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【深緑野分おすすめ本】戦争と物語のあいだを歩く8冊――歴史と本の呪いを読む読書案内【代表作まとめ】

歴史の闇を真正面から見据えながら、それでも人の生活やささやかな希望を描き切る作家はそう多くない。深緑野分の小説には、戦争も暴力も理不尽もはっきりと出てくるのに、読み終えたあとに残るのは「人はここまで誠実に生きられるのか」という静かな感動だ。ここでは、ミステリ・歴史小説・ファンタジー・短編集まで、深緑野分を味わい尽くせる8冊を厳選して紹介する。

 

 

深緑野分とは?

深緑野分は1983年神奈川県生まれ。書店のパート店員として働きながら執筆を続け、2010年に短編「オーブランの少女」で第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選し、作家デビューした。

2013年には入選作を表題作とした短編集『オーブランの少女』を刊行し、豊かな描写力とトリッキーな構成が話題になる。その後、第二次世界大戦下のヨーロッパ戦線をアメリカ軍コック兵の視点から描いた『戦場のコックたち』で直木賞候補・本屋大賞7位に入り、ミステリランキングでも軒並み上位を獲得。

さらに、終戦直後のベルリンでの不審死事件を追う歴史ミステリ『ベルリンは晴れているか』が本屋大賞第3位、Twitter文学賞国内編第1位、直木賞候補、大藪春彦賞候補と高く評価され、名実ともに「いま読むべき日本の小説家」の一人になった。

特徴的なのは、どの作品でも「徹底した取材」と「フィクションとしての面白さ」が同じレベルで成立していることだ。戦場、戦後都市、映画制作の現場、本に呪われた街。どこに連れて行かれても、資料の重さと物語の疾走感が同時に迫ってくる。そこに、暴力や死を扱っても決して登場人物を見捨てない眼差しが加わり、読者はつねに「誰かの人生を本気で覗き込んでいる」感覚でページをめくることになる。

深緑野分の本、どこから読む?読み方ガイド

深緑野分の作品はジャンルも舞台もばらばらなので、「どれから読めばいいか」迷いやすい。ざっくりとした読み方の指針を先に置いておく。

ここから先は、一冊ずつじっくり見ていく。気になったところから拾い読みしてもいいし、上から順番に読書計画を立ててもいい。

深緑野分のおすすめ本8選【歴史ミステリから本好きファンタジーまで】

1. ベルリンは晴れているか(歴史ミステリ長編)

終戦直後のベルリンを舞台にした歴史ミステリ。主人公は、17歳のドイツ人の少女アウグステ。戦争が終わったばかりの荒廃した街で、彼女の周りで起きた不審死事件の疑いがアウグステ自身に向けられ、その容疑を晴らすために奔走する2日間が本編として描かれる。

本編の合間には、ナチス政権下でアウグステの家族や友人たちに何が起きていたのかが「幕間」として差し込まれ、読者はゆっくりと過去のピースを拾わされる。ユダヤ人への迫害、密告、沈黙。少女の視点を通して、いつの間にか人々が「加害者」であり「被害者」でもある状態に追い込まれていく様がじわじわと積み重なっていく構成だ。

印象的なのは、アウグステが「自分は何も悪くない」と言い切れないまま、しかし足を止めずに真相に手を伸ばしていくところだ。彼女は特別に聖人でも、英雄でもない。ごく普通の、むしろ愚かさも弱さも持ち合わせた少女として描かれる。それでも、自分が見てきたものをなかったことにはしない。見て見ぬふりをしてきた時間に向き合おうとする。その姿に、読む側も少しずつ背筋を伸ばされる。

ミステリとしても、伏線の張り方と回収が見事で、終盤に向けて「そうだったのか」と膝を打つ場面が何度か用意されている。ただ、真相が分かったからといって胸がすっきりするタイプの物語ではない。むしろ、「この街は、ここからどうやって生きていくのだろう」と考え込んでしまう読後感だ。その重さを受け止められる気分のときに読みたい一冊でもある。

歴史小説が好きな人、戦争をテーマにしたフィクションをしっかり読みたい人にはもちろん刺さるが、「自分もいつか加害の側に回るかもしれない」という感覚を一度は味わっておきたい人にも強く勧めたい。読みながら、アウグステの立場に自分を置いてみると、歴史の話であるはずの出来事が、急に現在のニュースと地続きに見えてくるはずだ。

2. 戦場のコックたち(戦争×日常の謎ミステリ)

『戦場のコックたち』の主人公は、アメリカ軍のコック兵としてノルマンディー上陸作戦に参加するティム。彼はただの炊事係ではなく、前線とほぼ同じ場所で料理を作り、弾が飛び交うなかで仲間に温かい食事を届ける特技兵だ。物語は、彼と仲間のコックたちが、戦場で次々に出会う「小さな謎」を追いかける連作形式で進んでいく。

不自然に消えた足跡、紛失した物資、誰が仕掛けたのか分からない悪質ないたずら。戦争の喧噪の中に紛れ込むそれらの謎は、一見するとささいなものに見えるのに、解き明かしていくうち、その背後にある人間の恐怖や欲望が露わになっていく。コック兵たちは名探偵でもスパイでもない。ただ「知ってしまったこと」から目をそらさない、若い兵士たちだ。

著者は膨大な資料を読み込み、軍隊の編成や装備、戦場の地理まで丹念に織り込んでいると言われるが、その重さを読者に直接ぶつけてくるのではなく、ティムの目線からスルリと見せてくるのが上手い。兵士たちの冗談、食材のやりくり、ほんのわずかな休息時間の描写に、戦場でも続いている「生活」が宿る。その生活がいつでも唐突に断ち切られ得る場所なのだということも、同じだけ実感させられる。

ミステリとしても、最後まで「うまい」と唸らされる構成だ。謎が解かれたあとに残るのは、犯人探しの爽快感ではなく、「人はこんな状況でもこんな選択をしてしまうのか」という苦い納得に近い。きれいなカタルシスを求める人には重い部分もあるが、それでもページを止められない力がある。

戦争小説やミリタリー小説に普段あまり馴染みのない人でも、視点がコック兵であるおかげで物語に入りやすいと思う。激しい戦闘シーンよりも、「人がどんなふうに生きようとしたか」に興味があるなら、これは間違いなくハマる一冊だ。

3. この本を盗む者は(本好きに刺さるファンタジー)

舞台は、「本の街」読長町。主人公・御倉深冬は、巨大な書庫「御倉館」を代々管理してきた一族の娘でありながら、本があまり好きではない高校生だ。ある日、御倉館から一冊の本が盗まれたことで「ブック・カース」と呼ばれる呪いが発動し、町全体が物語の世界に飲み込まれてしまう。

呪いを解くには、本を盗んだ犯人を見つけなければならない。深冬は、御倉館に現れた謎の少女・真白とともに、本の中の世界を巡る冒険に出る。おとぎ話のような世界もあれば、どこか不穏な空気が漂う世界もある。それぞれの物語で小さな試練や謎をくぐり抜けながら、深冬は、なぜ自分が本を避けてきたのか、そして祖父母や父の世代が守ってきた「本」とは何だったのかに、少しずつ向き合っていく。

いちばん胸を打つのは、「本嫌い」の少女が物語を通して世界との付き合い方を取り戻していく過程だ。読書好きな人ほど、「本が嫌いでもいい」という深緑野分のスタンスにハッとさせられると思う。この物語は、本を礼賛するためのファンタジーではない。本のせいで傷ついた人も、本を武器にした人も、本から逃げようとする人も全部抱え込んだうえで、「それでも物語を好きでいていい」と言ってくる。

ファンタジーとしても気持ちのいいテンポで、場面ごとにきちんと「冒険している感」がある。アニメ映画化もされていて、映像としての魅力も十分な設定だが、活字で読むと、御倉館や読長町の空気の細部までじっくり味わえる。読書好きはもちろん、「実は読書がちょっと苦手なんだよな」という人にも手に取ってほしい一冊だ。

4. スタッフロール(映画と仕事の物語)

『スタッフロール』は、映画の特殊効果に人生を捧げた二人の女性を軸にした長編小説だ。戦後ハリウッドで特殊造形師としてキャリアを積むマチルダと、現代ロンドンでCGクリエイターとして働くヴィヴィアン。二人の人生が時代を超えて呼応し、映画という「夢」を支える仕事の変遷と、その裏にある闘いが描かれる。

アナログな特殊メイクやミニチュア撮影が主流だった時代から、コンピュータグラフィックスが映画制作の中心になっていく時代へ。技術が進歩するたびに、「前のやり方」を愛してきた人たちの仕事は片隅に追いやられていく。マチルダは、表舞台に名前が出ることはほとんどないが、誰よりも映画の「魔法」を信じて実体を作り続ける。一方でヴィヴィアンは、華やかなクレジットに名前が並ぶ世界で、自分の仕事が本当に誰かの心に届いているのか疑い続ける。

読みながら、自分の仕事のことをどうしても考えてしまう。環境が一気にデジタル化して、これまでのやり方が時代遅れだと笑われることがある。そのとき、人はどうやって自分の職能とプライドを守るのか。逆に、最新のツールを使いこなしながらも、やっていることに空しさを感じてしまったらどうすればいいのか。二人の女性の選択は、たぶん多くの読者にとって他人事ではない。

映画が好きな人には、細部の描写だけでニヤニヤできるはずだ。昔のハリウッド映画の撮影現場、モンスターの着ぐるみ、CGチームの作業工程。著者自身の映画愛と取材の熱量が、そのまま行間に染み込んでいる。読み終えたあとで本物の映画のエンドロールを見直すと、名前のひとつひとつに、ちょっとした物語が見えてくるようになる。

「仕事小説」として読むのもおすすめだ。自分の仕事に誇りを持てなくなっているとき、あるいは、好きな仕事を続けるために大事な何かを削ってしまっている気がするとき、この作品は少しだけ背中を押してくれる。派手な成功談ではなく、しぶとく食らいついていく人間たちの物語として、静かな勇気をくれる一冊だ。

5. オーブランの暗い森(初期代表作短編集)

『オーブランの暗い森』は、デビュー作「オーブランの少女」を中心に据えた短編集。古い屋敷の庭園「オーブラン」を舞台にした表題作では、美しい庭とそこに潜む得体の知れない気配が、少女の視点を通してじわじわと立ち上がってくる。読み進めるほどに、「自然の豊かさ」と「人間の残酷さ」が同じ土壌から生えていることを思い知らされるような感覚になる。

ほかにも、人間関係のねじれや孤独を描いた現代劇、幻想的な舞台設定の物語など、バリエーション豊かな短編が並ぶ。どの作品も、ジャンルラベルだけでは括れない独特の後味が残るのが特徴だ。少しぞっとする話もあれば、読後に静かな余韻だけが漂う話もある。短いページ数の中で、感情の温度をここまで変えられる作家はそう多くない。

後年の大作を読んでからこの短編集に戻ると、「ああ、ここにすでに全部の種がある」と気づかされる。戦争や暴力、家族の歪み、閉じたコミュニティ、そして本や物語そのものへのまなざし。のちの『戦場のコックたち』や『ベルリンは晴れているか』、『この本を盗む者は』へとつながるモチーフが、さまざまな形で顔を出している。

短編から作家のクセを知りたい人には最適な一冊だし、ホラーと純文学の境界線あたりの作品が好きな人にもおすすめできる。寝る前に一編だけ読むつもりが、気づいたら深夜までページをめくってしまうタイプの本だ。

6. カミサマはそういない(ダークで鋭い短編集)

タイトルからして不穏な短編集『カミサマはそういない』。現代日本や近未来、どこともしれない異世界を舞台にした7編が収められている。ある少年が目を覚ますと、そこは無人の遊園地で、自分をいじめていた同級生の死体が転がっている話。戦争中、見張り塔から敵を撃つ任務に就く兵士たちの物語。どれも、「これは救われないのでは」という予感をまとったまま始まる。

共通しているのは、「カミサマは助けに来ない世界」で、それでも人がどう振る舞うのかを描いていることだと思う。理不尽な暴力や不条理なルールの中で、人は驚くほど簡単に残酷になり、同時に、思いがけない優しさを見せたりもする。その揺れ幅を、著者は一切目をそらさずに書き切る。読み手としては、目を背けたくなりながら、ページを閉じることができなくなる。

他の作品に比べると、かなり「ダーク寄り」な一冊だ。読むタイミングを間違えると、気分を引きずるかもしれない。その代わり、「どうして人はここまでお互いを追い詰めてしまうのか」「それでもなぜ生き続けるのか」という問いについて、真正面から考えさせられる。

明るい物語ではないが、人間の暗部を描くフィクションが好きな人にはたまらない一冊だと思う。日常に倦んでいるときや、世界のニュースに胸がざわついているときに読むと、「この気持ちは言語化できるのだ」と少しだけ救われるかもしれない。

7. 分かれ道ノストラダムス(“もしも”をめぐる青春小説)

『分かれ道ノストラダムス』の舞台は、1999年の夏。「ノストラダムスの大予言」が世間を騒がせていた時期、高校1年生の日高あさぎは、2年前に病気で亡くなった友人・基の日記を遺族から託される。そこには、「別の選択をしていたら生きていたかもしれない」という可能性を感じさせる記述が残されていて、あさぎは「基が死なずに済んだかもしれない未来」を探るように過去をたどっていく。

物語は、「あのときこうしていたら」という分岐点を一つひとつ照らし出しながら進む。その過程で、基の家族やクラスメイト、そしてあさぎ自身が抱えていた思いや嘘が露わになっていく。終末論めいた予言や新興宗教の空気も背景にあり、「何を信じて生きるか」という問いが、思春期の揺れる心に重くのしかかる。

ただし、この小説は決してオカルトや陰謀論の物語ではない。むしろ、「世界の終わり」が大袈裟に騒がれる時代に、個人の小さな終わりや後悔とどう折り合いをつけていくかを描いた青春小説だ。あさぎが基の日記を読み進めるたび、自分の中の「もしも」と向き合わざるを得なくなる。その姿を追ううちに、読者もまた自分の人生の分かれ道を思い出すことになる。

10代の頃に「世界の終わり」を本気で怖がった経験がある人や、過去の選択に今も少し引っかかりを感じている人には、かなり刺さるはずだ。過去は変えられないけれど、過去の意味を変えることはできる。そのささやかな真実を、物語として体感させてくれる。

8. 空想の海(多彩な世界を旅する作品集)

デビュー10周年記念として刊行された『空想の海』は、短編・マイクロノベル・エッセイまで詰め込まれた豪華な作品集だ。最初の短編「海」では、命の絶えたような世界で舟を作る〈私〉の視点から、世界の終わりと新たな旅立ちが描かれる。そこから、現代日本の姉妹の日常を描いた「髪を編む」、どこか別の惑星を思わせる世界で常識の外側を突きつける「空へ昇る」など、作品ごとにまったく違う世界観へと連れて行かれる。

途中に挟まれる「御倉館に収蔵された12のマイクロノベル」は、『この本を盗む者は』に登場する御倉館の蔵書をイメージして書かれた、ほぼ100字の超短編たちだ。本のタイトルを読んだだけで物語が立ち上がってくるような、言葉遊びと想像力の結晶のようなセクションで、読みながら思わずニヤリとしてしまう。

終盤には、戦時下の疎開先で老兵と暮らす少年を描いた「カドクラさん」や、『この本を盗む者は』の前日譚となる「本泥棒を呪う者は」など、他作品と世界がつながる短編も収められている。特に「カドクラさん」は、静かな日常から少しずつ世界の真実がねじれていく構成で、読後にしばらく言葉を失うような衝撃を残す。

一冊を通して読むと、「知らないものが見たい」という欲望がどの作品にも共通して流れていることに気づく。どんなに世界が荒れ果てていても、どれだけ現実がしんどくても、人はなお自分の知らない世界を見ようとする。その衝動こそが物語を生み出すのだと、静かに教えてくれる一冊だ。

深緑野分の多彩さを一気に味わいたい人や、「この本を盗む者は」が好きだった人には特におすすめ。少しずつ時間をかけて読み進めると、自分の中の「空想の海」もゆっくりと広がっていくのを感じると思う。

関連グッズ・サービス

本を読んだ後の学びを生活に根づかせるには、生活に取り入れやすいツールやサービスを組み合わせると効果が高まる。

Kindle Unlimitedで深緑作品をじっくり追いかける

長編・短編ともにじわじわ効いてくる作風なので、少し時間をおいて読み返したくなる。そのとき電子書籍で揃えておくと、ふとした夜にすぐ読み直せるのが便利だ。まずは読み放題サービスの対象になっているかどうかをチェックしておきたい。

Kindle Unlimited

Audibleで“耳読書”しながら歴史の空気を浴びる

戦場や戦後都市、映画の現場など、空気感が濃い作品が多いので、オーディオブックで耳から浴びる読み方とも相性がいい。通勤時間や散歩の時間に、ゆっくり物語の世界へ沈んでいく感覚は紙の本とはまた別物だ。

Audible

Kindle端末

ページ数の多い長編も多いので、紙の文庫を何冊も持ち歩くのが大変な人にはKindle端末があるとやはり楽になる。画面の明かりを落としてベッドで読むと、深緑作品の濃い世界にも程よい距離感で浸れる。

 

読み書きノートとお気に入りのペン

深緑野分の小説は、印象に残る一文や、あとで噛みしめたくなるシーンが多い。読みながら気になった言葉や感情の揺れをノートにメモしておくと、あとから自分だけの「読書史」が積み上がっていく。作品世界と自分の人生がどこでつながったかを残しておく意味でも、一冊専用ノートを用意しておくと楽しい。

 

まとめ

深緑野分の物語は、どれも簡単に「良かった」と言って終われない。戦争の記憶、本や物語の呪い、仕事や創作に向き合う人たちの苦さ。軽くはない題材ばかりなのに、読み終えたあとに残るのは、不思議な清涼感に近いものだ。誰かが懸命に生きた痕跡を、確かに受け取ったという感覚が身体の奥に残る。

読書目的にあわせて選ぶなら、こんな振り分けもできる。

  • 最初の1冊を選ぶなら:『ベルリンは晴れているか』
  • 戦争小説をじっくり堪能したいなら:『戦場のコックたち』
  • 本・読書そのものをテーマにした物語なら:『この本を盗む者は』と『空想の海』
  • 仕事やクリエイティブの葛藤を読みたいなら:『スタッフロール』
  • 短編で作風を一気に味わいたいなら:『オーブランの暗い森』と『カミサマはそういない』

どこから入ってもいいが、一度好きな一冊に出会うと、きっと他の作品も読みたくなる作家だと思う。気になったタイトルがあれば、今日の夜の読書候補にそっと紛れ込ませてみてほしい。

FAQ

Q. 深緑野分を初めて読むなら、どの一冊がおすすめ?

代表作としてのバランスの良さでいえば『ベルリンは晴れているか』が一番すすめやすい。歴史小説としての密度と、ミステリとしての面白さ、そして「加害/被害」のグレーゾーンを描く人間ドラマが一度に味わえるからだ。戦争ものが少し重そうに感じるなら、『この本を盗む者は』から入ってもいい。本と物語の力を前面に出したファンタジーなので、読書好きには特に入りやすい入り口になる。

Q. 戦争や暴力が苦手でも読める作品はある?

戦場を真正面から扱った『戦場のコックたち』や、『ベルリンは晴れているか』は、どうしても暴力や死の描写を避けて通れない。そのぶん、『分かれ道ノストラダムス』や『空想の海』の一部短編は、重さはありつつも残酷描写が比較的マイルドで、心理や感情の揺れに重心が置かれている。短編集『オーブランの暗い森』や『カミサマはそういない』も、作品によってトーンが違うので、自分の許容ラインを探りながら一編ずつ読んでみるのがおすすめだ。

Q. 中高生でも楽しめる?それとも大人向け?

中高生でも十分楽しめるが、どの作品もテーマがかなり重たく、背景知識や人生経験によって印象が変わるタイプの本だと思う。高校生なら『分かれ道ノストラダムス』や『この本を盗む者は』から入ると、自分の生活と地続きの感覚で読めるはずだ。大人になってから読み返すと、あの頃とはまったく違う角度から刺さってきて、「同じ本なのに別ものだ」と感じると思う。その意味でも、長く付き合える作家だと言える。

Q. 短編集と長編、どちらから読むのがいい?

作風の全体像を知りたいなら短編集から、物語世界にどっぷり浸かりたいなら長編から、という分け方がおすすめだ。短編集『オーブランの暗い森』や『カミサマはそういない』、『空想の海』は、一編ごとに世界観が変わるので、「どんな書き手なのか」を短時間でつかみやすい。一方で、『戦場のコックたち』や『ベルリンは晴れているか』、『スタッフロール』は、読み終えたあとにぐっとくる「長編ならではの達成感」がある。自分の読書時間や気分に合わせて選ぶといい。

 

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