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【家族 あり方 変化】ちょっと奇妙な“家族”が描かれる、小説三選

時には友達のようでもあり、他人のように遠く感じることもある、思えば不思議な存在である“家族”。長い時間に渡って生活を共にしてきたが故に、その家の中だけで通用する独自のルールが実は存在しているはずです。
実際、私は友人宅に泊まりに行った時、その家の「まず一杯の水を飲み干してからでないと食事を始めない」というルールに出くわして面食らったことがあります。
その家の人にとっては普通でも、よその人からみればちょっと変。そんな発見にゾクゾクしてしまうあなたにおすすめしたいのが、“家族”という共同体が生む、ある奇妙さを浮き彫りにした小説です。

 

美しい星

美しい星 (新潮文庫)

一冊目は「美しい星」(三島由紀夫 著)。リリーフランキー主演で映画化もされた作品です。
埼玉県に住むとある4人家族。なんと、父は火星・母は木星・息子は水星・娘は金星からそれぞれやって来た“宇宙人”であると、各々全員が自負しています。
そんな彼らは、自分たちこそが世界滅亡の危機を回避させ地球を平和にすることが出来る存在だと信じ、強い使命感を胸に行動を起こしていくのですが…。
宇宙人について、核兵器について、UFOについて、徹頭徹尾シリアスに描き切るSF純文学です。“家族”という共同体はある意味“異星人の集まり”とも言えるのかもしれない。読んでいるとふとそんなことを真面目に考えてしまいます。ぜひ一度手に取ってみて下さい。 

 

流しのしたの骨

流しのしたの骨 (新潮文庫)

二冊目は「流しのしたの骨」(江國香織 著)。進学も就職もしなかった19歳の主人公・宮坂こと子は、姉二人、弟一人の四人兄弟。季節のイベントや生活習慣にこだわる母、無口で強い意志を持つ父と共に暮らしています。自分たち家族の中だけで通じる様々なルールとこだわりを忠実に守る宮坂家の前にも、ぽつりぽつりと問題が訪れて…。
ディティールのひとつひとつがリアルで繊細で、まるで宮坂家で彼らと一緒に暮らしているような錯覚さえ覚えるほどです。読後は不思議ながらも温かい気持ちになれることまちがいなしの一冊で、おすすめです。

 

あひる

あひる

三冊目は「あひる」(今村夏子著)。読書フリークの中に熱烈な支持者を持つ著者の短編集です。
中でもおすすめなのは表題作の『あひる』です。両親と娘の三人で暮らすある家族が一羽のあひるを飼ったことから、奇妙な物語の幕が静かに上がります。
派手な描写はなく、ただ淡々と進行していくのですが、あることにハッと気が付いた時にはもう後戻りできません。
はっきり言って、怖いです!読書を通じて得られる怖さとしては、極めて異質な“恐怖”ではないでしょうか?
ホラー小説では決してないのに、否が応でも迫り来る極上の“恐怖”を、ぜひ一度体験してみて下さい。この世界観はクセになりますよ!


以上が、私がおすすめするちょっと奇妙な“家族”が描かれる小説三選です。どの小説もワクワク、ゾクゾクする読書の醍醐味が詰まっていますので、ぜひ一度は手に取って読んで頂きたいです。

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