『ぐりとぐら』
なかがわえりこ/おおむらゆりこ
野ネズミのぐりとぐらは、ある日大きな卵が落ちているのを見つけます。ふたりはそれでカステラを作ることを思いつきます。美味しく焼きあがってから、森のなかまたちに振る舞います、というストーリーです。
一見、翻訳もののような作りだけれど、この本の作者は大変ヒットした童話『いやいやえん』を生み出した日本のコンビです。私はこの絵本の秘密は言葉のリズム感にあるのではないかと思います。 読み方は人それぞれ自由で、私などは勝手にメロディーをつけて歌いながら読んで聞かせていたこともあります。料理というお母さんが毎日繰り返している日常を題材にしていることが、いつもお母さんの卵料理やホットケーキができるのを今か今かと待っている子供たちに、身近な感情を抱かせるのでしょう。
『おしいれのぼうけん』
吉田足日/田畑精一
この物語の舞台は保育園一つは押入れなのです。子供達はおいたをするとごめんなさいと謝るまでここに入れられます。ある日、昼間の時間にわんぱくなサトシとちょっと弱気なアキラが騒いでみんなに迷惑をかけたので、水野先生に押し入れに入れられました。
アキラはすぐに泣きたくなってごめんなさいを言おうとしたのですが、サトシは先生が自分の話も聞いてくれずに、お構いなしにお仕置きをしたことに腹を立てて、じっと我慢を決め込んでいます。やがて押入れの上下に隔てられたこの二人の間に戦士の友情が芽生えるという物語です。
この絵本はよくディティールが書き込まれたモノクロの鉛筆画が中心なのですが、なぜか色が見えてくるのです。全体で79ページのしっかりした本にカラーの挿画5枚だけ。これがふたりの心象風景を見事に描き出していて、却って印象的な本になっています。
是非、美術専攻の大学生に読んでほしいオススメの本です。
『じごくのそうべえ』
田島征彦
軽業師のそうべえが、医者と山伏と歯医者の3人と共に閻魔様から地獄に送られます。何と言っても関西訛りの語り口が抜群におかしいです。この物語は上方落語の『地獄八景亡者の戯れ』を題材にしています。いわば田島征彦さん版のダンテの神曲地獄変なのです。
麻の布に染色したような淡いタッチの絵に滲んだ色を縁取る大胆なすみの黒が、キリッとしていて大人にも圧倒的なインパクトを与えます。幼稚園などで先生が読み始めると、それまではわーわー騒いでいたわんぱくたちが、一斉にシーンとなるという逸話があります。
子供は誰でも死んだらどうなるということに非常に興味があるからそれも頷けます。社会人になってもそれは気になりますよね。