抱腹絶倒で大笑いというわけではないけれど、スパイスがピリっと効いた知的なユーモアを楽しむことができるのも海外小説の魅力。笑いのツボは各国によって異なりますが、風刺画でみられるような皮肉な笑いも慣れてくると面白く感じます。そんなブラックユーモアがきいた小説を紹介いたします。
【ブラックユーモア 本 おすすめ】エスプリ、ブラックユーモアの効いたおすすめ本
問題だらけの女性たち
ジャッキー・フレミング(著) (河出書房新社)
19世紀のヴィクトリア朝時代。男尊女卑の実態がここにあります。女性の脳は小さい、女性が頭脳明晰だと生殖器がダメになるなど、現代考えると腹立たしいよりもバカバカしいと失笑してしまいなことが常識として深く根付いていました。
皮肉とユーモアを交えてそんな偏見を笑い飛ばし、過去犯してきた過ちを再び繰り返してしまう生き物が人間なのだと警告してくれる絵本。差別や偏見は「知らないこと」から始まると思わされます。ジェンダー問題だけではなく、様々な価値観や多様性を認めていくことが大切だと思いました。
ミルク殺人と憂鬱な夏──中年警部クルフティンガー
ミルク殺人と憂鬱な夏──中年警部クルフティンガー (ハヤカワ・ミステリ文庫)
フォルカー・クルプフル (著) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ドイツで圧倒的人気があるテレビドラマ化もされたミステリー小説。冴えない中年男性の地方警部が連続殺人事件を解決していく物語。おっちょこちょいで恐妻家の警部の冴えないジョークや小ネタが満載の思わずニヤリとしてしまうシリーズ第一作目です。
重々しい事件とは裏腹に、ドイツ片田舎の牧歌的な雰囲気やおいしそうな料理のレシピまで登場するコメディタッチのストーリーです。社会問題と事件が交差するところもドイツらしいエンターテイメント性が感じられます。
ボートの三人男 もちろん犬も
ジェローム・K. ジェローム(著) (光文社古典新訳文庫
イギリスの古典的ユーモア小説の新訳版が登場。独身男三人と犬一匹を載せたボートで休養と変化を求めてテムズ河をのぼっていく旅にでます。些細な言い争いや、根拠のない自身、見栄っ張り。
男たちのドタバタコメディを軸として、イギリスユーモアらしい皮肉めいた笑いもたくさん。当時の風俗や出来事など詳しく注釈もついているので、より一層楽しめる作品となりました。
わにくん
ペーター・ニクル(著) (偕成社)
世界で最も美しい本賞を受賞したスイスの絵本。シュレーダーの幻想的な絵とブラックユーモアが効いたストーリーが見事にマッチしています。ナイル川に住むわにが、パリになるという「わにの店」を目指していくストーリー。日本の昔話を連想する衝撃のラストです。より良い生活とは何なのかを考えさせられます。
不満があることをそのままぶつけるより、物語のなかでユーモアを交えて提案する余裕があるからこそ、ブラックユーモアには魅力があるのかもしれません。夏休みのおともにもおすすめの一冊です。
【ブラックユーモア 本 おすすめ】エスプリ、ブラックユーモアの効いたおすすめ本