2025-12-16から1日間の記事一覧
仕事に行きたくない朝や、なんとなく世界から置いていかれているような夜に、津村記久子の小説をひらくと、肩の力がふっと抜ける。しんどさはそのままあるのに、なぜか笑えてくるし、「ここで生きていてもいいのかもしれない」と思えてくる。不思議なやさし…
川上未映子の小説を開くとき、人はだいたい少し疲れている。自分の身体のこと、家族のこと、お金のこと、働くこと、女であること、人を傷つけてしまったかもしれない記憶……そういう「うまく言葉にできない重さ」を抱えたまま、ページをめくることが多いはず…
毎日をなんとかやり過ごしているだけなのに、仕事も人間関係もじわじわ自分を削ってくる――。そんな「今」を生きる感覚を、小説の形で掬い上げてくれるのが安壇美緒だと思う。音楽教室への潜入調査から、女子校の友情、ブラック職場、そしてSNS炎上まで。現代…
誰かが死ななければ全員が死ぬ、犯人を見つけてはならない、秘密結社に財宝探し──夕木春央の物語は、いつも「ルール」が人の心をむき出しにしてくる。ページをめくるたびに、正しさの基準がゆらぎ、自分ならどうするかを問われ続ける読書になる。 ここでは、…
呉勝浩の小説を読むと、まず「音」が残る。銃声や爆発音だけじゃなく、怒鳴り声、SNSのざわめき、誰かのすすり泣き、そして静かに落ちる雪の音。その全部が、読み終えたあともしつこく耳の奥で鳴り続ける。 どこから読み始めればいいか迷っているなら、まず…
夜の仕事や性のことを、ワイドショーの決まり文句やネットの偏見ではなく、当事者の言葉で知りたい。そんなとき鈴木涼美の本は、きれいごとと自虐のあいだを揺れながら、現代日本の「生きづらさ」をむき出しのまま見せてくれる。 鈴木涼美とは? 読み方ガイ…
シリアスで重たいミステリーにちょっと疲れてきたとき、東川篤哉の小説を開くと、肩の力がふっと抜ける。それでもトリックはきっちり本格派で、ラストで「やられた」と声が漏れる。その両立こそが、彼の作品が長く愛されている理由だと思う。 東川篤哉とは?…
歴史小説もSFもファンタジーも、全部まとめて読み倒したい時期がある。冲方丁の本を並べると、その欲望が一気に満たされるどころか、「人間ってここまで物語を作れるのか」と、ちょっと笑ってしまうくらいだ。江戸の暦づくりからサイバーパンク都市、平安宮…