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【外道の歌】漫画「外道の歌」の魅力やあらすじ、おすすめなどネタバレありの大紹介!「善悪の屑」の第二部。

■異色の復讐代行漫画「外道の歌」とはどんな作品?

 

[まとめ買い] 外道の歌

 

最近芸能界を騒然とさせた、某俳優による不祥事で映画「善悪の屑」が公開中止になった報道は記憶に新しい事です。その「善悪の屑」の第二部にあたる原作が「外道の歌」です。

作家は渡邊ダイスケ氏、現在は「ヤングキング」にて連載中で単行本は2019年2月半ば段階で7巻まで発売されています。因みに第一部にあたる「善悪の屑」は、全5巻となります。

 

この作品を語る際に欠かせられないキーワードは、復讐・残酷・(復讐)代行・変質者・犯罪・未解決・被害者・心の傷などとなります。

これらは、一見すると確かに好きな人は好きだが、嫌いな人は受け付けないでしょう。しかし、「外道の歌」は残酷なシーンもあるのですが、それよりも心情に訴えかける何かがあります。漫画とは思えないリアリティ溢れる展開や実存すると思われる個性豊かな登場人物、さらに実在の事件を舞台にしたと思われる内容など、作者の力量や熱量は尋常ではないレベルにまで押し上げています。

 

残酷なシーンはとことん残酷に、そのギャップとして主役である坊主頭にサングラスの通称カモと長髪が似合い過ぎる通称トラ、そして紅一点の元引きこもり女性による三人のやり取りは、ほのぼのとして安らぎを与えてくれます。

個人的には現代版「サザエさん」のように感じられるほど気に入っていて、それがつかの間の幸せだと分かっていても、復讐代行として何人も悪人を処分しても、人間らしさも残っているとホッとしています。

そんな読む人に強烈なインパクトを与える「外道の歌」という、これまでの漫画には欠けていた圧倒的な”復讐リアル劇場”について、詳しく解説をしていきます。

 

■「外道の歌」のあらすじ!

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「外道の歌」は第二部で、その原点である第一部は「善悪の屑」となります。まず最初に、善悪の屑のあらすじをまとめてみました。

・「善悪の屑」のあらすじ

表向きは古本屋「カモメ古書店」の店主である通称カモこと鴨ノ目武と、同じく店員であり良き相棒とは言えなくても互いに必要とする通称トラこと島田虎信、この二人による復讐代行が物語の柱となります。被害者に寄り添い復讐を受ける背景には、カモの最愛の妻と愛嬢が殺害されたからです。

だから、人一倍罪を憎み、被害者の要望に応じて、犯人を徹底的にいたぶり残虐を行い、時には処刑をするほどです。

善悪の屑では、シングルマザー強姦事件から始まり中学生苛め事件、幼女誘拐事件等々、かつて世間を騒がせた実際に起こった事件がモチーフとなっているのがいくつも登場します。すると、これがアレンジさせた漫画なのか事件をそっくりそのままにしたのか、本当に分からなくなり、それが善悪の屑と外道の歌に一貫して共通します。

 

・外道の歌のあらすじ

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善悪の屑で時折クローズアップされた、カモの心の闇である最愛の家族二人が殺害された事件から、物語はすすみます。これを踏まえないと、善悪の屑は本当の意味で完結をせず、さらに先の展開である外道の歌がすすまないからです。

つつましく、決して裕福ではないが幸せな三人家族が、ある時を境に一瞬でその関係が崩壊します。一人の殺人鬼により、妻と娘はあっけなくこの世から消えてしまいます。そこで何かが切れたカモが犯人に対して復讐を成し遂げ、これが物語の始まりとなります。

 

しかし、カモは犯人を殺しても自分の心が一向に晴れない事を知っています。だから、せめて今の自分にできる事として、同じような境遇の被害者やその残された家族を救うために、悪人を一人でも裁こうと決意をしたのです。その象徴がサングラスであり、残虐な拷問に現れています。

中心となるのはカモとトラによる復讐、敵対関係でもある同じく復讐代行業の「朝食会」、そして表向きは編集者である殺人鬼・園田の三本柱を軸にして進みます。園田は善悪の屑でも登場した、この作品の一貫した重要人物です。園田は、カモとトラの大事な仲間であり同居するナナ(開成奈々子)の家族を無残に殺した経緯があります。

 

■登場人物の紹介!

・カモ(鴨ノ目武)

  善悪の屑、外道の歌を通じたこの作品の主人公で、最も大事な一人。普段は無口で寡黙、しかし性格はマメで綺麗好きや料理上手。家計にも細かいが、同居するナナには優しく、そこが人間味を感じさせる。また良き相棒でもある、もう一人の主人公と言えるトラとは性格がまったく違う! 年齢不詳だが、多分30代前半で坊主頭にサングラスがトレードマーク。普段は、古本屋「カモメ古書店」の店主兼経営者(?)で、店番をしている日々である。体格は中肉中背だが、犯人を捕獲する能力に長けていて、恐ろしいほど冷静沈着。

 

・トラ(島田虎信)

カモ同様に善悪の屑から続く、良き相棒であり格闘技の達人がトラです。普段はトラと性格や会話が合わない事もしばしばありますが、それで極端に揉める事もなく、お互いに良い距離感を保っています。一見するとトラの方が残虐に感じますが、実はカモのブレーキ役の様な役割を担っていて、また作品初期では捕らわれたカモを救出に向かうなど、漢気溢れる面も持ち合わせています。

カモと同様、或いはそれ以上にナナを大事にして、犯罪や犯人を憎む気持ちもカモ同様に持ち合わせています。カモの坊主頭と対照的に、トラは一貫して長髪スタイル、ファッションもストリート系で実はオシャレな雰囲気もある。カモ同様に母親を殺害された過去があり、それが行動を共にする原点である。

 

・ナナ(開成奈々子)

普段はほのぼのとゲームばかりを楽しむ推定年齢二十歳前後の若き女性です。メガネを着用し化粧っ気は皆無のオタクっぽさがありますが、カモとトラ家に同居するまでは、家族を殺人鬼・園田に殺害され心に深い傷を負っていた。しかし、カモとトラの優しさに触れてだんだんと人間味を取り戻していく。今後の作品展開から園田との対決は避けられないので、重要なカギを握る人物であるのは間違いない。

 

・園田夢二

一般社会に溶け込み、日常生活を送れる本当の意味での狂人。通称は、「練馬区の殺人者」で学生時代から殺人を繰り返し、現在は漫画雑誌編集者という顔を持つ。ナナの家族も惨殺し、トラとの対決は避けられない?

 

・榎加代子

カモの復讐代行業のライバルでもある、同じ復讐を生業にする巨大組織「朝食会」(ブレックファストクラブ)の代表。

 

・鶴巻祐

「朝食会」メンバーで、榎加代子に仕える忠実な部下。トラ同様に格闘技経験者でその実力は相当に高い。

 

・関口

外道の歌7巻から登場した、新たな「朝食会」メンバーで、口数が多く一見すると明るいキャラだが、死体処理の特殊清掃員集団を率いている? 榎加代子に好意的で普段は派遣社員でもある。今後の展開で重要人物になる一人と予想できる!

 

■おすすめポイントをズバリ解説!

犯人は徹底的に悪に徹し、それを処罰するカモ達も決して法治社会である日本では褒められた存在ではない。それが分かっているのに、この作品には惹きつけられてしまいます。それは実在事件をモチーフにするのもあるが、犯人側を中心に進む物語が多く、被害者より加害者の心境はどうなんだろうという、人間の本性を作品として昇華させているのが特筆すべきポイントです。

普段は日常生活を送っているのに、何かが切っ掛けで犯行に至る。その前後の経緯が、善悪の屑と外道の歌は並外れています。社会でくすぶっている不満から犯行をするならまだ理解ができるが、そうではなく趣味や楽しみ、単なる快楽として殺人を繰り返す不気味さを、どうやってこんなにリアルに表現できるのか。楽しみであり、時には本当に恐怖を感じる。読んでいてこんな恐怖を感じるのは、初めてです。

隣人がもしかしたら、気がおかしい人なのでは? 大事な家族がある時、帰らない人になったら、そんな事をリアルに想像させる漫画を果たしておススメとして良いのか? 意見も分かれるでしょうが、もし実在した不気味な殺人事件の背景に興味があるなら、新聞や週刊誌を読むより、外道の歌を読みふける方が理解ができます。

これが最大のおススメポイントであり、受け付けない人にとっても分かれる点です。

 

■各巻毎の感想

1巻:主人公カモが絶望の淵に

外道の歌(1) (ヤングキングコミックス)

主人公カモが最も生き生きとして、そして絶望の淵に落とされるという、他の巻にはない話展開となります。「善悪の屑」から読んできた読者は、カモがここまで笑い、明るく話すのかとギャップを感じたでしょう。私もそんな一人で、だからこそカモが徹底して悪人を憎む気持ちや復讐をするのも理解ができます。壮絶な残虐、復讐劇の始まりとしてこれ以上のない展開です。

 

2巻:園田が再登場

外道の歌(2) (ヤングキングコミックス)

復讐を請け負うカモとトラが「外道の歌」の表なら、裏に位置するのが殺人者である園田で、2巻は園田が「善悪の屑」から再び登場します。その悪人ぶりは憎たらしいほどですが、どこかで捕まらないで殺されないでと願う自分もいました。「外道の歌」を気に入る人は、この巻が好きかどうかにかかっているでしょう。私は当然気に入っています。

 

3巻:有名事件をモチーフ

外道の歌(3) (ヤングキングコミックス)

全作品を通じて、最も重い事件を扱った”話”が入っています。普通の家族に入り込み洗脳する手段は、あの有名事件をモチーフにしたとスグに気が付きました。でも、犯人側がどのように事細かに、家族を操ったのか知らなかったので、そこが大変興味深かったです。

 

4巻:鶴巻の経緯が分かる

外道の歌(4) (ヤングキングコミックス)

「朝食会」の鶴巻の経緯が収められ、カモとトラは殆ど登場しないので、少々物足りないのが本心です。「外道の歌」の番外編やアナザーストーリーと言った感じですが、その割には中身がとても深いのも事実です。それにしても、人は何を切っ掛けで人生が狂うのか本当に分からないものです。

 

5巻:園田の不気味な本性

 

外道の歌(5) (ヤングキングコミックス)

またもや園田が登場し、不気味な本性を現していきます。今回は大学サークル内に意外なオチがあり、その突拍子もない作品展開に驚きました。殺人者とは日常のどこにでもいて、本当に隣り合わせなんだとある意味で戦慄したほどです。それと、話題になったブラック居酒屋の実態に迫るのも、読み応えがあります。

 

6巻:事態は思いがけない方向に

外道の歌 6 (ヤングキングコミックス)

女性をレイプする集団を成敗してからの、心霊や金縛りに話が進むのは、常人では到底考え付かないアイディアです。作者の想像力豊かさに驚きました。マンションの隣人トラブルも、思いがけない方向に進んでゆき、これもかなり面白かったです。復讐の本質とは、この様な事なのでしょう。

 

7巻:色々と考えさせられる

外道の歌 7 (ヤングキングコミックス)

現時点での最新刊であり、「朝食会」による復讐とストーカー男の2物語で、カモ&トラはこれまた殆ど出てきません。

そこが物足りないのですが、今回は初めてと言えるぐらいに、犯人に対して復讐をしないで終わる話があり、かなり意外に感じました。犯人でありながら、具体的な被害を与えなかったのが理由でしょうが、色々と考えさせられる終わり方となっています。

 

■まとめ

以上が「外道の歌」と「善悪の屑」についての、あらすじや感想となります。この作品はグロいシーンもありますし、犯人描写がリアル過ぎるので子供などには見せない方が良いのは分かります。

一方、身近な世界に悪人や異常者がいるかもと教えてくれ、それを成敗し、実在するかどうか分からない復讐業をクローズアップさせた側面もあります。

普通のゆるい漫画に飽きてしまったら、刺激がとにかく満載の「外道の歌」と、前作である「善悪の屑」を一読してはどうでしょうか? 恐怖と爽快が隣り合わせの、他にはない読み応えと何とも言えない後味が残ります。

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