独特のリズム、選び抜かれたことばたち。
小説とは違う楽しみがある詩集。自由によって解釈することができるので、なかなか手にとることができないという詩集入門者におすすめの詩集を紹介いたします。何度も読み返してほしい、いつも輝いている星たちのような美しさを感じる詩集です。
エスカルゴの夜明け
蜂飼 耳(著) (アートン)
少女期特有の倦怠感、小悪魔的な反抗とエロティズムを含んだ詩。どこか危険なにおいがしながらも離れられない魅力があります。生きていくこと、過ぎていくこと。
宇野亜喜良さんのレトロでアンニュイな挿絵と一緒に紡がれる詩は、ピリピリとした痛さを感じるほど。禁じられたことを破り、秘密を抱えて生きていく。それが少女から大人への第一歩なのかもしれません。
はだか―谷川俊太郎詩集
谷川 俊太郎(著) (筑摩書房)
箱入りの本を開くと、すべてひらがなで書かれた詩が登場します。かざることなく、ただただまっぱだかで。語り手はこどもと思われる人物。率直でありのままの景色や気持ちを素朴なことばで綴っているので、ストレートに心に響いてくる作品です。
無防備で清潔。そんないたいけながらも強い魂を感じさせてくれる詩集です。イラストは佐野洋子さん。無表情でこちらを眺めるこどもの顔の生意気さが文とぴったりです。
室生犀星詩集
室生 犀星(著) (ハルキ文庫)
「抒情小曲集」「愛の詩集」「女ごのための最後の詩集」などの代表的詩集14冊からセレクトした152篇が収録されています。甘くユーモアあふれるノスタルジーな雰囲気の詩集です。
美しいものだけを集めた純粋で清潔な文体、底にはうっすらと哀愁が漂っています。ことばの選び方がシンプルながらもハイセンスで、読みかえすたびに甘美な気持ちになる詩集です。
詩集は読み流すものではなく、心の奥底で噛みしめてこそ味があります。ことば遊びの詩は単純に口に出すだけでも楽しめます。苦手意識をもたないで、お気に入りの詩を諳んじることができるほど読み込んでみてください。