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【ブルージャイアント】青春ジャズ成長記「BLUE GIANT」を大紹介!全巻感想&ネタバレあり。これまでここまで熱い音楽漫画があったのか!

ジャズ知らなくても問題なし! 誰もが夢中になれる傑作漫画!

 

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音楽漫画でも男性向きの作品と言うか、主人公が男子中高生となると、どうしてもバンドものが多くなる傾向です。

「ベック」や「デトロイト・メタル・シティ」などがその代表です。稀にブルースを題材にした「俺と悪魔のブルーズ」などもありますが、やはりロックバンドやパンクバンドが絶対の主流であり、女性向けにはクラシックや吹奏楽が定番であり、外れのない作品となる傾向です。

 

いままでにない音楽マンガ

そんな音楽漫画に突如現れたのが「ブルージャイアント」(作者:石塚 真一)です。ジャズはとてもマイナーな音楽となってしまい、好きな人は殆どマニアの領域に近いのが現状です。

かく言う私もジャズは好きな方ですが、あの混沌を漫画で体現するのは無理だと思い込んでいたのです。しかし、そんなちょっと自分はジャズを分かっているとする高を括った態度を一変させてくれたのが、「ブルージャイアント」です。

 

純度100%のジャズ

この作品は、無駄が一切ない。徹底的に純度100%のジャズで、横にブレないのが醍醐味です。1920年代にアメリカの黒人音楽として始まったジャズとは、迫害や差別などの時代的背景もありますが、実は娯楽としてとてもカッコ良かったのです。

だから、硬派であり軟派でもあり、現在のポップミュージックに近い面もあったのです。でも、「ブルージャイアント」はそんなジャズを、どちらかと言うと演歌的なスタンスで描き続けます。誰にも理解されなくなった音楽ジャンルに成り下がったからこそ、圧倒的な演奏技術で人々を圧倒しないと理解と評価がされないと分かった上での、決断だったのです。

 

ストーリー構成について

「ブルージャイアント」は大きく分類すると、以下の三点に分けられます。
 ①高校時代の仙台編
 ②東京のバイト編
 ③海外の修行編
①と②は今回紹介する「ブルージャイアント」(単行本全10巻)に含まれ物語は完結し、続編となる③については機会があれば記載する

「ブルージャイアント シュプリーム」(現在6巻まで)で、現在も連載中となります(どちらも「ビックコミック」連載)。

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大まかなあらすじ

ジャズの魅力を知った高校生

バスケ部に所属する高校三年の主人公・宮本大は、漠然と退屈を抱いていた。バスケは好きだが、そこまで才能がなく熱中も出来ない。かと言って、勉強は苦手で大学進学も乗り気がしない。

人生の分岐点に突入し、モヤモヤがある時に出会ってしまったのがジャズで、何かが弾けたように一気に夢中になり、練習に明け暮れる。そして、大学進学も拒否して、プロのサックスプレーヤーになる事だけを夢見て、今日も明日もひたすら一人で弾きまくる…

 

上京、メンバー探し

高校卒業後は、東京でバイト生活を続けながら、ジャズのメンバー探しに明け暮れます。そこで出会ったのが天才ピアニスト・沢辺で、彼のプレイに共感するように大のサックスも磨きがかかります。サックスとピアノ、残るはある意味でジャズというより音楽の要であるドラム! そのラストピースとなったのがあの人です。

 

バンドが決まり、ライブへ...

メンバーが決定し、バンド名(グループ名)も「ジャス」として、気分も新たに再出発です。三人が一丸となり、ライブでの評価から観客も徐々に増えて、さあこれからという時に、壮絶な結末が迫っています。

 

登場人物紹介!

宮本 大

ブルージャイアントとシュプリームでの主人公であり、驚異的な肺活量を武器にしたサックスプレイは、テクニック云々ではなく誰もが驚愕するほどの実力がある。楽器スキルよりも、努力と執念で上り詰める頑張り屋。誰に対しても優しく、特に妹や見知らぬ人との触れ合いは心温まる。

 

沢辺 雪祈

東京編から登場する天才ピアニスト。イケメンで長身長髪、派手な遊びをしているイメージだが、実は夜中までバイトに追われる苦労人でもある。誰よりもピアノに真摯に向き合い、だからこそメンバーとも衝突をするが、優しい一面も持ち合わせている。

 

玉田 俊二

仙台編ではあまり存在感を発揮していないが、東京編から突如として大活躍を遂げる注目人物。大以上に頑張り屋で、それが人々の心を動かす。

 

宮本家の面々

父・兄・妹と大の四人家族。兄は弟の大を影ながらサポートし、妹は大が大好きだからこそ、時には抵抗をする事もある。

 

ブルージャイアントは、重要な登場人物はかなり少ないです。何より、大・沢辺・玉田の三人だけでも十分過ぎる中身になっています。

 

これを知ってから読むと更に良い!おすすめポイント!

 

努力に努力を重ねている

世間で大絶賛された「ブルージャイアント」なので、私が改めて評価するのも気兼ねしますが、よくある音楽漫画や青春漫画ではなく、苦労に苦労を重ねる点が個人的なお気に入りです。

例えば、大はいつでもどんな時でもサックスの練習をしています。基本的には孤独です。寒空の下、凍えるような手を暖めながら、指を動かすのは、徹底的にリアルな瞬間です。

 

無駄な事を排除した作画、構成

また、極端にセリフが少ない回もあり、それでも中身がすんなり入ってくるのは、作画や絵構成が優れているのはもちろんながら、無駄な事を排除しても読者を魅力する自信があるからこそできる業です。

 

練習シーン、バイトなどのシーンも魅力

ジャズ漫画なら、セッションをしてライブを繰り返す。それだけでも、作者:石塚氏の実力があれば、十分過ぎる人気漫画になったのは容易に想像できます。しかし、敢えてそんな道を取らずに、ライブシーンよりもそれぞれの練習シーンや、ジャズをする為の試練ともなるバイトなど紆余曲折を巧みに取り入れる事で、肝心のライブが花開きます。

大が真冬でも、土手や鉄道橋でサックスを吹く姿は、どことなく作者が描いた「岳」などを思い浮かばせてくれます。季節を冬にする事で、より過酷な状況でもひたすら練習をする努力を、読者に分かってもらいたいのでしょう。

 

基本ストーリーの感想!

紆余曲折、喜怒哀楽、栄光からの転落など、物語を作る際には大事なテーマが必要となります。「ブルージャイアント」は、その落差がとても大きく、それがジャズという地味な題材をここまで人気作にした理由です。

 

単行本1巻~4巻:ジャズに目覚めてる大

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4巻途中までが、高校時代の大が奮闘する内容となっています。

淡い恋愛、家族との団らん、ジャズに目覚めてひたすら練習に明け暮れる日々が詰まっています。出会いと別れなど、ある種ここまでの「ブルージャイアント」は序章であり、読み返すと絵の荒さ等も気になります。

しかし、その溜めた分の爆発も凄まじく、だからこそジャズは宇宙を感じさせる「ビッグバン」なのです。幼き大が、周囲の冷めた目や態度など眼中になく、己が信じたジャズを突き進むのは、現在何かに夢中になって努力をしている人々に希望や共感を生むでしょう。

    

単行本4巻~10巻:東京編

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4巻途中から完結となる10巻までが、東京編となります。最高の仲間を見つけて、遂にバンドが始動し駆け足のように階段を進んでいく様子は、読者としてもこのまま一気にプロデビューをするのでは、という程に全てが順調に転がりだしていたのです。失敗から学ぶ事もあれば、人として強くなる事もあります。

二度目の別れ

大の一度目の別れが、仙台との家族や恋人未満の同級生なら、二度目の別れはあまりにも残酷です。でも、ダラダラと続けないのは、ジャズの演奏そのものなのです。

長い曲でも、一曲20分ぐらいがジャズでは限界です。それは演奏側の気力や体力もありますし、観客が飽きるのもありますが、新しい何かを発見するには、今の場所に留まってはダメだからです。常に移動し、動き続ける。

 

よりレベルが高い地へ

大は安息の地を求め、よりレベルが高いヨーロッパを目指す事になります。まるで、Jリーグで活躍したサッカー選手の様ですが、大きな違いは、大には何の保障もなく、一人で海外に飛び出る、再びゼロからの出発です。否、東京は仙台から近いですし、友達もいた。今度は本当の一人っきり、でもサックスとジャズの熱きソウルがあれば、彼ならどこでも全てを成し遂げて、長年の夢をきっと実現すると期待をしてしまう。

 

ジャズの魅力

こんな余韻に浸らせてくれる漫画は、きっと「ブルージャイアント」以外には巡り合う事がないと思います。

ジャズという決して人気がないテーマを扱い、派手な演出も無ければ、色恋沙汰が表に出る事もない。そんな作品がここまで話題となるのは全て必然であり、こんなデジタル時代だからこそ不器用にひたすらサックスを吹き続ける男が求められていたのです。人生が退屈…、何もかも嫌になった…、スマホを見る事しかやる事がない…こんな症状があるなら、最良の薬となるのは「ブルージャイアント」の青き炎です。

 

 

ぜひ「ブルージャイアント シュプリーム」も

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もし、全10巻を読破したなら、ぜひ「ブルージャイアント シュプリーム」も引き続き読んで、ジャズの奥深い世界と大の更なる飛躍を確認するべきです! それが、少しでもこの作品に触れてしまった一読者が、オーディエンスに変わる瞬間でもあるのです。

 

まとめ 

漫画とはこうあるべきという姿を具現化した「ブルージャイアント」は、今後のスタンダードになるべき作品です。ジャズという廃れたジャンルに焦点を当て、本来は相乗効果になれば良かったのですが相変わらずマイナーなままで、それでも「ブルージャイアント」は輝き続ける。読後感、次の展開が気になる作品として、現漫画の最高峰に位置する奇跡のような物語。大の成長を、自分自身に当て嵌めるとまだまだ頑張らないといけないと、背中を押されている気がしてきます。

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