ここではないどこかへ今すぐに旅立てる本
子どものころに見た夕焼け、家の灯りがつくのを見たとき、音もない雨が降り続いているとき…センチメンタルで儚い魅力に憑りつかれるような読書体験はいかがでしょうか?
ファンタジー好きの方や郷愁にあふれた世界観が好きな方におすすめの本を紹介いたします。
ここではないどこかへ今すぐに旅立てる本です。現実逃避をしたいときにもどうぞ。
かなしき女王―ケルト幻想作品集
フィオナ マクラウド (著) (筑摩書房)
スコットランドの作家によるケルト神話や伝説をベースにして書かれた短編集。
精霊信仰とキリスト教が混在するケルトの信仰心は八百万の神がいる日本人の考え方と似たものを感じます。
自然があり、音楽のようなやさしく美しい調べが届いてくるような雰囲気でありながらも読みやすい現代訳。
ダークファンタジーの要素を含んだ短編や、格式高い伝説のようにも感じられるものも。眠りにつく前のひとときにもおすすめの一冊です。
幼かりし日々
安野 光雅 他(編集) (筑摩書房)
中原中也・宮沢賢治・森茉莉・国木田独歩といった日本文学の大御所から、ファーブル・ヘッセ・カポーティなど世界の文学者が書いた小説やエッセイのアンソロジー。
時代は違えど、子どものころに抱いた不安や寂しさ、そしてほんのひとときの幸福は同じです。みずみずしい感性で描かれた子どものころにタイムスリップしたような気持ちになれる作品ばかり。
装丁もレトロな少年少女の絵が可愛らしく、思わず抱きしめたくなるような一冊です。
顔 (百年文庫)
ディケンズ , メリメ , ボードレール (著) (ポプラ社)
「人は見かけによらぬもの」といいますが、どんなによく知っているようなつもりの人でも、自分にだけは見せたことがない顔をもっているものです。
それはごく自然なことであり、時に人を欺きます。19世紀の海外文学から3つの短編を収録した本。
生命保険をめぐる復讐劇の「追いつめられて」、自分が賭けたものを与えるという悪魔との賭け事にはまっていく男を描いた「気前の良い賭け事師」、発掘された青銅のヴィーナスに心を奪われていく若者を描いた「イールのヴィーナス」が収録されています。
思い出にひたったり、見たことも聞いたこともない世界を想像することができるのは読書ならではの楽しみ。昔あったかもしれない、これからみるかもしれない世界がそこにあるかもしれません。