが重要であることは間違いありません。本著にも多くの処方箋が描かれていますが、問題はそれを自身の組織と比較し、考察し、どのように改善に向けた行動に移せるのかが組織の活性化への第一歩でしょう。
本書では、ワークライフバランスは、ワーク=仕事とライフ=私生活とのバランスであって、決して仕事と人生ではないという点は、日本人の多くは勘違いのまま生きているのだろうことがよくわかる指摘です。「性弱説」も其の通り。経営者の目線も同様です。また、自分が否定していた上司と同じ行動を自身が上司になった時に行ってしまうロジックもなかなか面白いです。
38.市場の秩序学—反均衡から複雑系へ
塩沢 由典
筑摩書房
経済学における一般的な均衡そして価格を批判的に捉えた刺激的な内容です。本書は経済学における誤った均衡論の理解を指摘することから始まります。経済学は一種の均衡論ではあるけれども、均衡論は必ずしも定常状態を示すわけではなく、また定常状態は必ずしも均衡ではないとする解説にはすっきりします。
また、「見えざる手」に関連して、商人論が消えたことへの言及、サイモンの合理性の限界など、内容は多彩です。
著者の分野が数理経済学ということもあり、数学に関連する記述も見られますが、難解ではないためそのまま読み進められるでしょう。マル経的な匂いもしますが、意識しないで良いでしょう。
39.北尾吉孝の経営道場
北尾吉孝
企業家ネットワーク
本書ではドラッカーの言葉を引用し「品性」について語っていますが、やはりリーダーの最終的な決断に際し心理面で大きく影響するのはその人の「倫理観」や「品性」であり、この点がクリアでなければ「学んだ知識」も生かされることがないのでしょう。
また本著でヘーゲルの「量質転化」に関する記述が出てきたことにもビックリしました。賢人は様々なことから学んでいるようです。われわれの周りにはリーダーと呼ばれる人たちがいますが、広い教養と学ぶ姿勢を持ちそれを仕事に生かしている人はほとんどいません。影の努力(努力を努力とは思っていないと思うが)こそが、今のリーダーには必要かもしれません。
40.竹村式お金に振り回されない習慣術—60歳からは少ない収入で大きな幸せ
竹村式お金に振り回されない習慣術―60歳からは少ない収入で大きな幸せ
竹村 健一
幻冬舎
人生は楽しまなければ損である、そんな内容の著書です。我慢して我慢して生きる人生よりも、好きなことを楽しみつつ、かつ賢く生きる、それを実践している著者の考えは至ってシンプルです。
仕事ばかりに人生の比重が偏ると、仕事の中に自分が存在していることに満足感を覚え、新たなトライをしなくなったり、他を楽しむ時間も有効につかうことができなくなってしまいます。適度に遊び、適度に仕事をする方が、実は、多くの視点や観点の提供、つまり「気づき」や比較することに繋がるように私は思っていますが、この本のしたいことにトライし色々とチャレンジする姿勢は、これらを刺激することに繋がると感じました。
根本的には、他人や他者に人生をゆだねないで自身で考え選択して自身の時間を有効に使うということを十分感じ取れる本です。
41.経済学はなぜ間違え続けるのか—マルクスもケインズも見逃した経済の2つの法則
経済学はなぜ間違え続けるのか―マルクスもケインズも見逃した経済の2つの法則
木下 栄蔵
徳間書店
大変解りやすく簡潔な論理で展開されています。
基本的には、通常時の経済と恐慌時の経済に関して、前者を主問題経済学(通常経済学)、後者を双対問題経済学(恐慌経済学)とし、二つの経済学それぞれに一つの視点があると提唱し、現在の経済に対する対処法を提示しています。そして前者では古典派、新古典派としてアダム・スミスに代表され、後者はケインズに代表されます。
具体例として、麻生太郎と与謝野馨の経済政策や、小泉純一郎と亀井静香など、わかりやすい話題から提供しており読者はその記述に惹きつけられます。
後半には多少数式による記述も見られますが、数学に詳しくない人は結果だけ参照にして読み飛ばしても十分著者の意図と真意は理解できるでしょう。
42.日本人の精神と資本主義の倫理
波頭 亮, 茂木 健一郎
幻冬舎
本書は、コンサルタントの波頭氏と脳科学者の茂木氏の対談形式の本です。お互い「プロフェッショナル」という共通の言葉を基に対談に至ったようです。
本書では波頭氏からのプロフェッショナルとは「公益性」という点で仕事をしているかという内容や、金儲けとの対抗軸が日本には欠けている点など、鋭い指摘が飛びます。また茂木氏の言う同僚の圧力とも言うべき「ピアプレッシャー」という概念も、社会人には良く分かる内容でもあります。
対談だけに話は様々に飛んでしまいますが、その都度考え方の観点という意味で面白い視点を提供してくれます。一読してみると面白い発見がある良書です。
43.英語をやっていて、本当によかった。—吉越流ビジネスマンのための英語塾
英語をやっていて、本当によかった。―吉越流ビジネスマンのための英語塾 (WAC BUNKO)
吉越 浩一郎
ワック
英語そのものを学ぶのではなく、英語を使うことで人間としての幅が広がるということを様々なエピソードを交えて語っています。著者御自身の家庭が4ヶ国語を駆使する状態であることもユニークです。
価値ある人間としてIT分野の技術者を挙げています。確かに最先端の技術に接するには英語が欠かせない道具です。著者同様、世の中を見て最先端に関わるとどうしても英語での情報に優位性を感じるものです。
本書を読んで強く英語学習に意欲がわくということは無いかも知れません。しかし本のタイトルのように将来「英語をやっていて、本当によかった」と言えるようになるきっかけを与えてくれるかも知れません。
44.世界一やさしい問題解決の授業—自分で考え、行動する力が身につく
世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく
渡辺 健介
ダイヤモンド社
小さな時から問題解決力を養っておく意義には同感です。日本人そして日本の組織の特にコンフリクト対策は幼稚な面があり、過去の事例に基づいたり、年功的な配慮だったり、根拠のない一任だったりと、大人の世界でもハテナマークがつくような決定しかなされていないこともあります。
この本は、おもにディシジョン・ツリーの作成から問題に関する意思決定の方策を探り、問題の原因と仮説検証に至る過程を、平易な言葉で簡潔に述べられています。確かに中高生には十分理解できる内容です。
このような方法は、本来マネジメントを行う者や意思決定を行う者には備わっておかなければならない知識であり知恵のはずではありますが、大人の世界でこれを見失っている人はあまりにも多いです。知らない大人も一読して損はないと思います。
45.アホ社長の頭の中
斎藤 之幸
東洋経済新報社
コンサルタントである著者が経験したであろう多くの社長さんのとんでもない考え間違いの羅列といった印象すらする内容です。
本書では、全て社長の言動で処理されていますが、基本的には会社の上司であったり、組織運営に読み替えて読んでみると当てはまる個所も多いことでしょう。企業の中でもマネジメントが弱かったり、感情的な要因(やる気や経験)の評価が高い組織では同様の、「とんでも○○」が居ることでしょう。
本書の厚さの割には内容は薄く感じますが、企業の外からある会社を客観的に見たときに、このような事例があるということを知るだけでも良いのではないかと思います。
46.グローバルリーダーの条件
大前 研一 船川 淳志
PHP研究所
船川淳志氏と大前研一氏、両氏の対談を書籍にしたものですが、まだまだ自分に足りないものがあることを痛感しました。
グローバル人材に関して述べられてはいますが、基本的に現在の日本にはリーダー人材が枯渇しているのだろうと感じます。よってその中でもグローバルに立ち振る舞いできる人は極端に少ないのでしょう。
もはや企業内での人材教育は、画一的で実りのない「育成」だけで、基本的には自身で考え学ぶ場を作ることがグローバル人材として自身を鍛える最初なのかも知れないと感じました。
対談だけに話が多岐に渡る分、深さは感じられませんが、読んで得する考え方も得ることはできました。休み時間に気軽に読むには良い書籍なのではないでしょうか。
47.ギスギスした職場はなぜ変わらないのか たった一人からでも始められる「職場活性化」の方法
ギスギスした職場はなぜ変わらないのか たった一人からでも始められる「職場活性化」の方法 (Nanaブックス)
手塚利男
ナナ・コーポレート・コミュニケーション
個人レベルから組織の風土を改革するには、周りを巻き込むことが必要と説いています。大きなポイントは基本的にコミュニケーションのようです。
そして上司や社長が自ら変わることがその促進にもつながります。自主的に仕事を管理できるなど、コミュニケーションの形成とともに個人の主体性の発揮を促すことで風土の変革を導くさまざまなアイデアが述べられています。キーマンの攻略法など、著者が組織風土改革のコンサルとして培った手法など読んでいて面白いです。
しかしこれを実際に実行に移していくには多くの時間と根気強いモチベーションを維持する必要があることも理解することができます。
48.偏差値30からの英語やり直し学習法
鈴木 拓
中経出版
著者は高校時代英語では落ちこぼれのレベルから、現在ではTOEIC990を達成したとのことです。私は、以前800点前半だったのですが、多分、今受験すると700点代になっている可能性がかなり高いと感じています。
基本的には、語彙と文法とリスニングの3本柱を磐石にすること、その中でも、語彙と文法の重要度が高いということを本書では語っています。個人的には語彙の忘却が激しいことがありますが、この際、文法も基礎の基礎から改めて積み上げても良いのかも知れないと思いました。
本書を読んで、英語ができるということはありませんが、初心者や再学習者がこれからの学習の戦術を考える上では、宜しいのではないかと思う次第です。
49.新しい資本主義
原 丈人
PHP研究所
金融工学に代表される金融資本主義は間違いであることを述べ、著者のいう新しい資本主義として公益資本主義とその可能性を語る一連の内容になっています。
著者の明確な考え方として、最新技術を先進国に導入して大きな利益を得るのではなく、それを発展途上国への投資として、それらの国々の生活を豊かにするために使うという意図があります。
またITに代表されるコンピュータにも限界があり、その次のコアとなる考え方の提示も見られます。さらに全体を通して、日本が貢献できること、日本の可能性というものを期待とともに述べており、参考となる部分も多いです。
50.リーダーになる人に知っておいてほしいこと
松下 幸之助
PHP研究所
松下政経塾において、かつて松下幸之助が述べたことを綴った箴言集とでもいうべき書です。
例えば、「戦略とか戦術とか、そういうもの以上に、そのときの道徳にしたがうこと(p.21)」など、人としての正しき行いに徹する松下幸之助の考え方が伺えます。つまり、人の道に反した者は経営者や組織のリーダーにはなってはいけないのです。
そして苦労が伴う仕事でも「自分が立っている立場では、そこに生きがいを感じなければいけない(p.60)」と、仕事に徹しのめり込む姿勢が大切であることを力説しています。
松下幸之助の言葉が世に書となって出てきたことに喜びを感じられる。そのような気持ちになれる本でした。