今回紹介する本は「旅」がテーマの本。
楽しい旅とは何か。
当然テレビの旅番組のように豪華、お金がかかっているから楽しいのではない。「楽しさ」を手に入れるにはどうしたらいいのか?というヒントを得るのには良い本です。
社会人、大学生におすすめです。
「あやしい探検隊 アフリカ乱入」
あやしい探検隊アフリカ乱入 「椎名誠 旅する文学館」シリーズ
椎名誠の「怪しい探検隊」シリーズから「あやしい探検隊 アフリカ乱入」「あやしい探検隊 焚火酔虎伝」「あやしい探検隊 バリ島横恋慕」をオススメします。
作家椎名誠が組織した、日本各地に赴きテントを張り食事を自炊し山に登り海をゆくという集まりの本人たち曰くの「遊び」の様子を描いたシリーズから三冊、なかでも「旅」の側面が強いものをセレクトしました。書名は忘れましたが、大人にとって「遊び」とは何なのか、という問いを掲げた文章を読んだことがあります。類型的な言い方をすれば「飲む・打つ・買う」、などになるのでしょうか。
「あやしい探検隊 焚火酔虎伝」
名前を挙げた書籍たちで筆者とその仲間は「飲む」のほうはそれはもう盛大にビールやら焼酎やらを飲み散らかしますが、「打つ」「買う」のほうは全く手を出しません。「清らか」という語句が頭に浮かぶほどそういったダーティなことに彼らは無縁です。肉体をカヌーや登山で痛めつけ、同行したシェフが作った食事を取り、普段住むところとは違った場所でシュラフで眠ります。
「大きい子ども」のようだとすらちょっと思います。椎名誠の独特な擬態語が多用された文体で描かれるその旅の様子はひたすらに楽しいです。……しかし、しばし椎名誠が巻き込まれたり眼差しを向けたりする現実社会のあれこれに対する彼の批評眼は鋭いものです。
「あやしい探検隊 バリ島横恋慕」
「黄金時代」
椎名誠の小説の著書に、あとがきで「タイトルは反語である」と語られた「黄金時代」という小説がありますが、「あやしい探検隊」のシリーズはひたすらに愉しい旅の描写があったかと思えば、現実世界の何かしらの「それもまた現実」のなにかに目を向けた、ほろ苦い描写があったりもします。
「輝ける」と言っても良いような楽しい旅の日々は、しかし「現実逃避」の結果で存在するものではなく、現実を見つめて、出来ること、やれることの中に楽しみを見出す視点で「増幅」されたもので、日々の中に楽しみを感じることが出来る視点を持っているから楽しいものなのだなと感じされられる良書です。