時代小説がお好きな方、人情小説がお好きな方、おいしい食べ物がお好きな方におすすめの心がぽっと温かくなる3冊を紹介いたします。
ライトな読み心地で疲れた心をそっと癒してくれる本を選びました。
「完本 初ものがたり」
宮部 みゆき・作
ミステリー作家として有名な著者の時代ミステリー。江戸の下町・深川が舞台で、岡っぴきの茂七が様々な事件に取り組むというストーリーです。長屋風景や屋台など江戸市中の活気あふれる街や人々の様子が読んでいて楽しい気持ちにさせてくれます。
宵の口まで営業しているワケあり風の親父さんが営むいなり寿司の屋台は、そのときだけの料理が味わえます。その料理がどれもおいしそうで、さらに人情を感じさせるものばかり。文庫版では未収録作品も読むことができます。
「まるまるの毬」
西條 奈加・作
武士から和菓子職人に転身した治兵衛と出戻り娘のお永、孫のお君が営む「南星屋」が舞台の人情物語です。
繊細な和菓子の作り方も目に浮かぶように描写されていて、読んでいて惚れ惚れしてしまいます。一切れの和菓子に込められた職人の想い、和菓子を買い求めるお客さんの想いが重なり、そっと背中を押してくれる優しさ。ほっこりする一冊です。
「浮世女房洒落日記」
木内 昇・作
江戸時代の長屋暮らし、27歳の主婦がつけた日記。日々の暮らしでの食事の描写が素朴ながらも四季折々の季節を感じさせる粋なメニューです。人情ものとしても十分楽しめますが、食に注目してみるとまた面白みがある一冊です。
チャキチャキの江戸っ子で、苦労を苦労と思わず逞しく乗り越える姿は読んでいても爽快な気持ちになります。食以外にも、江戸時代のおしゃれや恋模様も描かれていて、奥ゆかしい若い女性も登場するので、ドキドキモヤモヤさせてくれます。
さいごに
日本人の心ともいえる和食は繊細で素材の味を生かした素朴な味。ふっと肩の力が抜けるような落ち着いた気分になれます。
あっさりしていて奥深い、何度食べても飽きない、そんな和食のような本たちです。