横山秀夫の小説『出口のない海』は、太平洋戦争中に日本の秘密兵器として使用されていた「回天」という人間魚雷について知るために役立ちます。
多くの戦争映画や本だと、神風特攻隊が乗った零銭が登場するのですが、『出口のない海』は海の特攻にフォーカスして若くて尊い命が失われた惨劇を世に知らしめています。
『出口のない海』
当時は戦争ムード一色で、志願兵になることが当然とされていた時代でしたから、主人公は親兄弟や恋人の悲しむ顔が思い浮かびながらも、勢いで回天の乗組員になることを希望してしまいます。
回天は秘密兵器でしたから、血縁の人間にも打ち明けることができず、ときどき後悔したり、複雑な心境になりながら訓練を繰り返して、いよいよ特攻する日が近づき、ふと実家に帰省します。
軍事機密を話さないとしても、息子の様子から特攻命令が下ったことを悟った両親は悲しみ嘆くのですが、学校で軍国主義の教育を受けている小さな弟だけは、訳も分からず兄の出兵をお祝いするのでした。
「回天」について
「回天」は潜水艦で待機している乗組員が、上官の指示を受けて発射後、無線で方向などを確認しながら、慎重にゆっくりと敵艦隊に近づくのが特徴です。
人間魚雷として体当たりするまで、複雑な操縦をして悲惨な死を待つ時の心理状態が伝わってきて、ぞっとしました。
『出口のない海』は人間魚雷「回天」について知識を深めたい大学生、社会人におすすめです。
本を読んでから、靖国神社の博物館『遊就館」に展示してある回天を見ると、より一層、感慨深い気持ちになります。
映画もおすすめ
映画化された同じタイトルの作品を鑑賞しました。
キャストは、明治大学野球部のピッチャー・並木浩二役に市川海老蔵、同じく明治大学の陸上部員・北勝也役に伊勢谷雄介、並木の恋人役に上野樹里など、豪華キャストで演技がうまく、とても感動しました。
まずは映画で回天についてもっと詳しく知りたいと思ったら小説を読むこともおすすめします。
本を読んでみると、わずか121分の映画では表現しきれなかった登場人物の心理描写がよく分かります。