エッセイというと、小説など創作ものと違い、作者その人の私生活や考えがそのまま書かれていて面白いですね。
ミステリー作家として有名な方が、意外とフランクな性格だったり、生活のにおいが感じられて身近になったり。そんなエッセイの中からオススメの3冊をご紹介します。
『仙台ぐらし』
まずは大学生や若者にも人気の作家、伊坂幸太郎著『仙台ぐらし』
多くの作品が映像化され、知名度もあるこの作家さん、生まれは関東ですが、東北大卒で、『仙台ぐらし』が書かれた2015年頃には仙台で生活をされています。仙台というとやはり東北の震災が思い起こされ、そんなことが書かれているのかな、と手にとってみたのですが、それはこの本では大々的にはとりあげられていません。
特に興味深かったのは、ちょうどゴールデンスランバーの撮影が行われていた頃の話で、原作者である伊坂さんが、映画化についてどう感じているか、という考察が書かれた文章。自分がどういう立場でその映画に携わればいいのか、たしかに難しいところですが、伊坂さんほどの作家ともなれば、俺が書いてやったんだくらいな気概でいるのかと思っていました。作家の素顔をぜひ一読ください。
『百鬼園随筆』
次は、かなり渋好みになりますが、内田百閒著『百鬼園随筆』
夏目漱石の門下生の中でもかなり異彩を放っているのが内田百閒。
彼の遺した短編の中にも幽玄な美しい文章は多々見られます。が、しかし。内田百閒の随筆の赤裸々さは、現代の作家にはなかなか見られないほどのどうしようもなさ、憎めなさ、図々しさ、人間臭さがあります。借金をするのが得意な百閒。借金を返さないといけないからという理由で給料日がなければいいのに、と思うなど、一周回った偏屈がツボにはまること間違い無しです。社会の歯車として働くことに疑問を感じはじめている新社会人にもオススメです。
なにか突き抜けた感覚が味わえること間違いなしです。
『マスラオ礼賛』
最後はテルマエ・ロマエで有名な、ヤマザキマリ著『マスラオ礼賛』です。
マスラオというと色々深読みしてしまいがちですが、ここではヤマザキマリなりの、この男性たまらん!という独断と偏見によるマスラオたちが紹介されています。自身の男性観のかなり大枠を形作った祖父の話もさることながら、チェ・ゲバラや空海など、歴史上素晴らしい功績を残したマスラオたちに対するヤマザキマリの賛美の数々が書かれています。
そのどれもが単なる表層でなく、マスラオたちのマスラオたるゆえんを知り抜いたうえでなされているのが文章の端々からうかがえる、どこか官能的なものすら感じさせる、それでいて知的な一冊です。
エッセイってどんなのが面白いの?と思っている方はぜひピンと来るものを選んでみてください。