私のおすすめの歴史小説は、歴史ジャンルに分類される池波正太郎の「紅炎」です。
ただ、これは文庫本の表題にはなっていません。
「黒幕」という表題で文庫本で出版されています。
この「黒幕」は、歴史ものを扱った11編の短編のタイトルの一つであり、「紅炎」もその11編の中にあります。
特に、日ごろ頑張っていてもあまり認められないとか、誰かのために頑張ることに疲れてしまった時に読むと、心に爽やかな風が吹いてくる一冊だと思います。
どんな内容か
時は江戸初期。すでに徳川の時代が定まっていた大阪で、最後の戦いが起こります。世にいう大坂の陣。豊臣秀頼とその母淀君を擁し、諸国の名高い武将や浪人たちがお家の再興や、自身の武運を開こうと大阪に集まりました。その中の一人、毛利勝永。
関ケ原での敗軍の将の息子として土佐に島流しにされていた彼は自分の欲や野望にとらわれることなく、ただ豊臣家の再興だけを願い徳川軍を悩ませました。
脂ぎった欲望渦巻く戦国の末期の人々の中で、勝永の生き様、そして戦いぶりは仲間である西軍の信頼を得ていくだけでなく、敵側であった徳川軍でさえ感心させるほどでした。
この本に出会ったきっかけ
私がこの「紅炎」と出会ったのは、毛利勝永について書かれた本がないかと探していた時でした。
この人物は、大坂の陣で活躍した豊臣の将として以前から知っていたのですが、あまり世間から周知されていません。真田幸村の名前が広く知れ渡り、大坂の陣といえば真田幸村という構図が出来上がっていますが、実際の勝永の働きは幸村に勝るとも劣らない活躍ぶりであったといいます。
ここがおすすめ
私はその話を聞いてどうしても毛利勝永についてもっと知りたくなりました。その想いをかなえてくれたのがこの「紅炎」。短い話でしたので、あっという間に読み進めることができました。感動しました。勝永の自分利害を一切考えない一途な思い。
そして彼の周りの人たちに対する接し方の爽やかさ。こんな人物が歴史の片隅で懸命に生きていたのかと思うと胸が締め付けられるような思いになりました。幸村が有名になれたのも、この勝永の活躍があればこそという思いにさえさせてくれます。
さいごに
この本はこれから社会人になる大学生や、様々な職場で誠実に働いている社会人のみなさんが、明日への活力とこれからも頑張ろうと思わせてくれるような素敵な作品です。