ドビュッシーやラヴェル、印象派の音楽家たちに大きな影響を与えたサティ。既存の協調性音楽を放棄し、旋法という美しくも幻想的な雰囲気を醸し出す作曲スタイルを確立した人です。革新的な音楽スタイルを次々に取り入れ、人替わりもちょっと風変わりな人という印象のあるサティですが、その書き残した作品はユーモアに富んでいて奥深いもの。
今回はクラシックファンだけではもったいないサティに関連する作品を紹介いたします。ヨーロッパのユーモアが好きという方にもおすすめです。
卵のように軽やかに: サティによるサティ
卵のように軽やかに: サティによるサティ (ちくま学芸文庫 サ 32-1)
エリック・サティ (著) (筑摩書房)
変人の考えは当人にしか分からないということで、まずおすすめしたいのがこちら。楽譜のあちこちに、メモ書きに残された詩、戯曲などサティの文章を集めた本です。ときにコミカルに、ときにシニカルに感覚を研ぎ澄ませて知性を働かせて作曲してきた苦悩も書かれています。文学的センスを持っているサティの文章は、クラシックファンだけではなく外国文学が好きな方にもおすすめです。エスプリがびびっと効いた一冊。
サティさんはかわりもの
M.T. アンダーソン (著) (BL出版)
新しい音楽をつくることだけが楽しみで、生涯貧乏なアパートで暮らしたサティ。だれに評価されることもなく、日々作曲にいそしんでいました。不思議な曲、不思議な題名の作品たち。すべてを説明しつづけなければいけないのかと落胆しながらも、革新的な音楽は当時の人たちに受け入れられませんでした。何事も型にはまりたくないという方におすすめのサティの生涯をあたたかな目線で描いた絵本。「ジムノペティ」を聞きながらどうぞ!
アーモンド入りチョコレートのワルツ
森 絵都 (著) (角川書店)
中学生三人が主人公のせつなく揺れ動く不安や葛藤がシューマン、バッハ、サティのメロディとともに流れるように描かれている短編小説。五人の少年が別荘でひと夏を過ごす「子どもは眠る」、不眠症の少年と虚言癖の少女の卒業までのひとときを得街と「彼女のアリア」、ピアノ教室に突然現れたフランス人の変なおじさんとの交流を描いた表題作はサティがモデルです。
透明感あふれる文章とクラシック音楽のもつやわからな光がまぶしい小説。テーマ曲を流しながら読んでみるのがおすすめです。
芸術作品はこういう解釈だからという見方をすればとたんに面白くなくなるもの。ピアノの音に耳を澄ませながら、作曲家の意思に触れてみると、より心に響いてくれます。そして想像して感じてみる、同じ時代を生きているかのように感じるための手がかりとなる本です。