『なぜ意志の力はあてにならないのか 自己コントロールの文化史』
ダニエル・アクスト
太ると分かっていても食べてしまう甘いもの、体に悪いと分かっていても止められないタバコ、ついつい仕事の時間を犠牲にして行うネットサーフィンには心当たりありませんか。 本書では具体的な神経科学、心理学や生理学などの研究を引用し、自己はコントロールできるのかという疑問を複眼的に解き明かしていきます。
映画館のポップコーンのサイズを変える実験、プライミングと呼ばれる先行する刺激に無意識のうちに暗示を受け、行動に変化が生じるという実験など、著名な心理学実験が掲載されています。それによると、自己コントロールの改善は可能だが、一人ではできないそうです。
制度や社会的仕組みの支援や筋の通った法的な枠組みや強固な社会的なつながりが必要なのです。意思は欲望に勝てない、それは歴史が証明しているのですが、そう言い聞かせる自己コントロールが一番難しいのです。時間がありあまってると思ってたらいつの間にか日々が過ぎていたと思っている大学生のみなさん、まだ間に合いますよ。
『ホーダー 捨てられない、片付けられない病』
ランディー・O・フロスト
汚部屋という言葉が最近マスコミにもてはやされています。世間でシンプルライフや断捨離がもてはやされるのと対照的に、ゴミ屋敷や汚部屋が問題視されています。
何でもかんでも溜め込む人は、結果として衛生問題や悪臭などで自治体などから強制撤去されてしまう。そんなニュースを見ると一体どんな精神状態のだろうと不思議に思っていましたが、決して他人事ではないのですよ。
ゴミ屋敷の住人は外の人とのコンタクトが取りづらいのではないかと思われがちなのですが、実際には社交的で頭の回転が速く職場ではきちんと仕事ができる人が多いのです。このような人をホーダーと名付けています。ホーダーは今のところ日本ではまだ馴染みがありません。しかし確実に存在しているのでしょう。ものに支配される世界からどう脱却するか密かに苦しんでいる人達にとって、本書は福音となるオススメ本かもしれません。
『死のテレビ実験 人はそこまで服従するのか』
クリストフ・ニック
本書の内容を一言で表せば、人はどこまでテレビの言いなりになるかということでしょう。視聴者参加番組に応募してきた人の行動を観察するために、2009年にフランスで行われた実験の詳細な報告書です。
この本を紹介するのには本書の印象的な部分を引用すれば事足りるでしょう。
“人は自分で思っているほど強くはない。自分は自由意志で行動していてやすやす権力に従ったりはしない。そう思い込んでいればいるほど私たちは権威に操られやすく服従しやすいのである”
なんだか現在の日本でも当てはまるような気がしませんか 。社会人になったイコール常識人になったとは言えないのですよ