私は、芸術家や職人さんなど「ゼロから何かを作り出す人」に憧れます。繊細な感覚と研ぎ澄まされた斬新的センスがないと何かを作り出すことはできません。
今回は芸術家になりたい、憧れを抱く方や「生みの苦労」真っ最中の方におすすめの小説を紹介いたします。
「地図と領土」
ミシェル ウェルベック・作
「素粒子」が有名なウェルベックですが、私は彼の作品のなかでは「地図と領土」がおすすめです。ヨーロッパ生産主義の終焉。生と死、金と性までも消費ルートに乗せられ、疑問を抱かずに消費していく社会に疑問を投げかける一冊です。孤独感にさいなまれながらも、真剣に芸術とは何かを追求していく主人公の姿を見ていると胸が押しつぶされそうになります。現代アートが好きな方にもおすすめの一冊です。
「月と六ペンス (光文社古典新訳文庫)」
ウィリアム・サマセット モーム・作
画家ゴーギャンがモデルといわれている有名大作。モームほど人間の多様性を描くのが得意な作家はいないのではないでしょうか。登場人物の眼差しの鋭さや衝動が熱く描かれている。
ただの世捨て人の話と思ったら大間違いです。衝撃のラストシーンは優しくも希望に満ちたラストで何度読み返してもしびれます。
「楽園のカンヴァス」
原田 マハ・作
アンリ・ルソー晩年の名作の謎に挑む美術ミステリー。作者はキューレター出身で、美術に詳しくない方でも安心して楽しむことができます。第25回山本周五郎賞受賞作品で、作品を作り出す本人だけではない、時代を超えた芸術を愛するパワーというものがひしひしと伝わってきます。一度読み始めると、ページをめくる手がとめられません。原田さんの美術小説のなかでも、こちらは秀逸です。
さいごに
日頃から美術や芸術に関心がある方をはじめ、なにかを追窮していくことが好きな方におすすめです。
まっすぐな姿で作品に取り組む姿は凛として時に危険な香りもします。