直木賞と本屋大賞のダブル受賞となった「蜜蜂と遠雷」を世に送り出し、圧倒的存在感を知らしめた作家恩田陸氏の作品をおすすめ3冊紹介させてください。
今や本屋大賞作家といっても過言ではない作家、恩田陸氏。彼女の世界の広さと深さを読了順にご紹介します。
1、「蜜蜂と遠雷」
本書との出会いは、たまたまテレビの情報番組で紹介しているのは視聴したからでした。
美しいピアノの演奏を文章で表現することに成功していると批評を加えながら、美しい音楽に乗せて抜粋した文章を紹介していました。時間にしてたっぷり15分ほど使っていたでしょうか。
その紹介にすっかり心を奪われて、読む気満々だったのですが、その本の分厚さと、2段組になっている1ページにおける文字数の多さに、読み応え充分という期待と、読了できるだろうかという不安が入り混じった事は記憶に新しいです。
構想に5年かかったという熱の入れようだったこの作品は、国際ピアノコンクールが舞台となり、複数の参加者、審査員、また参加者をサポートする関係者など、複数の視点から描かれていきます。なので、文章から登場人物の性格理解は、ある程度読者側に委ねられているのです。読書の惹きつけて離さない登場人物の魅力、間延びしないストーリー構成、またなんといっても振り込み通り演奏の豊かさを文章で表現しきった恩田陸氏の文才に賞賛しかありません。
読了できるのだろうかという不安は一気に吹き飛び、逆にもう読み終えてしまうという悲しさから、最終章は自らしばらく読むのを我慢したほどです。
2、木洩れ日に泳ぐ魚
「蜜蜂と遠雷」を読了し、すっかり「蜜蜂と遠雷」ロスになってしまって、次は恩田陸氏のどの作品を読めばいいのかとさまよっていた私ですが、風を切るように、本屋に平積みになっていた本書を手に取りました。「続きが気になりすぎて、電車を乗り過ごしました」という帯が決め手になったからです。
本のタイトルからも、既読の「ミツバチと遠雷」からも、きっと美しいストーリーだろうとある意味決めつけて、始めた本書ですが、その決めつけはいい意味で裏切られました。サスペンス要素を織り込んだストーリーだったのです。その中でストーリー展開に頼らず、登場人物の心の動きの細やかさや、文章の美しさは、やはり恩田陸作品であり、彼女の品格を感じさせられました。背徳の恋愛のような、ともすると、下品になりかねないテーマを扱いながら、そのギリギリのところで、美しさを感じさせてくれて、ますます恩田陸氏の信頼感が高まったのです。
3、夜のピクニック
次のに読む冊はもう2冊目を読んでいる最中から既に決めていました。これはもう縁としか言いようがありません。
私が仕事でインタビューをさせていただいた方が、高校の学校行事で夜通し歩いたエピソードをお話ししてくださった事がありまして、その方は恩田陸氏と出身高校が同じであり、その歩行大会がモデルとなって描かれているのが「夜のピクニック」と伺ったのです。
美しく淡い青春小説である本書は、彼女の美しい文章力に包まれながら、若者の心情を、少しスパイスの効いたストーリーに乗せながら、描き切ってくれています。ゆったりと落ち着いて読み進められる1冊でした。
さいごに
以上、読了順に紹介しましたが、気になる1冊はありましたでしょうか。恩田陸氏は、大学生の方から社会人の方まで、広く読んでいただける去ったと思っています。どうぞ安心して手に取ってみてください。